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稼働率を高めるためにできること|考える宿泊施設運営

宿泊業における売上とは客単価×稼働率であると下記の記事で書いた。

客単価も稼働率も、ともに高いに越した事はないのだが、今回は稼働率を高めるために宿泊施設として何ができるのか、自分が行った施策もできる限り紹介しつつ書いていきたい。

まずは基本的な事

稼働率とは客室数/宿泊者数。
50人定員で25人宿泊してれば50%だし、10人しかいなければ20%、40人なら80%になる。
ただし、これはあくまで点(ある特定の日)で捉えた時の話となり、面(期間)で考えた時に、宿泊者数には3つの側面が見えてくる。それが新規客、リピート客、連泊客の3つだ。

新規客
新規客が増えなければ宿の成長はありえないし、一定の新規客が常に来てもらえる状態だからこそ、価格競争力を維持できると言ってもいい。

リピート客
新規で来たお客様をいかにしてリピーター化できるかは、長期的な視点で考えるととても重要。年に数回利用してくれる常連客を獲得できれば、外的要因に振り回されることのない売上として安定するし、お客様に対してリピートするだけの価値を提供できているということにもなる。
リピートしてくれている理由は絶対に確認しよう。
その理由が他のお客様にとっても喜ばれるものであるなら、もっと多くのリピート客を獲得できるかもしれない。

連泊客
連泊客はチェックイン、チェックアウト、清掃などの業務負荷が減り、かつお客様との距離感を縮めやすいため、宿側にとってはありがたい存在である。連泊する理由も必ず確かめるようにしたい。
最初から連泊する場合は価格や立地が理由であることが多いため、どちらかというと延泊する理由のほうが満足度を確かめる際の鍵であることが多い。

新規客を増やすためにできること

新規のお客様を獲得するにはどのような手段があるだろうか

1. 販売チャネルを増やす
手取り早いのは契約しているOTAを増やすこと。
ユーザーは使い勝手の慣れているサービスを使うことが多いため、OTA毎に客層は異なる。例えば楽天しか使わない人には、宿が楽天で販売されていない限り、その宿を見つける可能性は限りなく低い。
管理が追いつくのであれば間口は広いほうがよい。

2. リアルで勧めてくれる人を増やす
地元の人や、飲食店などの人が「この辺に泊まれる場所ないですか?」と聞かれた時に、自分の宿の名前が真っ先に出るだろうか。
一見、泥臭いとも思えるが、地域の人に認知されているかどうかは大事。
想像力を働かせて考えてみよう。
・駅前で終電逃した人が立ち寄りそうなところは?
・タクシーの運転手に認知を高めるためにはどうすればいい?
・どうすればうちを紹介してもらいやすい?
・どのように広まってほしい?(例:1泊2500円前後で旅人がいっぱいいる宿、あそこにはサウナもあるらしい等)

3. リアルの旅行代理店に営業をかけてみる
ある程度の規模感のある施設にオススメなのが、リアルの旅行代理店に営業をかけること。
団体旅行のパッケージに組み込んでもらえれば売上には貢献する。
ただしFAXでのやりとり必須だったり、態度が傲慢な担当者も多かったりするのでストレスは増えるかもしれない。
事前に送客手数料(コミッション)の%や、食事の提供の有無、施設の利用制限など、できることできないことや条件は決めておくこと。

4. 海外のリアル旅行代理店に営業をかけてみる
これもある程度の規模感のある施設にオススメ。日本向けのツアーなどを企画している会社のツアーに組み込んでもらえるか打診してみる。
成功する可能性は高くないが、一度利用してもらえれば乗り換えられる可能性が低いので上手く行けば長く良好な関係を築ける。

5. 紙媒体に働きかける
宿の雰囲気がマッチするのであれば紙媒体に売り込んでみるのもあり。宿のコンセプトや特徴だけでも伝えておけば、特集にハマった時に紹介してくれる可能性もある。
有料媒体もハマれば強いので検討して見る価値はあり。

リピート客と連泊を増やすためにできること

なぜ、お客様はリピートしてくれるのか、どうしたらまた来たい、もう一泊したいと思ってもらえるかについて徹底的に考えるとともに、チャンスがあればお客様に直接聞いてみる。

1. 滞在中のお客様に寂しい思いをさせない
これはお客様同士の交流や、スタッフとの交流も含め、滞在中の体験がどれだけお客様の記憶に残り、どれだけ特別なものにできるかにかかっている。

例:お客様同士の交流が起きやすい空間をつくる
自分が働いていた宿泊施設の共有スペースには机や椅子が充分ではなかったため、スペースの割に閑散としていた。このままでは空間として機能していなかったため、使用頻度の低い机や椅子を共有スペースに移動し、人が集まりやすい空間レイアウトを再構築、共有スペースでのお客様の滞在時間が増え、交流が生まれやすくなった。

2. 一人で退屈しない仕組みを考える
近隣に夜のアクティビティがない場合など、宿のコンセプトに沿った形でお客様が退屈しない仕組みが必要になる

例:本棚をつくる
一人で来たお客様が退屈しないように地元をテーマにした様々な切り口の本、旅の本、写真集、洋書などをこまめに買い揃え、共有スペースに本棚を作った。ベッドではなく共有スペースに人がいやすくすることで交流もおきやすくなる。

例:イベントを充実させる
宿で常になんらかのイベントが行われていると認知されれば、お客様が一人でも来やすくなるし、そこで得た体験が次に足を運ぶ理由になる。

例:お客様同士が一緒に参加できるツアーをつくる
アミューズメントパークなど、一人で行っても楽しみにくい場所はある。そんな場所へのツアーを作ってあげればお客様は喜んで参加するかもしれない。

3. チェックアウト時に必ず感想を聞き、改善を続ける
チェックアウトの時にはお客様が急いでなければ積極的に話しかけるようにする。その際、『Was everything OK?』って聞いて、すぐに『Wonderful!』とかぼ好意的なリアクションが出れば及第点、さらに踏み込んで具体的な理由まで付けてくれたら完璧。
口籠ったら、何か満足していない理由がある筈なのでその理由を聞き、その場で解決できるものはその日のうちに解決する。
すぐに解決できないものでも3回同じ意見が出たらなんとしてでも解決する方法を考える。
お客様には次に来た時には必ず良くなってると自信を持って伝えられるように改善が文化として根付くのが理想であるし、オーナーはスタッフがこのような約束ができるような環境づくりを最大限サポートすることが大事。

4. 次に来る理由連泊する理由をつくる
宿に泊まってもらうだけではなく、地域をプレゼンする気持ちで近隣のイベント情報や観光情報などは全てお客様にわかるようにしておく。
『こんなお祭りがあるなら、この時期に来てみよう。』
『次に来た時はここに行ってみよう。』
『これ面白そうだから〇〇を誘ってまた来よう』
『もう一泊してここに行ってみよう』

例:イベントのチラシが届く仕組みとコーナーをつくる
自分の宿を起点として行ける範囲でイベントや展示を定期的に行っているような場所があればすべて挨拶まわりをして毎回チラシを送ってもらえる仕組みを構築する。
送ってもらったポスターを貼り、チラシはちゃんと整理して見えやすく置けるコーナーをつくる。

さいごに

今回紹介したものの全てができてはいるわけではないし、宿の規模や人員など、限られたリソースでは取り組むのが難しいことも多いだろう。
ある宿ではできていたが、他の宿ではできなかったということも当然ある。

しかし、時間がある時に少しでも頭を使って、これらのことに愚直に向き合うことで、宿の集客力は間違いなくアップすると思う。
小手先のテクニックはすぐに真似されてしまう。

『今日できることは何だろうか?』

最後までお読みいただきありがとうございました。
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ばしょう(@hostelmanager_b)でした。

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