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ある老人の溜息と液だれ事情 #1

僕は40歳を過ぎて、初めて実家を離れて一人暮らしをすることになった。

実家で両親と暮らしていて、それなりの給料もあって、普段の生活は何ら苦労をしたことがなかった。

僕には兄妹がいて、3人兄弟の真ん中でのほほんと暮らしていたのだ。

実家から徒歩数分のとこに巨大マンションが建てられることになった。

建設計画が発表されて、周辺住民からも大きな反対などがなくて、平穏のうちに工事が進んでいった。
そして、たまたま説明会会場前を通りかかったのが運命で、衝動的に購入した。
もちろん最初は購入意欲なんて満更無いので、資金計画なんてものない。

地元優先枠、そんな言葉につられてしまった。
自宅まで徒歩5分以内だし、両親に何かことがあればいつでも飛んでいけるのだ。
そんな言い訳じみた理由で購入を決めた。
なんとまぁ、浅はかな動機なんだろう。

なんだかんだと四十半ばにして、初の一人暮らしが始まったのだ。

一人暮らしを初めて浮かれていたのかもしれない。
新居に越して3ヶ月後、あろうことか転勤の辞令が発動、おー神様。

それも、福岡だ。
転勤先人気都市ではないか、そんな余裕うなんてないさ。
どうすんんだ、この新居は。
3年間の辛抱と言われたが、帰ってこられはずがない。
それも技術屋で営業なんて経験ないぞ。

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