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ある老人の溜息と液だれ事情 #4

お互い、傷つけないで別れよう。できればそうしたいのだ。

出会いは嬉しいものです。
お互い信頼し会えるって素晴らしいことだし。
でもなぜだか、それが長続きしない。
原因は多分、僕自身なんだね、きっとそうだ。

別れてみないかって、そういって別れたのは「元カミさん」だけ。
別れてみないかって、自分から言った。
なぜなんだろう。
投げやりになったわけじゃないけど。

「別れることにしたよ」って、その時に付き合っていた彼女に告げたけど。
美幸は、自分と結婚してくれるんだ、と思ったに違いない。
一度も口にしなかった言葉がある。
その時初めて美幸は、「結婚して」って言った。

でも僕はその気になれないまま、うやむやな気持ちのまま、
「今は結婚しない」って答えた。
その言葉を聞いてうなずいたのか納得してくれたのか、わからなかった。
今もわかっていない。

僕たちは、その状態でしばらく普通に男と女を演じあって、楽しんでいた。
今思へば、美幸には苦痛だったかもしれない。
僕は鈍感で、彼女の気持ちがわかっていない。 

美幸は、僕とするのが初めてって言っていた。
その時、美幸は24歳だったはず。
6年くらい付き合っていた。
美幸の誕生日、30周年記念でホテルにいたので覚えている。

いつも僕に優しくて、いつも尽くしてくれるタイプだった。 

不満なんて全く感じていない。
いつも美幸の方が積極的で、楽しんでいるようだった。
セックスしている時も、当然そうだった。 

何時ごろだったか思い出せないけど、美幸が「毛を剃って」ってねだってきた。
理由は知らない、聞もしなかったけど。
美幸が自分で準備してして、ベッドの上で剃ってあげるのが習慣みたいになった。

バスタオルを二重にして、腰に枕を入れて。
美幸はねだるように脚を開いて、催促しているみたいにして。

剃ってもらうと気持ちいいって、言っていた。
それはすごくわかる、美幸の体の動きですぐに察しがつく。

美幸は、いつしかツルツルの毎日を送るようになった。
それは、僕しか知らない。


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