見出し画像

芥川也寸志『音楽の基礎』について

 自分は、子どものころからギターが好きで、中学生のときにギターとバンドを始め、大人になった今でも自分で必要な楽器を全て演奏し、宅録で曲作りをしている。多分、今後も曲を作り続けていくであろう。

 ところで、音楽に関することのほとんどが独学というか、己の感覚のみを頼りにやってきたことだ。最近は、もっと音楽のことを勉強し、曲作りの可能性を広げたいなと思うようになってきた。

 例えば学生時代は、『ジョン・レノンは楽譜を読めず音楽理論についても知らんかったらしい。やけん俺もそんなもんはいらん』などと思っていた。しかし、それは天才だから成せる技なのだ。俺のような凡才が曲作りをするうえで、音楽理論について知っておくことは絶対に役に立つだろうと思う。

 そこで、手始めに本書を読んでみた。本書を知ったきっかけは、以前読んだ『マチネの終わりに』という本で触れられていたことだ。

 読んでみると、これが面白い。もちろん自分は楽譜も読めないしクラシック音楽に関する素養も乏しいので、本書の全ては理解できていない。しかし、面白いなと思う箇所はたくさんあった。

 例えば、クラシックの同じ曲を演奏するにしても、指揮者の解釈によってかなり違って聴こえるということだ。本書ではフェルマータという音楽記号の解釈が指揮者によって違うという例としてこの話が挙がっていたのだが、逆に言えば、それくらいに音楽の解釈には自由度があるということではないかと考えた。

 また、音階に関する箇所で、音階に関する理論を打ち立てた最古の人としてピュタゴラスの名前が登場したり、リズムの箇所ではプラトンが「リズムとは運動の秩序である」と定義したということに触れられていたりと、古代ギリシャ好き(?)の自分にとっては興味をそそられる内容だったし、音楽が数学や哲学と無関係ではないと理解した。さらに同じ章で著者が「リズムは生命に対応するものであり、リズムは音楽を生み、リズムを喪失した音楽は死ぬ。リズムは音楽の基礎であるばかりでなく、音楽の生命であり、音楽を超えた存在である」とまで言い切っているところに感銘を受けた。

 最後に、本書でショパンの「その背後に思想なくして真の音楽はない」という言葉が紹介されていることに触れたい。何を表現するか、そのためにどのような手段を用いるか、そもそもその手段にはどのようなものがあるか、地道に探求したいなと思う。



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?