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マッドパーティードブキュア 184

「メンチ?」
 マラキイの言葉を聞きつけたテツノが問いかける。驚きのこもった声だった。
「おう、テツノ久しぶり」
 薄れた砂埃の中から声が返ってくる。老婆とマラキイと絡みあいながら地面に転がっていたのは、メンチだった。
「メンチ」
 テツノが叫んでメンチに駆け寄る。助け起こそうと思わず伸ばした影の腕が空を切った。その顔に寂しさが走った。メンチはその顔を見て自分で立ち上がった。地面に打ち付けた体の節々が痛い。痛みに顔をしかめる。けれども、今は立たないといけない。立ち上がり、テツノを見上げる。
「ちょっと、遅れた。悪いかったな」
 テツノはメンチの顔を見つめ返して首を振る。
「来ることにしたんだ」
「ああ、いろいろあってな」
「次からはもう少し静かな方法で来てもらえると助かるんだがよ」
 体に着いた埃を払いながら、マラキイが立ち上がった。老婆に手を差し伸べて助け起こす。メンチがちらりと二人の方を見て呟く。
「ありがとよ」
「え?」
 テツノが驚きの声を上げる。霞んだ顔の両目が見開かれる。メンチは怪訝そうに言い返す。
「なんだよ」
「いや、メンチ、大丈夫?」
「あ?」
「メンチがお礼を言うなんて。落ちたときに頭ひどく打ったりしたの?」
「どういうことだよ。あたしだって、礼くらいは言うさ」
 本気で心配している様子のテツノに口を尖らせて言い返す。
「というわけで悪いんだけどよ」
 テツノはマラキイや老婆、それに影の男たちを改めて見渡した。
「やっぱあたしもついてくことにしたわ」
 その口調は確かな決意のもとに発せられた有無を言わせぬ口調だった。
「そうか、好きにすりゃあいい」
 マラキイが肩をすくめて答える。「行こうぜ」と付け加えると何事もなかったかのように振り返り、歩き始める。
「ありがとうございやす」
 メンチの肩を叩き、ズウラが小声で言う。
「兄ぃ一人だとちょっとしんどいかもしれないって思ってやした」
「感謝します」
 影の男が囁いた。

【つづく】

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