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メリットよりもリスクが勝る?学生に新たな可能性を提案する、近畿大学通信教育部の編入学生向けキャンペーン。

コロナ禍によって困窮した学生たちの救済策を、たくさんの大学がいろんなアプローチで行っています。今回、見つけたのもそんな救済策の一つなのですが、よくよく考えるとなかなか興味深いし、ある意味では危険な取り組みでもあります。でも、学生のことを本気で考えると、これも必要なのだろうと感じました。

さて、なんとなく意味深な書き出しではじめてみたのですが、今回、取り上げるのは近畿大学通信教育部のキャンペーンです。内容としては、通学課程の大学を退学し、近大通信教育部に編入学した場合、入学金が免除になるというもの。通学課程の入学金であれば20~30万円のため免除となるとかなり助かるのですが、近大通信教育部の入学金は2万円です。2万円安くなるから、よっしゃ!入学したろ!っとなる人は、そう多くないように思います。でも、このキャンペーンのねらいはそこじゃないと思うんですね。肝は、近大通信教育部の入学金免除が、“たった2万円”でしかないこと、を伝えること。そして、入学金の安さをきっかけに、学費の安さを知ってもらうことこそが、真のねらいのように感じました。

通学制大学より通信制大学の方が学費が安いだろうというのは、実態を知らなくても予想できるように思います。でも、近大通信教育部であれば「授業料は通学課程の約6分の1」なわけで、めちゃくちゃ安いわけです。これは大多数の人の予想以上なのではないでしょうか。この事実は、経済的な理由で退学を考えている学生にとって渡りに船です。

一方、通信制大学の学費の安さが知れ渡っていくと、困窮していない学生も通信制大学に編入学しようとするケースが出てくるように思います。とくに今回のコロナによって、オンライン授業が一気に普及しました。学生によっては、教室に足を運んで学ぶより、パソコンの前で勉強する方が性に合っている人もいるはずです。そういう学生が、通信制大学なら学費が大幅減になると知ったら、だいぶ心が揺さぶられるんじゃないでしょうか。

また、学ぶためのコストが大幅に下がり、場所や時間に縛られなくなると、考えようによっては大学生活を根本から変えてしまうかもしれません。たとえば、世界中を旅行しながら通信制大学で4年間学んで卒業するのと、通学制大学に4年間通うのとでは、費用面がそこまで変わらない可能性もあります。もちろん、キャンパスライフを楽しめないとか、一人で黙々と学ばなくてはいけないとか、ネックになる部分もあります。でも、こういったことをネックに感じない学生もいるでしょうし、メリットの方が上回ると感じる学生もいるでしょう。通信制大学という選択肢があるということを知るのは、学生にとって大きなプラスです。

じゃあ、大学にとってはどうなのか。授業料が6分の1になるというのは大きな痛手です。仮に近畿大学の視点に立てば、自大学の通学課程以外から編入学生をとってこれるならプラスになるかもしれません。しかし、近大通信教育部の学費の安さやメリットを声高にアピールすると、まずそれに気付くのは自大学の通学課程の学生たちです。そう考えると、このキャンペーンは、自大学にとってプラスよりマイナスの方が大きいのかもしれない。そうであってもやるのは、学生にとってプラスになることを優先しているからなのでしょう。なんか、こう、グルグルと思いを巡らせていくと、たった2万円の免除か……みたいな印象もあったのですが、本当はすごく良い心意気でやっているんじゃないかと感じるようになってきました。さすが近大、すごいぞ近大、です。

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