きみもゴレンジャーにならないか

 国内某所の研修センター。ここで各地から集まったゴレンジャー候補生の研修が行われる。秘密戦隊ゴレンジャーのオリジナルメンバーは壊滅させられたイーグル各地方支部の生き残りから急遽編成された。続くメンバーは支部の選抜された隊員から更に絞り込むという方式になった。これはその何回目かの話である。

 初日はこれまでの経緯などビデオによる座学。イーグルと黒十字軍の戦いは激しさをまし、ついによく知られることとなったこども病院爆破事件の映像が紹介される。敵はモモレンジャーに扮した爆弾仮面でこども病院のおゆうぎ部屋に侵入、正体がバレると自爆、現場は酸鼻を極め、階下まで血が滲み出してきた。ゴレンジャーのメンバーは全員アカレンジャーになってしまったという。これにはイーグル本部も怒り次世代を担う子どもたちを犠牲にするとは何事か世界征服しても誰も従わないぞと黒十字軍に厳重抗議した。以降子供には危害を加えない、開かれた空間で戦闘を行うなどの申し合わせが行われた。これにより戦闘の様子は録画され一部はテレビで放映、双方の収益源となった。

 続きはゴレンジャーの変遷。のちのスーパー戦隊の始祖と呼ばれることもあるがスーパー戦隊以降はテレビ番組のみの存在である。毎年メンバーを総入れ替えしスーツを誂え巨大ロボをリリースする予算は日本国にはない。また敵も黒十字軍のみである。そこでゴレンジャーのメンバーが少しずつ入れ替わることで継続してきた。最初の例はご存知の通りキレンジャーである。キレンジャーの中の人が別件の特殊任務に必要だったため急遽代わりのメンバーを募集、これより定期的に入れ替えてゴレンジャーは襲名制となった。ある時期には女性メンバーが二名になったこともあった。彼女らは双子のように息が合い、刃物で敵を切り刻んでいったがあまりにも残酷なその戦い方がイーグル内部でも問題となった。ビデオは一部のファンには猛烈な支持を受けたが全体としては伸び悩み、黒十字軍側からは戦闘員のなり手が減ってしまい組織の維持に支障が出始めているという苦情も出たので秘密会議でゴレンジャーと黒十字軍の仮面は強すぎないようにとの合意が行われた。女性メンバー二名は砥石仮面と対決、砥石で武器が完全に消滅させられ殉職となった。

 さて私は研修センターの宿泊施設で布団をたたみ退出の準備をしている。今回はここまでで翌日以降の模擬訓練には参加できなかった。厳密な健康診断と体力測定でなにか引っかかったらしく残念だが、来年創設されるというジャッカー隊へのパンフレットをもらった。人間の力を超えるみたいなことを書いてあるけどなんだろうか。私も年齢的にこれ以上の肉体的な伸びはなさそうだし考えてみるか。

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