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093_『Citrus』 / Serph

「耽溺する」とはこのことで、渋谷のタワーレコードの試聴機で紹介されていたSerphの『Heartstrings』の一曲目 "Luck" の音がヘッドフォンから鳴り始めたその瞬間から、その音の虜になった。

過去のアルバムを遡り、そして新譜が出る度に貪るように聴いていて、振り返ると、最初の出会いからはもう10年弱。

音楽そのものは決して色褪せることはないのに、人は、音楽を繰り返し聴く度に、その彩りに対して無自覚に鈍感になってしまって、まるで音楽が古くなってしまったように感じる生き物。

その宿命を受け止めつつも、こうして新しい音楽を作り続けていること自体がすでに素晴らしいことなのに、この『Citrus』という曲には、それ以上の新鮮な驚きがある。

・Citrus - ずん
・Citrus - lasah
・Citrus - akari

という、オーディションで選ばれた3人のボーカリストによる『Citrus』。

『Citrus』という曲に、三者三様に歌詞とボーカルが載せられている。3つのバージョンがいずれも魅力的で、歌詞とボーカルの違いで曲の表情がこんなにも異なるのかと、彩りが変化するのかと、驚くばかり。

ただのアレンジではなく、同じ曲から造られた3つの世界。lasahによる歌詞にあるように、この創造はまさに祝祭。

多分、きっと、この時代だからこそ生まれた曲なのだと思う。


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