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文学、音楽、美術、舞台、映画等の記録帳。

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江之浦測候所

測候所:気象の観測を行い、天気予報・暴風警報などを発したり、また地震や火山(噴火)などの観測を行う場所 小田原の少し先、江之浦にある測候所、あるいは、サイトスペシフィックなアート作品。広大な土地に散りばめられた作品と、それらを取り巻く環境は、どことなく瀬戸内は豊島を想起させるよう。竹林を抜けて眼下に広がる海は、まさに杉本博司の写真世界。 言葉で説明するのではなく、居ることで感じること。順路に沿って歩くのではなく、自由に偶然に沿って歩くこと。 その中にある規律。それは冬至

    • ZINEでも作りたいね。

      • 小旅行と鎌倉の夏。

        日曜日に改めて東京へ(心の中では江戸と呼んでいる)。 日本橋の映画館にて『竜とそばかすの姫』を鑑賞。 中村佳穂の喋るような歌声が、それだけで物語を作っているようで、それだけ幸せな気持ちになる。細田守作品だけに、途中まではインターネットと現実世界の接続の焼き直しかと不安になりつつも、しっかりと時代を映していて良い作品だった。 行き帰りの車中では読書。東京方面への距離が遠くなったけれど、車中の読書は集中できるので嫌いじゃない。この小旅行では、吉田篤弘の『つむじ風食堂の夜』を読了。

        • ただの世界、へ。

          8月6日金曜日。 午前中で仕事を切り上げ、夏休みの始まり。 その初日にして、鎌倉から東京への小旅行。 目的地は上野にあるギャラリーのSCAI THE BATHHOUSE。 日本最高峰の現代アートチームである 目[mé]の展示『ただの世界』の鑑賞に向かう。 これまで縁のなかった東京上野ラインに乗り継ぎ1時間弱で上野に到着。公園口の改札前の道路が消えていて驚く。そのまま公園に繋がる空間に違和感を覚えながらも公園へ。上野公園は相変わらずに日陰が少なくて、全身に日差しを浴びる夏。全

        江之浦測候所

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        記事

          鎌倉に引っ越しました。

          少し前に鎌倉に引っ越しました。 それまでは駅直結のタワーマンションに住んでいたので、 ・買い物はすべて徒歩数分 ・自宅の前にショッピングモール ・雨に降られずに電車に乗れる ・24時間いつでもゴミを捨てられる 等々というメリットを享受していたものが。全く正反対の生活になってしまった。 ものの、住めば都とは言ったもので、とても快適な毎日を過ごしている。いや、鎌倉は都そのものなので、ただの住む都なのだけれど。 日々の出来事がすべからく変化していて、例えば起床後の最初の仕事で

          鎌倉に引っ越しました。

          ROTH BART BARONの「極彩 | I G L (S)」が好い。 祝祭という言葉に弱い。

          ROTH BART BARONの「極彩 | I G L (S)」が好い。 祝祭という言葉に弱い。

          110_『INFINITE STAIRCASE』 / レアンドロ・エルリッヒ

          何年振りかの金沢訪問の目的の一つ。 21世紀美術館より徒歩数分の立地にできた小さな美術館、KAMU Kanazawaを訪れること。 日本国内屈指のフォトジェニック作品である21世紀美術館のプールの作品の作家でもあるレアンドロ・エルリッヒの新作『INFINITE STAIRCASE』。 レアンドロらしい作品で、プールと共に鑑賞するに最適。 そして、このKAMU Kanazawaは2Fと3Fにも展示スペースがあり、それぞれで異なる作家の展示が開催中。 とりわけ、3Fに展

          110_『INFINITE STAIRCASE』 / レアンドロ・エルリッヒ

          109_『ことばの生まれる景色』/ 辻山良雄

          本を読むことは、誰にでも等価にオープンで、そして世の中には読みきれないくらいの本がある。 目眩がするくらいの量の本を図書館で目にするとそれだけでフラフラしてしまうので、どちらかと言うと店主の目線でセレクトされた本屋の書棚というものが好き。 実は訪れたことのない西荻窪にあるtitleの店主の本。 様々な本がnakabanさんの挿絵と共に紹介されている。少しだけホッパーの本を思い出す。 読んだことのある本も、読んだことのない本もある。読んだことのない本は、魅力的に映り、是

          109_『ことばの生まれる景色』/ 辻山良雄

          108_『さよならのあとで』 / ヘンリー・スコット・ホランド

          言葉にならないことを目前にしてなお、生きていくために、拠り所となるのは、もしかしたら言葉なのかもしれない。 死はなんでもないものです。 私はただ となりの部屋にそっと移っただけ。 から始まる一編の詩。 100ページあまりの一冊に込められた想いをひしひしと感じる。 この本を作るために出版社である夏葉社が立ち上げられたということに深く頷く。そして、深い感謝しかない。

          108_『さよならのあとで』 / ヘンリー・スコット・ホランド

          107_『横浜トリエンナーレ』

          横トリに行くのは、久しぶり。それこそ、初回と2回目くらいしか行ってない気もするのだけれど、それは「横浜」という名称と都市型芸術祭というものが上手くリンクしていないというか、東京から電車で30分強の場所にあ理、首都圏に内包されている横浜という土地で芸術祭が自立できるのかということに疑問があるという点で、その着地点が見出せていないのが正直なところ。 それでも今回訪れたのは、やはりこのコロナ渦において開催された芸術祭に必ずしも意味があると信じているから。 また、ディレクターのラ

          107_『横浜トリエンナーレ』

          106_『PASSION』 / 濱口竜介

          濱口竜介による、大学院時代の修了作品。率直な感想としては、修了作品としては高過ぎる完成度を誇るものの、映画作品としての完成度は低い。 『ハッピーアワー』のような作品を生み出すところからも、この監督は物語そのものよりは、コンセプトあるいはダイアログ、もしくは象徴的なシーンの想起から作品を作り始めているように思う。 だからなのか、言いたいことはよくわかるものの、物語としてそれを上手に言い切れていないというか。だからこそ、作品後半で突如出てくる「本音ゲーム」という独自ルールのゲ

          106_『PASSION』 / 濱口竜介

          105_『ピンポン』 / パク・ミンギュ

          単調な日常の繰り返しに刺激を求めて手に取る一冊。 本の中に広がる、自在の想像力は確かに刺激となる。このパク・ミンギュのその意味での安定感。 サブカルチャーのジャーゴンとして一時的に流行った「セカイ系」の類型が奇しくも当てはまってしまう本作。学校帰りの野原での何気ないやりとりの繰り返しが、最終的には地球の存続にまで繋がってしまう。 ピンポンのラリーのように繰り返す日常。ただ、いつかはスマッシュを決めるし、あるいはミスをして、ボールは地面に落ちる。そのボールがあるいは地球だ

          105_『ピンポン』 / パク・ミンギュ

          104_『聖地サンティアゴへ、星の巡礼路を歩く』 / 戸谷美津子

          巡礼という言葉には、どこか憧れを抱いてしまうのが人の常で、世界には様々な巡礼の形があることを何故だか知っているのも不思議なことで、巡礼というものが主に宗教と結び付いているからか、それ自体が生きることに近くて、遠いようで身近に感じる言葉。 個人として、巡礼を傍で感じる機会があったのは、イスラエルに訪れた時のことで、エルサレムはもちろんのこと、パレスチナにあるベツレヘムで大量の白人の団体を見かけた時は、その場所に潜む磁場をひしひしと感じてしまった。2000年以上前の出来事が時を

          104_『聖地サンティアゴへ、星の巡礼路を歩く』 / 戸谷美津子

          103_『NEUTRAL COLORS - ISSUE1』

          無類の本好きであるという自負はあるけれど、好きという点においては、やはり雑誌というものは外せなくて、特に学生時代はお金もなく、ひたすらに本屋さんに寄ってはらゆる雑誌を立ち読みしていた懐かしい記憶、は誰にでもあるだろうと思うけれど、自分にとっても例外ではなく。 インターネットが常なるスタンダードである今とは違って、少し前まではやはり雑誌こそが情報の先端だったのは言うまでもなく、自分にとっても、週刊誌はもちろんのこと、『BRUTUS』や『PEN』や『SWITCH』を読み漁り、そ

          103_『NEUTRAL COLORS - ISSUE1』

          102_『ひかりの歌』 / 杉田協士

          153分という上映時間に逡巡してしまったものの、この作品を観ることを選ぶことができて本当に良かった。 冒頭のシーンから引き込まれてしまった、その理由には、そのシーンの舞台になっているのが豊前坊だったことが少なからず影響していて、映画が始まった瞬間から、豊前坊の優しさというか温かみというか、その特有の雰囲気が現出したので、その瞬間から作品の世界にすっかり没入してしまった。 お店に行ったことのある人だったらわかってくれるはず。 それにしても、お店の雰囲気がそのままに伝わって

          102_『ひかりの歌』 / 杉田協士

          101_『ミッテランの帽子』 / アントワーヌ・ローラン

          Antoineはフランス語では "アントワーヌ" と読むと、冷静になって考えれば分かるはずなのに、すっかり女性だと思っていたアントワーヌ・ローラン。 フランスの大統領と言うと、日本のメディアでは相撲の愛好家として知られたシラクの顔が先行するイメージがあるけれど、文人としての才能も知られ、ルーブル美術館のピラミッド設置を含む「パリ大改造計画」を指揮したミッテランの存在の大きさは、推し量って知るべし。 そのミッテランが大統領に就任していた1980年代。とある日の夜、ミッテラン

          101_『ミッテランの帽子』 / アントワーヌ・ローラン