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同一労働同一賃金って何?|均等待遇・均衡待遇の考え方

最近、いわゆる非正規訴訟と呼ばれる一連の事件の判決がニュースになったりして、同一労働同一賃金という言葉を改めて見聞きすることも多くなった気がします。

「同一の労働なら同一の賃金にせよ」ってことなんでしょ?と言われれば、まあそうなんですけど笑、もうちょっと踏み込んで説明しつつ、気軽に読めるものってあまりない気もします。

ということで、法律ニュースのプチ解説のつもりで、若干だけ深堀りしてみたいと思います。

同一労働同一賃金って何?

最近の法改正で突然出てきたように見えますが、同一労働同一賃金(=Equal pay for equal work)という概念自体は、実は、労働法の基本理念として以前からあったりします。

肌感覚としては、一連の働き方改革関連法(平成30年法律第71号)のなかで標語的に使われてる、みたいな感じですかね。

厚労省HPでも、同一労働同一賃金という名称で特集ページが組まれています。派遣労働者については、さらに別の特集ページになっています。

理念的なところは一緒でも、定めた法律とか、具体的な制度の立て付けがちょっと違っているので、大きくこの2つに分けられている感じです。

(参考:特集ページ)
パートタイム・有期雇用労働者の同一労働同一賃金についてはこちら
派遣労働者の同一労働同一賃金についてはこちら


ちなみに、改正法の施行は2020年4月1日なので、もう施行済みです。中小企業は2021年4月1日から。

(参考:根拠法律)
パートタイム・有期雇用労働者 ⇒ パート・有期労働法(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)
派遣労働者 ⇒ 労働者派遣法(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」)


基本的な考え方ー「均等待遇」「均衡待遇」

で、同一労働同一賃金の基本的な考え方は、「均等待遇」「均衡待遇」であるとされています。

この「均」とか「均」とかがわかりにくいですけど(言葉が似ているので)、

➢就業の実態が同じ場合=「均待遇」(イコールにせよ)
➢就業の実態が異なる場合=「均待遇」(イコールじゃなくていいけどバランスはとれ)

みたいな意味です。

改正法施行通達のなかでは、こんな表現がされています。

 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の「均衡のとれた待遇」は、就業の実態に応じたものとなるが、その就業の実態が同じ場合には、「均な待遇」を意味する。
 他方、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で、就業の実態が異なる場合、その「均のとれた待遇」とはどのようなものであるかについては、一義的に決まりにくい上、待遇と言ってもその種類(賃金、教育訓練、福利厚生施設等)や性質・目的(職務の内容との関連性等)は一様ではない。


「就業の実態」をどう判断するのか

では、「就業の実態」はどうやって判断するのか?

均等待遇でも均衡待遇でも、就業の実態を判断するにあたってメインとなる切り口は2つで、

①職務の内容・責任の程度(「職務の内容」と略される)と、
②職務の内容・責任の程度または配置が変更される範囲(「職務の内容・配置の変更範囲」と略される)

とされています。

待遇の判断では、この2つが”要件”とされています。均待遇の判断では、この2つは”要件”ではなく”考慮要素”であり、また、③として「その他の事情」も考慮要素に入れてOK、となっています。

”要件”というのは、該当するなら、そこで決められた法的効果が発生するものです。

これに対して、”考慮要素”というのは、「着眼点」みたいな意味で、いくつかの要素を複合的に考慮しつつ、最後に総合判断でエイヤで決めるもの、って感じです。

要するに、”要件”よりはムニャッとしている感じ、ですかね。

改正法施行通達の上記の引用部分(の後半)にも書いてますが、就業の実態が異なる場合の、”バランスのとれた待遇=均待遇”というのは一義的には決まらないため、そういう判断方法になっているわけです。

まとめると、同一労働同一賃金というのは、

➢【均待遇】
就業の実態として①②が同じなら、均等の待遇にせよ
➢【均待遇】
就業の実態として①②や③その他の事情が違うなら、均等の待遇にしなくてもいいが、不合理な相違はないようにせよ(バランスのとれた待遇にせよ)

みたいな意味です。
(筆者の理解。ちょっと乱暴?笑)


結び

同一労働同一賃金の基本的な考え方を、ざっと見てみました。

ちなみに、最近、最高裁判決の出た非正規訴訟で問題となったのは、法改正後のものではなくて、法改正前のもので、労働契約法20条というやつです。

待遇に相当する規定です。

法改正の前後の変化がややこしくてわかりにくいので、参考までに、最後に表でまとめておきます。
(筆者のブログより)

何かの参考になれば幸いです。

同一労働同一賃金の解説②|均等待遇・均衡待遇【パート・有期労働者の場合】 - 法律ファンライフ


▽本記事のフルバージョンはこちら(筆者のブログ)
同一労働同一賃金に関して、全5回の連載記事にしています。


▽非正規訴訟の解説についてはこちら(筆者のブログ)
改正前・労働契約法20条と、非正規訴訟の先例であるハマキョウレックス事件と長澤運輸事件最高裁判決について、解説しています。


[注記]
本記事は筆者の私見であり、筆者の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。


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