縫製工場あるある②生地は生ものです

あるあるかどうかは少々疑問ですが、
わたくし的には生地は「生もの」です。

漢字でも「生(なま)」って言っちゃってますからね。

特に我々が得意とするカットソー生地は、伸縮性があるため、
予想だにしない変化を見せる時がある。

まず、裁断するために生地を並べる(延反(えんたん))時点で、
伸びたり縮んだり。
縫製するために細かいパーツに裁断する時点で、
伸びたり縮んだり。
裁断場から縫製場に運ぶ時点で、
伸びたり縮んだり。
ミシンで縫製する時点で、
伸びたり縮んだり。
仕上げにアイロンする時点で、
伸びたり縮んだり。
お客さんに納品するために運送してる時点で、
伸びたり縮んだり。

どこで何が起きるか分かりません。
まさに生もの。

もちろん、全ての生地が全ての工程で上記のように変質するわけではありません。

ある生地は全く変質しないし、
ある生地は裁断の時だけ変質するし、
ある生地は仕上げアイロンの時に変質するし。

この変質に対応すべく、
サンプル作成の段階で、パターンを調整したり、
そもそもこの生地は使わないでおこう、と決めたりします。

我々のような下請け工場は、サンプル時に気になったところをコメントして、
お客さんに警鐘を鳴らすんですが、
「そもそもこの生地は使わないでおこう」の部分は全くもって聞き入れられない。

「何とか頑張ってください」

て言われるんですよ。

え?何とか?頑張る?私が?

みなさん根性論とかお嫌いって伺ってますけど?
縫製工場だけ根性論ですか?
頭の方は大丈夫ですか?

って思ってます。

生地の問題は生地屋と相談しろ。

って思ってます。

生地屋さんて、生地を作るプロかもしれませんが、
生地のことを、何となく、経験値で理解してるのは多分縫製工場だと思います。

縫製工場の人間は、生地屋さんより圧倒的に反復して同じ生地を触るし、
加工の過程での変質も見ていますからね。

だから縫製工場の意見聞いて欲しいんですけど、
「生地屋さんがいけるって言ってるからこのまま進めてください」
って言われちゃうんですよ。

どついたろか。

って思ってます。

さらに、
生地の特性を考慮してパタンナーさんがパターンを調整してくれるんですけど、
思ったように生地が変質しなくて、予定のサイズに上がらないこともあります。

そんな時、縫製工場はこう言われます。

「なんで思った通りに縮まなかったor伸びなかったんですか?」

・・・知るかよ。

って思ってます。

パターンの問題はパタンナーの実力だろ。

って思ってます。


以前、裁断と縫製とアイロンで、着丈がトータル7cmくらい縮む生地があったんですが、そもそもそんな縮む生地、量産に向いてないと思うんですよ。
生地なんて、探せば似たような風合いのものいくらでもあるんだから、
サンプル時点で「生地変えよう!」って思ってくれたら良いんですが、
めんどくさいのか何なのか、その生地で企画が進行しまして。

案の定、完成したら生地は2cmくらいしか縮まず、問題になりました。

もちろんこの時もこう言われました。

「どうして7cm縮まなかったんですか?」

知るかよ。
工場としては、こうとしか言いようがない。

我々は、
お客さんが選んだ生地で、
お客さんが作ったパターンで、
お客さんの言う通りに縫っただけ。

だからね、生地って生ものなんですよ。
鉄やプラスチックのように、判で押したようにはできません。

7cmもの変化を見越して企画するなんて、
そもそも成り立っていないんですよ、企画として。

そうゆうのをね、
分かっている、分かろうとする、
デザイナーやパタンナーや生地屋さんが、
本当に少ないな、と10数年縫製工場やってきて実感しています。

素人が寄ってたかって仕事をしているのが、アパレル業界。

最後にもう一回言っておきます。

生地って「生もの」なんですよ。

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