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イニシエーション、恋は線香花火のように

短冊の表と裏に、ふたりで書いた願い事。

「ずっと一緒にいられますように」

書道部の彼女が書く文字は、繊細で、それでいて美しかった。その達筆な字に並んでも恥ずかしくないよう自分なりに丁寧に書こうとして、でも意識するとぎこちなくなって。
かっこわるい字を見てかわいいって笑われる、そんな恋でした。

「2020年までに結婚しようね」
永遠をピュアに信じていた頃、きっとこのまま結婚するんだと思っていた。あと1年もしないで2020年になっちゃうね。折りたたみ式の携帯はスマホになったし、「Re:」を何度もつけて送りあってたメールはLINEになった。携帯を変えるタイミングで、あの頃のメールや写真はもう全部消えちゃった。

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はじめての恋は線香花火のようで、
5年間小さく燃えて、
ぽとっ、とあっけなく消えた。

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お互い高校を卒業して遠距離恋愛になって、会う頻度も少なくなった。織姫と彦星のようにはうまくいかないか。以心伝心のテレパシーなんて幻想。気持ちは伝え続けなきゃダメなんだよなっていう当たり前のことを、この時ようやく気づいた。

「初めての恋愛を経験したときには誰でも、この愛は絶対だって思い込む。絶対って言葉を使っちゃう。でも人間には--この世の中には、絶対なんてことはないんだよって、いつかわかるときがくる。それがわかるようになって初めて大人になるっていうのかな。それをわからせてくれる恋愛のことを、彼はイニシエーションって言葉で表現してたの。」(乾くるみ『イニシエーション・ラブ』より)

通過儀礼の恋。この恋愛はきっとイニシエーションで、次に愛する人のことはもっと大切にしようと誓った。

数年後、新しい恋をして、半年後に別れた。
また新しい恋をして、3ヶ月後に別れた。

人を好きになるってことがだんだんわからなくなって、恋人の時間を奪ってるのが申し訳なくなって、別れを切り出すタイミングが少しずつはやくなっていった。
「この人ならもしかしたら」は、もうなんのアテにもならなくなった。だからといって、初めての彼女とやり直したいわけでもない。心っていうのはよくわからないいい加減なものだな。
好きになりかけても、好きって言われても、付き合わない方がいいのかも。

昨日まで友達だった人が、言葉ひとつで恋人になる。夫婦になる。そんなことがとても不思議で美しくて、画面の向こうのように遠くに感じる。そんなドラマを横目に見ながら、自分の人生は自分らしく生きていきたいな。

明日の七夕、短冊に書くのはきっと恋愛のことじゃないけど、みんながしあわせになれますように。
天の川が綺麗に輝いて、みんなが空を見上げるような、そんな日になればいいな。

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