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【ベイツ大学生活】キャンパス内に無料の生理用品が置かれるようになりました

「生理の貧困」問題

日本でもここ数年、社会的な認知度が上がっている「生理の貧困」問題。経済状況や家庭環境などによって、必要な生理用品を入手できない状態をさします。増税の際には、日常の中で必要不可欠なものなのに軽減税率が適用されないということが注目され、議論になりました。

この問題は日本だけではなく、アメリカでも同じなようです。例えば、2021年カリフォルニア州の知事は、州内の公立学校で生理用品を無料で配布する法律に署名たことで、全米で話題になりました。

日本でもアメリカでもこの問題に対するパブリックな議論ができつつあるのだなと感じていた2月末のある日、キャンパス内のいくつかのトイレに見慣れないものを見つけました。

なんかある…!

ベイツ大学が新たに始めたThe Period Projectという取り組みです。このプロジェクトの背景について、ベイツ大学のHPと学内新聞Bates Studentの記事を引用しながら紹介していきます。

The Period Projectとは?

このプロジェクトは、学内の運動競技部門、施設管理部門、ヘルス・サービス部門、レジデンスライフ・ヘルスエデュケーション部門と、Aunt FlowというNPOが提携し、無料で生理用品を提供するものです。このプロジェクトが始まった背景にはベイツの学生のニーズが反映されています。

“heard many times from students that free and conveniently located menstrual products are a clear health need across campus,”
「キャンパス内の便利な場所にある、無料の生理用品は明らかに健康のニーズであると多くの学生から聞いています」
”Bates to Supply Free Menstrual Products to 19 Campus Locations at the End of February”
The Bates Student, February 16, 2022

導入に先駆けて、キャンパス内では大学オフィスや学生がニーズの把握やドネーションを募っていました。

図書館に貼ってあった寄付を募るチラシ

誰もが生理用品にアクセスできる環境を整備

経済的なバリアをなくす

アメリカでは生理用品は嗜好品として課税されます。この経済的な負担が生理用品を入手する際の大きな障壁になっているのです。ベイツ大学のThe Period Projectのページには以下のようなことが記載されています。

”In the United States, menstrual products are still taxed as luxury items, which makes access to these essential items challenging for some people. Bates hopes to eliminate access barriers to those who may live on, work at, or visit our campus”
「アメリカでは、生理用品は依然として嗜好品として課税されているので、必要な生理用品を入手することが困難な場合があります。ベイツ大学は、キャンパスに住む人、働く人、訪れる人たちのために、このようなアクセスの障壁をなくしたいと思っています」
The Period Project
Residence Life and Health Education, Bates College
the Period Projectのページより

学生だけではなく、ベイツ大学というコミュニティに関わる全ての人たちの、生理用品への平等なアクセスを想定していることが分かります。

ジェンダーの多様性にも配慮

ベイツが想定している平等なアクセスは、多様なジェンダーにも配慮されています。

”Bates College recognizes that people of all genders may need menstrual products, and some of those folks do not use women’s restrooms. As such, Aunt Flow products can be found in several gender neutral, single-occupancy bathrooms, as well as in certain multiple-occupancy bathrooms on campus labeled women’s. If we are able to expand this initiative in the future, we will also stock restrooms labeled men’s."
「私たちは、あらゆるジェンダーの人々が生理用品を必要とし、その中には女性用トイレを使用しない人々もいることを認識しています。そのため、Aunt Flowのプロダクトを女性用トイレだけではなく、学内のいくつかのジェンダー・ニュートラルのトイレや個室のトイレにも設置しています。将来的にこの取り組みを拡大させることができたら、男性用のトイレにも設置するつもりです」
The Period Project
Residence Life and Health Education, Bates College

前提として、当たり前のようにジェンダー・ニュートラルのトイレや個室のトイレがあることもかなり進んでいるなぁと思いますが、大学として、生理用品への平等なアクセスをジェンダーの視点からも考えていることを示すのは重要なメッセージだと思いました。

私の日本の大学でもオールジェンダートイレが設置され、一部には無料の生理用品が置かれるようになりましたが、やっぱりアメリカでは意思決定にジェンダーの多様さが入っている「当たり前さ」が格段に違うなぁと感じています。

実際に使ってみた!

ディスペンサーからはボタンを押すだけで出てきます。シンプル。普段は日本の製品を使っているので、実は初めてのアメリカの生理用品だったのですが不快感もなく、快適に過ごせました。

押すだけ
ナプキンとタンポン両方あります

Aunt Flowはプロダクトにもこだわっているようです。

Aunt Flow provides their own line of menstrual products, including pads and tampons. All products are made with 100% organic cotton, and are free from synthetics, rayons, and dyes. All packaging and applicators are biodegradable.
「Aunt Flowのプロダクトは自社の工場で生産されています。全てのプロダクトは100%オーガニックコットンで作られており、合成繊維、レーヨン、染料を使っていません。そして全てのパッケージとアプリケーターは生物分解性です」
The Period Project
Residence Life and Health Education, Bates College

ベイツ大学がAunt Flowのプロダクトを無料で設置した意味というのは経済的なサポートだけに留まらないと思います。誰でもいつでもアクセスできるよ、というメッセージを発することで、このコミュニティの中で、安心して自分らしく過ごすことができる人が増えます。日常の中で誰かが感じている小さな不便や不安、ハードルをコミュニティ全体で変えていく、そんなベイツ大学は私にとってもとても居心地がいいです。

引用元の記事

導入初日にコモンズの前で配っていたスティッカー
ラップトップに貼ろっと。

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