見出し画像

DX戦記~日本のDXについての試論

日本のDXの遅れ

日本企業が「DX、DX」と盛んに言う一方で、実際の進捗は遅れているという現状があります。これは企業が旧態依然とした情報システムの扱いに囚われているためです。多くの企業が「DX」を掲げているものの、基本的なデジタル化すら十分に達成していない例が多いのです。

コモディティ化していない頃のITシステムの感覚のまま

その原因の一つとして、コモディティ化以前のITシステムの感覚のママである事が挙げられます

かつてはITシステムは企業の内部で、特殊な専門機械として位置づけられていました。

その時代は、テニスコートくらいの大型コンピューターに、ビット演算を熟知した専門技術者が綿密にプロセスを設計し、低級言語のプログラムを載せた大型機器でした。

コンピューティングは10年単位で固定されたプロセスを処理するものであり、データ入力は電算室のキーパンチャーが行うものでした。

現在のITシステムは、コモディティ化している

しかし、ITシステムはコモディティ化が進み、はるか前から、一般のユーザーにも容易に扱えるものとなっています。

クラウドサービスやSaaS(Software as a Service)などが普及し、大がかりな業務システムであっても、以前と比べ物にならないくらい短期間で導入、変更、更新が出来るようになりました。

また、プログラム言語を知らない人々でも、一定レベルの業務を設計・実装する事ができるようになり、情報処理技術の恩恵を十分に受けられる時代になったのです。

これは、企業の経営戦略・事業戦略の実行能力の飛躍的な向上をもたらしました。

向上したものの1つは、付加価値を上げ、また生み出す能力。
もう1つは、低コストオペレーションを追求・実現する能力。

情報技術は未成熟であり、毎年大幅に能力は向上し、その能力の向上によって新たな技術が生まれ、サービスが生まれます。

この情報技術の進歩サイクルに追従し、実行能力を伸ばしている企業が競争で優位に立ちつづけられるのです。

残念な、古い概念に囚われた日本企業の課題

しかし、多くの日本企業はこの変化に対応できていません。依然として旧来の感覚に囚われ、ITシステムの取り扱いを変える事ができていないのです。

「DX、DX」とお題目を唱えたところで、ITシステムがコモディティ化したことによって、経営にどのような影響が起きているか、まったく見えていません。

相変わらず、コンピューターは専門技術者のものと考えていて、10年間固定したプロセスを組ませようとするので、組むことができません。
なぜなら、世界のイケてる競合は数週間、数か月でプロセスが変わり、それによって変化する環境(※)の中で、極めて特殊な業務を除いて、10年固定して使えるようなプロセスを見越して組む事は出来ないためです。

結果、40年前に組まれたソフトウェアをハードウェアだけ更新しながら使い続け、それで競争力をつけようとして現場を疲弊させることになります。

(※)経営課題を「環境変化への対応」と捉えるのは現在、完全な誤りである。優秀な競合は、情報技術の恩恵によって、言葉通り日進月歩でプロセスを変えており、変化は止まらず起きているからである。したがって、経営課題は「変化している環境への対応」や「変化し続ける環境への対応」が正しい。

改善するには、経営者は古い概念を捨て、小学校のプログラミングの教科書から学び始めるか、退場するかの二択

この問題を改善するための唯一の方法は、経営者のITに対する認識を変える事です。経営者が、これまでのITシステムの概念を捨てて、今のITを受容する事です。

「若い人たちに任せれば」と逃げるのも禁止です。
人間、認識できないものに対しては「拒絶」になります。

その事例は「八木アンテナ」を調べれば良くわかります。

まずは、小学校のプログラミングの教科書から学び始めましょう。
これは全く理にかなっている事です。

残念ながら、わが国はITリテラシー教育を受けずに大人になった人が多数を占めます。つまり、ベースがほぼゼロです。

あなたがベースがゼロの外国語を学ぶときに、いきなり、その国の高等教育の教科書を読み、論文を書くでしょうか。違いますね。聞いて・発話して・読んで・書くを、赤ちゃんレベルからスタートします。それを誰も恥ずかしいと思いません。ITも同じです。

当然、学習速度は子供より遥かに早いものになります。外国語学習(※)と同様に、プログラミングも、これまで身に着けてきた知識経験を応用できる部分が多いからです。

そして、ここまで読んでピンとこない場合は、退場を検討した方がよさそうです。

(※)私が外国語学習でものすごく難しいなと思うのは、基本的な部分で、数、音、色、方向などの基礎的感覚。これはITも同様で、足し算のみで処理してるなどチップに近い部分は難しい。これは仕方ありません。

結論

「DXをせねば」という経営者は、まずは「DX」なんて事を言うのはやめて、ITシステムがコモディティ化したことを理解し、かつてのITシステムの認識や概念を捨て去ることが必要です(※)。

そして、それが出来ない/したくない場合は、決定権を譲りましょう。
現実を認識しないで行われる意思決定は、経営上のリスクでしかありません。

(※)私もITシステムの認識や概念を捨て去ったことが何度かある。タイミングは、インターネット、大容量化、通信機器とセンサー、クラウドのコモディティ化が始まった時。これらはITシステムの在りようをビフォー・アフターで大きく変えるアーキテクチャであった。
生成AIはまだよくわからないので、あれこれ使っている。やってみなければ認識できない、認識できなければ判断できない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?