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DX閑話~ノーコードツールの罠

ノーコードツールというものが注目されているようです。
説明するまでもなく、ノーコードツールとは、プログラミングの知識やスキルがなくても、ドラッグアンドドロップや設定画面などの簡単な操作でアプリケーションを作成できるツールです。

とはいえ、ノーコードツールにも落とし穴があるように見えます。
ツールに罪は全くないのですが、運用の落とし穴いです。

ノーコードツールを入れて、数百のアプリ乱立するのは喜劇か悲劇か

ノーコードツールの最大の魅力は、ちょっとした習得をすれば、現場で簡単にアプリを作れることです。

よく、ノーコードツールの導入事例では短期間で大量のアプリが作られたことが成功事例として紹介されていますが、これが経営的に成功かどうかはわかりません。

ものすごく分かりやすい例として2つの事例を紹介しましょう。

事例1:多重化したカレンダーアプリ

  • 1つのプロジェクトに、複数のカレンダーが乱立
    (関係する4つの部署が、それぞれカレンダーを作っている)

  • 情報が各カレンダーに分散して登録されている
    (開催者によって、会議を記載するカレンダーが異なる)

  • プロジェクトメンバーは、定期的に4つのカレンダーを確認し、自らの個人カレンダーに予定をコピーして使っている。

これが効率化でしょうか。とはいえ、これでも紙を配布しているよりはマシです。

事例2:ネ申Excelを奉る申請アプリ

  • ワークフローアプリでよくある話

  • なぜか、申請フォームに定型のネ申Excelを貼り付ける仕様

そして、ノーツを思い起こさせる懐かしサイロ化

そして、乱立アプリの深刻な点は、本来、連携すべき情報が孤立したデータベースとして乱立していくことです。

ノーコードツールの情報管理のサイロ化は、かつてのノーツを思い起こします。ノーツは、大企業が大好きだったグループウェアのことで、ユーザーが自分でアプリケーションを作成できるという点で、ノーコードツールの先駆けと言えます。しかし、ノーツは、各ユーザーが作成したアプリケーションがバラバラになり、管理や運用が困難になるという問題に直面しました。

またノーツのアプリケーションは、他のシステムとの連携や移行が難しく、レガシー化しました。ノーコードツールは他のシステムとの連携が容易という点が改善されていますが、情報管理の観点で見ると、ノーツと大して変わらない状況になっていたりします。

アプリの数を自慢することは自慢できることなのか?

中身が肝心、掲示板にファイルを貼り付けるだけの謎アプリも多い

さらに、作成されたアプリの中には、本当に必要なのか疑問に思うものもあります。例えば、掲示板にファイルを張り付けるだけのアプリ。

デジタル化の利点である、情報の流れがスムーズになる=業務の流れがスムーズになるを全く利用出来ていません。

でも、紙のバインダー保管より良いですが。それでいいんでしょうか?

単に業務設計がまずい可能性

短期間で数百ものアプリが乱立する状況、これって恐ろしく今の業務設計がまずい可能性があります。きれいに業務設計が為されていたら、数個~十数個程度に収まる可能性があります。

ノーコードツールを活用するには

こんな罠だらけのノーコードツールですが、罠にはまるのはツールが悪いのではありません。ツールはツールです、ツールごときに罪はありません。

じゃあどうすれば良いかというと、いくつかの設計・運用スキルを学ぶ必要があります。

業務の流れを考えるスキル

せっかくの業務プラットフォームなのですから、アプリは掲示板でも何でもよいんですが、その業務の前後を考えましょう。
これは業務設計とかなんとかのジャンルのスキルですが、ぶっちゃけ、標準化です。ISOの業務フローを適当に書かずに、ちゃんと書いていれば普通にできているはずです。

ちょっとしたデータベースのスキル

デジタルツールは、情報を取り扱う系のツールですが、基本はデータベースです。これはノーコードアプリでも全く同じで、情報を有効に使っていくのであれば、データ構造を考えて設計する必要があります。正規形やテーブルくらいは押さえておく必要があります。

ちょっとした分析のスキル

なぜか業務系アプリに多く、ノーコードツールを作ったアプリもそうなりがちなのですが、分析という観点が抜けているとイタイです。
業務が全く分析できないようなデータ構想のアプリを作ってしまうと、アプリの中に記録されているアクティビティを測っていくことが出来ません。

やっぱりノーコードツールは便利

正直、ノーコードツールの手軽さは本当に素晴らしいです。
なんというか、最近のノーコードツールって、ほんとうにすごくて、シビアな事を求めなければ、だいたいの事が出来る情報システムが作れてしまいます。。

それゆえに、情報システムと全く同じ罠が待ち構えているという事なのでしょう。

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