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ガンバレ あきらめない勇気が必ず役に立つときが来る

小学校の教師をしている池上先生は
「いいか、あきらめるな。
自分の限界は自分で決めるものじゃない。
あきらめない勇気が必ず役に立つときが来る」
何か事あるごとに生徒たちに訴える情熱先生です。
 
そんな池上先生のいる小学校の運動会での事です。
徒競走が始まりました。
リズミカルな音楽がスピーカーから響き渡ります。
パンと音が鳴ると、ワーッと言う喚声とともに
子供たちが次から次へと走り出します。
その中で他のレースの何倍も時間のかかるレースがありました。
たぶん、小学校3年生くらいでしょう。
他の子供たちがゴールしているのに
半分も走っていない子がいます。
T君です。
「おそいなあ。あいつ」
「なんだよ。あれ」
心ないブーイングが場内に広がり始めました。
T君は、背も低く、顔もドス黒い子です。
たまたま見ていた5年生の担任の池上先生は、
「あの子は・・・」
そう呟くと数ヶ月前の職員会議を思い出しました・・・
 
T君の担任の先生は、たしか新任の女の先生でした
「私一人だけではT君を守れません。
職員全員で守ってあげなくては・・・T君は
赤ちゃんの時に大きな病気をして肝臓がボロボロなんです。
いつ、病院に入院することになるかもしれないんです」
涙ながらに語る彼女には、多くのベテラン教師にない
ひたむきな情熱がありました。
そんな彼女を白けた顔で斜めに見る多くの教師たちに
池上先生は腹わたが煮えくりかえる思いでした・・・
 
「クソッタレー」と吐き捨てるように言うと池上先生は
「オーイ、ガンバレー・・ガンバレー」
と手を大きく振り力の限り声を上げました。
そして、何度も何度も「ガンバレ」を叫びました。
すると、池上先生の声に引っ張られるように、
あっちからも、こっちからも、
ガンバレーと子供たちの声が次々と追いかけてくるのです。
ガンバレー、ガンバレー、ガンバレー・・・
いつの間にか池上先生の声は子供たちの声に吸い込まれ、
ガンバレーの大合唱のようになりました。
そんな大合唱の中、
T君が倒れるようにゴールへ入ると、
大きな滝のような拍手の嵐が鳴り響きました・・・
 

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