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すべての失恋は人類の進化の踏み台なのだ

「20××年、人類はついに失恋をなくした」
こんなコマーシャルが世界中を飛び回った。
人間そっくりのロボットがオーダーメードで
製造可能になったのだ。
つい先頃、彼と性格の不一致とやらで別れたばかりの尚美は、
どうしても彼のことが忘れられない。
そこで、尚美は、彼ソックリのロボットを作ってもらって、
そのロボットと暮らそうと思ったのだ。
メーカーに行くと技術者は、尚美の事情を聞いて、
その彼との想い出のビデオや写真、日記などを
すべてロボットにインプットした。
「完成しましたよ」
「ほんと、彼そっくり。でも…」
「でも、何です?」
「こんなに彼そっくりだと、また、
性格の不一致にならないかしら…」
「大丈夫です。どんな大喧嘩しても、このロボットは燃料電池がなくなると
あなたを求めることになります。赤ちゃんが、お母さんのオッパイを
本能的に求めるのと同じですね。このロボットに燃料補給できるのは
あなたしかいません。あなたの網膜形状が、このロボットに記憶されています。
網膜形状が同じ人間はいません。あなただと認識されないと
燃料を受け付けないシステムになっています」
「すごいシステムですね」
「大事にして下さいね。故障したら、いつでもご連絡ください」
こういうわけで、尚美は彼ソックリのロボットと末永く幸せに暮らした。
ただ、たった一度、尚美の心が痛む出来事があった。
ある日、彼ソックリのロボットと手をつないでショッピングを楽しんで
いると、前から、別れた彼が歩いてくるではないか。しかも、もっと
尚美が驚いたのは、彼と腕を組んでいたのは、尚美ソックリのロボットだった。

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