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古迷宮の旅、外伝。

前回・前々回と「ゲームっぽい画作り」のためにいにしえのダンジョンRPG風の背景を描いてみたわけですが、今回はそれに続くオマケ編として、偶然ときを同じくして我が家の迷宮(?)から発掘された"ブツ"を紹介します。

バーチャルボーイ版ウィザードリィ外伝!?

今回、押入れという名の我が家の古迷宮で発見されたのは、約30年前の書類。ぼくがアスキーという出版社のゲーム事業部に在籍していたときに企画会議に出された『ウィザードリィ外伝VB』の企画書です(なお、ぼく自身はこの企画に携わってはいません)。

この場合の『VB』は"Visual Basic"ではなく、1995年に任天堂から発売されたゲーム機"バーチャルボーイ"の略称。この企画書が書かれた1995年は、翌年1996年に発売される任天堂の次世代機『Nintendo 64』(N64)に大きな期待が集まっており、企画会議で「N64の開発機材をもらうために、バーチャルボーイの企画を進める」と事業部長が言っていたのをよく覚えています。

『バーチャルボーイ』(写真はWikipediaより)

ただし、任天堂側が「バーチャルボーイのゲームを出さないとN64の機材を渡さないよ!」と圧力をかけていたのか、事業部長が勝手に「そういうもんだ」と思っていただけなのかは不明です。

そして、今のぼくらは知っているとおり、VBもN64も低迷し、結局この『Wiz外伝VB』も発売されていません。おそらく開発に至らなかったか、VBの低迷によって中止を余儀なくされたのだと思います。

「思います」なんて不確かなことを言っているのは、ぼくはこの事業部を早々に去ったため、この先の展開のことはよく知らないからです。

なんかね、いや~な感じがしていたんですよ。事業部長の話、おもしろくなかったし……。

当時のアスキーは1994年のSFC版『ダービースタリオン』の超ヒットでわきたち、しかしダビスタに続くヒット作を期待できないなかで、SFC版RPGツクール『SUPER DANTE』(1995)が中ヒットしたことから「ツクールをダビスタに続く看板タイトルに」と期待していました。ところが、その後家庭用ゲーム機版のツクールは新作を出しても右肩下がり。なかなか「誰でも簡単に」なんてゲームを作れませんからね。

また、この事業部ではNHKの大河ドラマにあわせて時代物シミュレーションRPGを売ろうとするなど、どうも"山師"な感じが強かったのが肌にあわず、ぼくは出版部門へ復帰させてもらいました。なお、この山師的な人たちはその後独立してアクセラというゲーム会社を作り、ろくにゲームを売りもしないまま役員が豪遊だけした末に倒産、離散しています。

企画書の中身をチラ見する

ところでこの企画書の中身を見ていくと、これまでのWiz外伝シリーズとは異なり、本作では50のショートシナリオで構成され、1シナリオを30分程度で終わるものにするとあります。良い! これは良い!

なお、各シナリオは有名どころを含む他方面に執筆を依頼する想定だったようです。

確執ってなんでしょうね?ウフフ

VBは3DSのご先祖様のようなゲーム機で「立体視」が特徴だったため、本作では画面表示にもこだわりがあったようです。今どきのゲームではありえませんが、昔のWizardryは出現したモンスターの群れのうち一部しかグラフィックが表示されなかったのを、本作ではきちんと全体を見せ、動きもつける想定だったことがわかります。

バーチャルボーイのゲーム画面はモノクロで、しかも使われている色が赤と黒の2色という"地獄色"。ゲーム画面を見てもどうにも食指が動かないのですが、Wizardryなら地獄色も「むしろ、あってる」わけで、会議でこの企画書を見たときから発売されたらプレイしてみたいなと思っていました。

結局バーチャルボーイは早々に実売も伴わない「残念ゲーム機」との評価が決定づけられて当時のゲームシーンから消えていくわけですが、本作Wiz外伝VBが早期に発売されていれば、もしかしたらVBの延命役くらいにはなっていたかもしれません。発売されなかったのがつくづく残念です!

(おしまい)

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