見出し画像

ドット絵モンスター『弱いスライム』(前編)

みなさん、「スライム」と聞いて何を思い出しますか? もはや日本でもっともメジャーな「スライム」はドラクエシリーズでおなじみの"青いアイツ"かと思いますが、ぼくら団塊ジュニア世代のようなおじさんたちのなかにはそれが許せない人たちがいます。

というのも、ぼくらの世代が最初に「スライム」を認識した当時はまだファミコンもない時代で、最初にその言葉を耳にしたのは、玩具として売られている"バケツに入った緑のネバネバ"だったからです。

もっとも玩具のスライムは、なにを楽しむのかもわからないなかなかの「誰得おもちゃ」としての側面もあり、決して親にねだりたいほどのものでも、ましてやお小遣いを費やして買いたいものでもなく、ぼくは自分で持ってはいませんでした。でも、友達が持っていたスライムはなんだか"イイ匂い"がしていたせいで脳の前頭葉に深く刻まれてしまったようです。ちなみに、触ったこともありません。ネバネバ、うれしくないですし。

ま、その"緑のネバネバ"は当時の流行が過ぎ去ったあとも販売されており、今も購入できるようですから、世代は違ってもその存在自体は知っている人が多いのではないでしょうか。

検索してみると……ありました!

んんん!? なんかずいぶん簡素になっているような……。昔はもうちょっとしっかりしたバケツらしいバケツに入っていたような気がするんですけどね。ゴツい、アメリカンなやつに。

それとも記憶の改竄があったのでしょうか?

気になってWikipediaを見ていたところ、玩具のスライムは元は1976年にアメリカで発売されたものとのこと。そして、「そもそもは第二次世界大戦の時にゴムの産地を日本軍に占拠され、ゴム不足となったアメリカで、人工的にゴムを作ろうとして生まれた物であった。」との真偽不明の情報も書かれていました。

なるほど、スライムはアメリカ産だったんですね。それで今は大統領の頭のなかに詰まっているわけですか! はー、なるほどなるほど。

Wikipedia英語版には昔の写真がありました。

スライムは弱くなった

大統領の頭のなかはどうにも真偽不明ですが、アメリカで1976年に発売されたということは事実のようです。だとすると、これは「弱いスライム」の誕生に関わりがあるかもしれません。

もはやゲームのスライムといえば物語序盤に登場する"雑魚キャラ"の定番となっていますが、昔のファンタジー小説等に登場するスライムは、ガッツリと人を襲う粘液上の怪物で手強く、厄介な相手とされていました。

ゲームに登場するスライムもテーブルトークRPG『Dungeons & Dragons』(D&D)とその影響を強く受けていると思われるFFシリーズでは強い怪物として登場しますが、もはや主流とはいえないかもしれません。

そして、はじめに弱いモンスターとして登場したのがドラクエ……ではなく『Wizardry』(のBUBBLY SLIME)だと言われているようです。Wizardryの発売は1981年で、玩具のスライム登場から5年後のこと。

Wizardryだけでなくその影響を受けた作品も含め、旧来の怪物ではなく玩具のスライムが念頭にあったとすれば、それは強いスライムとは別の系譜にあると考えられます。ただし昔のコンピューターゲームは攻撃の"属性"なんてものを区別できないのが普通でしたから、剣で斬って倒せる普通のモンスターにせざるをえなかった事情がスライム弱体化の始まりだったのでしょう。

ただ、開発者の思惑や都合はさておき。プレイヤー側が"弱いスライム"を受け入れた背景には、日米で発売されていた玩具のスライムの影響が少なからずあったのではないでしょうか。

さてさて、前置きが長くなってしまいましたので、『弱いスライム』のドット絵メイキングは次回・後編でお届けすることにします。いやべつに、「スライムだけに粘ろう」だなんて思っていませんよ! 本当ですってば!

(つづく)




この記事が参加している募集

つくってみた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?