【無料|マッチプレビュー】オルカ鴨川FC×ヴィアマテラス宮崎|2024プレナスなでしこリーグ1部 第2節|
なでしこリーグ1部第2節。ヴィアマテラス宮崎が対戦する相手はオルカ鴨川FCです。昨年1部リーグを制した覇者。ヴィアマテラス宮崎にとって難敵が続きます。次戦、3月24日(日)の試合はアウェイ。千葉県鴨川市にある鴨川市陸上競技場で行われます。12時30分、キックオフ。
さて昨日のリーグ戦第1節。ホーム開幕を飾る初戦でヴィアマテラス宮崎は3-1(前半0-1)の逆転勝利。一昨年の覇者、スフィーダ世田谷FCを相手に勝ち点3を獲得。見事、皇后杯の雪辱を果たしました。後半50分、キャプテン嘉数選手の見事な同点弾。つづく76分、切通選手の逆転を果たす追加点。さらに84分、試合を決定づけるゴールをふたたび嘉数選手がネットへ突き刺し、感動的な逆転劇を繰り広げました。後半に取り戻した勢い。そこからゴールを決めるたびスタンドで沸き上がる歓声が曇天を吹き払う光景は、まだ目に焼き付いています。
一方、つぎの第2節で対戦するオルカ鴨川FCは、リーグ開幕のアウェイ戦で静岡SSUボニータを相手に1-1(前半0-1)の引き分け(得点52分、松尾美月選手)。勝ち点を相手と分け合う結果に終わっています。
オルカ鴨川FCはどういったチーム?
それでは次節の相手、オルカ鴨川FCはどういった特徴のチームなのでしょうか?
表1は、2023シーズンのなでしこリーグ1部の順位表です。御覧の通り、昨シーズンはリーグ1位。過去3年で順位をさかのぼると、2021年が1部リーグ9位、2022年は1部リーグ5位、そして1部リーグ制覇(2023年)と、着実に力をつけているチームと言えるでしょう。昨季の得点数はリーグ4位。失点数が1位であることから、守備に強みのあるチームに見えますね。
得点データから見える特徴
ここからは記録を基に、オルカ鴨川FCの攻撃について見ていきましょう(昨季の公式記録はこちらから見られます)。
表2は昨シーズンのオルカ鴨川FCの得点とシュートのデータをまとめたものです。
まず得点について。全22試合で決めたゴールは38点で、1試合平均は1.73点。圧倒的な得点力があるというわけではありませんが、着実にゴールを決める力はありそうです。
注目は前半と後半で違いが見られること。後半(25点)に前半(13点)のおよそ2倍のゴールを決めていますね。得点しなかった回数を比べても、前半の13回に対して後半は6回と、前半はゴールを決めることが少ない一方、後半に得点する傾向が見られます。
つぎはシュートについて。1試合平均のシュート数は10.55本。シュート数において、前半と後半で明らかな違いは見られません。
得点とシュートを合わせた結果、決定率にも特徴が現れます。試合全体の決定率は16.4%で、およそシュート6本につき1点をゴールしている割合です。しかし、やはり前半と後半で違いがあります。後半の決定率が20.3%と、前半(11.9%)の2倍近い割合でシュートを決めています。
こういった特徴が生まれている理由は、このデータからは分かりません。しかしながら、記録を見る限り後半に得点力が上がるチームのようです(後半に良くなるのは強いチームの特徴だと私は思っています)。
失点データから見える特徴
ここからは失点について。
表3は、昨シーズンにオルカ鴨川FCが相手から奪われた失点と、打たれたシュートについてまとめたものです。
22試合の失点数は18で、1試合の平均失点は0.82と1点を切っています。前半と後半で明らかな違いは見当たりません。
打たれたシュートの総数は165本で、1試合平均は7.5本。前半も後半も、平均3、4本のシュートを打たれています。
前節でヴィアマテラス宮崎が対戦したチームと比べると、スフィーダ世田谷FCは1試合平均が失点0.95点、被シュート数7.55点でした。オルカ鴨川FCの試合全体を通した失点の傾向は、スフィーダ世田谷FCと大きな違いはないと思われます。
両者の違いは、オルカ鴨川FCの守備には前半と後半における違いが見られないことです(スフィーダ世田谷は前半と後半に違いがありました)。このデータは、オルカ鴨川FCが試合全体を通して安定した守備力を持っていることを暗示しています。
得点パターンの分類
それでは、攻撃時にオルカ鴨川FCはどのような形で得点しているのでしょうか? つぎはこの点について見ていきます。
ゴールしたシュート位置の分類
表4は、昨シーズンにオルカ鴨川FCがリーグ戦全22試合で決めたゴールを分類したものです。
まず左端で合計の濃い黄色の部分を見ると、オープンプレーからの得点が全体の7割(38ゴール中26回)を占めています。一方、セットプレーからのゴールは3割(38ゴール中12回)ほどです。セットプレーの内訳を見ると、フリーキックからやコーナーキックからの得点が29%と多いことが分かります(合わせて38ゴール中11回)。
つぎに、表の「高価値」の薄い黄色の部分では、得点しやすいこのエリアからのゴールが全体の2割近くあることが分かります(38ゴール中7回)。ただし、全体の傾向とは異なり、このエリアだけセットプレーからのゴール(5本)がオープンプレー(2本)の2倍を超えています。つまり、高価値エリアではオープンプレーよりセットプレーによる得点の方が多くなっています。
それから青の「中価値」の部分では、全体の半数以上がこのエリアからの得点であることが分かります(38ゴール中20回)。そのうちオープンプレーからの得点(15本)がセットプレー(5回)の3倍と、より多いことが分かります。
最後に、「低価値」や「その他」の部分を見ますと、その他のエリアの方が低価値エリアより得点が多いです。距離があったり、角度のない位置からもシュートを打ち、ゴールを決める能力がオルカ鴨川FCにはあると言えます。
アシストを出したエリア
表5は、昨シーズンにオルカ鴨川FCがアシストととなるボールを出した位置を分類したものです。
アタッキングサードでのアシストが全体の8割近く(26回中20回)と、大部分は前線からのアシストであることが分かります。内訳を見ると、中央と右サイドがやや多く、左サイドは相対的に少ないようです。
残りのおよそ2割のアシストは全てミドルサードからになります。これら中盤からのアシストに関しては、中央や両サイドによる違いはデータから見当たりません。
昨シーズン、ディフェンシブサードからのアシストはありませんでした。
オープンプレーからの得点シーン
ここからは、昨シーズンの映像でオルカ鴨川FCの得点の仕方を見ていきます。
まずオープンプレーで流れの中から得点した場面で、カウンター以外のシーンをいくつかピックアップしました。
こちらは、左サイドからのクロスに中価値エリアで頭で合せて得点した場面です【動画1:第3節73分】。
つぎはスローインからサイドチェンジ。右サイドを突破して中価値エリアへボールを入れて得点した場面【動画2:第17節88分】。
こちらは左サイド。エリア外のかなり角度のないその他エリアからシュートを打ったところになります【動画3:第8節57分】。
これもその他のエリアから。中盤でのボール奪取を起点として、相手の守備ライン裏への抜け出し。遠目からのシュートでゴールした場面です【動画4:第16節8分】。
ここからはカウンターによる得点シーンです。昨シーズンのオルカ鴨川FCは、オープンプレーのうちカウンターからの得点が約4割を占めたチームです(26回のうち10回)。
こちらはアタッキングサードでボールを奪った、ショートカウンターによる得点シーンです【動画5:第15節75分】。
同じくショートカウンターによる得点場面【動画6:第20節7分】。
つぎはミドルサードからのカウンターによる得点シーンです【動画7:第22節84分】。
こちらも同じく、ミドルサードからのカウンター【動画8:第16節74分】。
このように、オルカ鴨川FCはアタッキングサードやミドルサードのボール奪取を起点としたカウンターをひとつの特徴として持っているようです。ヴィアマテラス宮崎としては、それらの位置でボールを失わないことがひとつ重要になるかもしれません。
セットプレーからの得点シーン
ここからはセットプレーによる得点場面です。
最初は左のコーナーキックから。ファーへのボールに頭で合わせ、ゴールしたシーンになります【動画9:第17節34分】。
つぎは右のコーナーキックです。ニアへの真っ直ぐなボールを頭でそらし、ゴールした場面です【動画10:第3節54分】。
今度はフリーキックから。ペナルティエリアへのボールがこぼれたところを拾い、マークをかわして打ったシーンです【動画11:第19節43分】。
こちらもフリーキックから。ゴール前中央へのボールにヘディングで合わせて得点した場面になります【動画12:第17節76分】。
昨シーズンの得点場面から、オルカ鴨川FCの持つ攻撃の特徴は2つ。ひとつはボール奪取からのカウンター。もうひとつは高さを生かした空中戦です。
そのためヴィアマテラス宮崎としては、悪い形でボールを失わないこと(特に自陣)。空中戦の起点となる浮いたボールを自由に蹴らせないこと。そして、浮いたボールのターゲットとなる選手をエリアでフリーにしないこと。これらのことが重要になると思われます。
ただし、オルカ鴨川FCでそれらの役割を担った選手の数名が、昨シーズンでチームを離れています。たとえばセットプレーでキッカーを務めていた7番浦島里紗選手。空中戦のターゲットを担った11番鈴木陽選手。また前線の10番ハンナ・ディアス選手。これらの主力選手が抜けています。そのため、今季のオルカ鴨川FCの攻撃がどうであるかについては不透明な部分も残ります。
失点パターンの分類
ここからは守備時、オルカ鴨川FCはどのような形で失点をしているのか? この点について見ていきましょう。
ゴールを決められたシュートの位置
表6は、オルカ鴨川FCが昨シーズンのリーグ戦全22試合で相手チームから決められたゴールを分類したものです。
まず「総計」の濃い黄色の部分を見てみると、オープンプレーの失点が全体の約8割を占めています。セットプレーからの失点は2割ほどと、「現代サッカーのゴールの3割はセットプレーから生まれる」を基準に比べると、やや少ないようです。
つぎに「高価値」の薄い黄色のところを見てみましょう。このエリアからの失点は全体の2割ほど。注目すべきはオープンプレーが4回のうち3回を占め、セットプレーからの失点がPKの1回しかないことです。このデータは、セットプレーでゴール直前のエリアにおけるオルカ鴨川FCの強さを暗示しているかもしれません。
さらに濃い青色の「中価値」からの失点。オルカ鴨川FCはこのエリアからの失点が全体の5割強を占めています。オープンプレーがセットプレーの2倍以上と、やはりセットプレーは相対的に少なめです。そのため、ヴィアマテラス宮崎としては、流れの中からいかにこのエリアでシュートチャンスを作るかが攻撃の鍵になると思われます。
最後は「低価値」と「その他」のエリアです。ここで少し目を引くのは、全体に占めるこれらの割合が全く等しいことです。絶対数が少ないので過度な憶測は禁物ですが、オルカ鴨川FCに対して、ゴールまで距離が遠く、角度のあるエリアからでも、状況次第では得点できる可能性があるのかもしれません。たとえば、昨季インプレッシブなミドルシュートを決めた坂田美優選手など、ヴィアマテラス宮崎で遠くから打てる選手はキーパーのポジション次第では狙ってよいかもしれません。
アシストを出されたエリア
ここからはオルカ鴨川FCが失点の際、相手から出されたアシストについてです。
表7は、オルカ鴨川FCが昨シーズンにアシストとなるボールを出された位置を分類したものです。
自陣ディフェンシブサードからのアシストが全体の9割以上を占め、それ以外ではミドルサードからのアシストが1回のみです。ディフェンシブサードの内訳はほぼ均等ですが、両サイドと中央で考えれば両サイド(8回)が中央(3回)の3倍近く。ヴィアマテラス宮崎としては、両サイドからどうチャンスを作り出すか。そこまでどうボールを前進させるのか。それらが攻撃の鍵になるかもしれません。
オープンプレーからの失点シーン
ここからはオルカ鴨川FCがオープンプレーから実際に失点したシーンを映像で見ていきます。
まずこちらは右サイドから。右サイドバック2番の選手が相手との1対1からゴールを決められた場面です【動画13:第17節56分】。
つぎも右サイドから。こちらも右サイドバックの2番が1対1からクロスを上げられ、中央で流れたボールに合された場面です【動画14:第15節42分】。
これも右サイドから。相手チームの連携から2番右サイドバックの裏でわずかにできたスペースからクロスを上げられ、中で合わされた失点です【動画15:第12節85分】。
こちらは疑似カウンターと呼べる失点シーン。オルカ鴨川FCの特徴であるハイプレスがまず敵陣まで引き込まれます。そこから右サイドを連携で突破され、数的不利な状況から失点した場面です【動画16:第11節16分】。
こちらは左サイドを起点とした失点場面。左サイドの低い位置のスローインから中央へ浮き球を入れられます。弾いたセカンドボールを拾われた際にできた左センターバックの背後のスペースを使われ失点した場面です【動画17:第7節14分】。
これは右サイドから守備ラインの裏へボールを出されて運ばれ、そこからクロス。相手が触ったアバウトなボールに対して左センターバックが1対1から打たれて失点したシーンです【動画18:第7節22分】。
セットプレーからの失点シーン
ここからはセットプレーを起点として失点についてです。
こちらは右のコーナーキックを空中戦で競り合い、こぼれたボールを押し込まれた場面です【動画19:第19節45分】。
つぎも右のコーナーキックから。インスイングのボールに中央で合わせてそのままゴールへ流れて入れられています【動画20:第6節22分】。
つぎはPKです。スローインからボックス内へのボールの競り合いからファウル。PKでゴール右上隅へ決められています【動画21:第10節34分】。
最後はPKでこぼれたボールを押し込まれたシーンです。ボックス内へのロングボールに2番の選手がハンドを取られ、ペナルティキックを与えての失点になります【動画22:第22節90+4分】
今回の記事は以上になります。本来はこのあと、
こちらの2点についても書く予定でしたが、私の実力不足で時間内にそこまで達しませんでした。大変申し訳ございません。精進します。
さて、次戦はアウェイ。会場は千葉。私は現地まで行けませんが、なでしこリーグのYouTubeからライブ配信があるようですので、そちらから観戦します。つぎも勝利を! Vamos! VIAMA!!
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