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【無料|マッチプレビュー】ヴィアマテラス宮崎×スフィーダ世田谷FC|なでしこリーグ1部 第1節|2024シーズン

 いよいよなでしこリーグ1部が開幕しますね。ヴィアマテラス宮崎にとっては1部昇格後はじめての試合です。今後を占う意味でも重要な第1節。対戦する相手はスフィーダ世田谷FC。咋シーズンのリーグ成績は4位。2022年には1部リーグを制覇しているチームです。試合日時は2024年03月17日(日)、場所はいちご宮崎新富サッカー場(名前が変わっていますね)。13時キックオフです。


 さて今回の相手、スフィーダ世田谷FC。個人的には一度だけ生で試合を見た記憶があります。2022年12月3日、第44回皇后杯の2回戦。ヴィアマサポーターの方はもうここでお気付きかもしれませんね。そうです。対戦相手はヴィアマテラス宮崎。宮崎に女子のサッカーチームがあることを自分が知り、はじめてヴィアマテラス宮崎を見た試合でした。

 結果は1ー3でヴィアマテラス宮崎の敗戦。ゲームは終始スフィーダ世田谷FCが優勢で、前半にセットプレーの流れからまず1点を先制され、つづいて右サイドのクロスに頭で合されて2点目。前半、ヴィアマテラスも左サイドからのクロスでチャンスを作りますが、得点には至らず。

 0ー2で折り返した後半、序盤にヴィアマテラスが高い位置で奪いシュートまでいきますがこれはバーに弾かれます。さらに右サイドから中盤を経由したサイドチェンジでエリアに侵入。シュートを打ちますが再度バーに嫌われました。その後、ヴィアマテラス宮崎は1点をPKで返しましたが、スフィーダ世田谷FCに追加点をあげられ敗戦。1部リーグのレベルを見せられた試合でした。

 しかし、あれから1年弱。昨シーズンのヴィアマテラス宮崎の活躍はご存じの通りです。なでしこリーグ2部を18試合無敗。勝ち点は2位と10ポイント差で、得失点に至っては25点差。リーグ最少12失点の堅実な守備に、リーグ最多67得点のインクレディブルな攻撃力で2部制覇を成し遂げました。そこからスフィーダ世田谷FCの再戦。昨シーズン私もホームで試合を見続けたヴィアマテラス宮崎が、あれからどのレベルまで来たのか。個人的に楽しみな一戦です。


スフィーダ世田谷FCはどんなチーム?

 それでは今回対戦するスフィーダ世田谷FCはどんなチームなのでしょうか? ゲームの予習としてチームや選手について調べてみました。

 まず昨シーズン、2023なでしこリーグ1部におけるリーグ順位は22チーム中4位(表1)。22試合の成績は10勝8分4敗です。

表1 2023なでしこリーグ1部の順位表(なでしこリーグのHPより)

攻撃の特徴

 つぎに、公式記録から分かる攻撃の特徴を見ていきましょう。

 昨シーズン、スフィーダ世田谷FCが全22試合で取った得点は39点。前半が21点、後半18。1試合の平均得点は1.77点となっています。

 シュートは全試合で合計253本を打っています。前半が138本、後半が115本ですが、前半と後半でシュート数に大きな違いはないと思われます。1試合の平均本数は11.5本。

 シュートを決める力を表す決定率はチーム全体で15.4%。およそシュート6.5本につき1本をゴールしています。

得点パターンの分類

ゴールを決めたシュートの特徴

 それでは特徴をより詳しく見ていきましょう。

 表2は、昨シーズンにおけるスフィーダ世田谷FCの全39得点の内訳を表しています。

表2 2023シーズンにおけるスフィーダ世田谷FCの得点パターン

 「オープン」は通常の流れのプレーからの得点を表しています。一方、「セット」はそれ以外のコーナーキックなどのいわゆるセットプレーからの得点を表しています(PK:ペナルティーキック。FK:フリーキック。CK:コーナーキック)。

 オープンからの得点が74.4%と4分の3近くあることから、スフィーダ世田谷FCボールを保持してビルドアップから確実にボールを前進させ、得点する能力があると言えるでしょう。この点については、あとで映像を踏まえてより詳細に見ていこうと思います。


 つぎに、表3は得点した全38本のシュートが打たれた位置を表しています(1本少ないのはオウンゴールが1点あるためです)。

表3 2023シーズンのスフィーダ世田谷FCが得点したシュートの打たれた位置

 表中の「高価値」、「中価値」、「低価値」、「その他」はシュートの打たれた位置を表しています。それぞれの位置は以下の図1の通りです。

図1 スペース価値によるエリア区分

 「高価値」は図1の黄色の線で囲まれた部分です。ゴールエリアの一部で、ゴールと同じ幅の箇所を指します。ゴール直前のエリアで、打たれたシュートが高い確率で入ると考えられる区域を表しています。

 「中価値」は青色の線で囲まれた箇所です。ゴールエリアの一部と、ゴールエリアの幅のペナルティーエリアの一部を合わせた部分を指します。高価値エリアほどではありませんが、こちらもシュートが入る可能性が高いと考えられるエリアです。

 「低価値」は黒い線で囲まれた部分を指します。ゴールライン側のゴールエリアの角とペナルティーエリアの前方の角を結んだ部分に、ペナルティーエリア幅でその手前5.5メートルの箇所を合わせた区域を表しています。高価値エリアや中価値エリアに比べると、シュートを打つ距離が遠かったり角度が減る分、シュートが入る確率がやや低いと考えられるエリアを指しています。

 「その他」は、以上の3つのいずれにも入らない部分(「低価値」の黒い線の外側)を指します。低価値エリア以上に距離や角度が厳しくなる分、よりシュートを決めることが困難と考えられるエリアを表しています。

 なお、以上のようにエリアを区分けした理由についてはいつか別の記事で書く予定です。

 表3は、スフィーダ世田谷FCが高価値や中価値の得点する可能性が高いエリアから多くのシュートを決めていることを表しています。このことは、同チームがビルドアップにおいてそれらのスペース価値の高いエリアまでボールを運ぶ能力があることも同時に示唆しているでしょう。


表4 スペース価値別の得点パターン

 表4はスペース価値別の得点パターンを表したものです。まず「高価値」を見ると、高価値エリアからの得点のほとんどがセットプレーからのシュートであることが分かります(81.8%)。したがって、ヴィアマテラス宮崎としては相手のセットプレー時には、このエリアからのシュートを抑えることが必要になるでしょう。

 つぎに「中価値」の部分を見ると、大部分がオープン・プレーからのシュートであることが分かります(93.3%)。繰り返しにはなりますが、これはスフィーダ世田谷FCがビルドアップにおいてゴールを決める可能性の高いエリアへボールを運ぶ能力が高いことを示唆しています。そのため、相手のオープン・プレー時、ヴィアマテラス宮崎がいかにそれらのエリア侵入を防ぐかも、勝利に必要な条件になると考えられます。

 一方、「低価値」や「その他」を見ると、ゴールを決めることが難しいエリアからの得点はすべてオープン・プレーからの得点であることが分かります。そのため、相手のオープン・プレー時に遠目からのシュートや角度のあるシュートに対して、ヴィアマテラス宮崎の中盤の選手やディフェンダー、ゴールキーパーは警戒する必要があると言えるでしょう。


アシストのボールを出したエリア

表5 得点をアシストしたボールが出されたエリア

 表5は、昨シーズンにスフィーダ世田谷FCが決めた全39得点に対して、アシストとなるボールが配球されたエリアを表しています。フィールド前方のアタッキングサードからが最多(83.3%)であるのは当然ですが、そのうち中央からが最も多いことは特徴として挙げられます。

 なお、回数は少ないですがミドルサードやディフェンシブサードからのアシストもあるのは、前方の状況次第ではそれら低い位置から一気に前線へロングボールを蹴ってくることがあるためです。


オープン・プレーからの得点シーン

 ここからは、実際の映像を踏まえてスフィーダ世田谷FCの得点の仕方を見ていきます。まず、ボールを運ぶビルドアップからの得点場面です。

 こちらは高価値エリアからの得点のハイライトです【動画1:第19節9分】。場面全体についてはこちらから確認できます


 つぎは中価値エリアからの得点ハイライトです【動画2:第18節39分】。場面全体はこちらから見られます。


 同じく中価値エリアからのハイライトです【動画3:第7節78分】。場面全体はこちらから見られます。


 これも中価値エリアからの得点ハイライト【動画4:第4節77分】。場面全体はこちらから。


 つづいて、低価値エリアからの得点ハイライトです【動画5:第14節47分】。シーン全体はこちらからどうぞ。


 つぎはその他のエリアからの得点ハイライト【動画6:第17節31分】。場面全体はこちらからどうぞ。


 同じくその他のエリアからの得点ハイライトです【動画7:第18節55分】。場面全体はこちらをどうぞ。

 以上の得点場面から言えるスフィーダ世田谷FCの攻撃の大きな特徴は、高い技術に基づいたパスワークと連携と言えるのではないでしょうか。映像内にもあるポストプレーやワンツー、レイオフなどのプレーで複数の選手が連携し、最終的にフリーになる選手をチームとして作り出しています。


 それでは、ここからはいわゆるカウンターと呼ばれる、ポジティブ・トランジションで相手ボールを奪ってからの速い攻撃による得点場面を見ていきます。

 最初はハイプレスからのショートカウンターによる得点ハイライトです【動画8:第13節37分】。少し前の場面からの映像はこちらをどうぞ。


 つぎはミドルサードからのカウンターによる得点場面です【動画9:第4節27分】。相手ボールを奪う場面からはこちらをどうぞ。


  最後は自陣ディフェンシブサードからのカウンターによる得点ハイライトです【動画10:第19節29分】。相手のボール保持からの動画はこちらをどうぞ。

 このように、スフィーダ世田谷FCはいわゆる遅攻だけでなくトランジションから縦への速い攻撃もあります。そのため、ヴィアマテラス宮崎のディフェンダー陣などは、自チームの攻撃時にも前線に残っている選手に対する警戒や、トランジションから縦への速い配球やロングボールへの対応なども求められるかもしれません。


セット・プレーからの得点シーン

 ここからはセットプレーについてそれぞれ見ていこうと思います。まずペナルティキックについてはファウルをもらった選手に関係なく、昨シーズンは4回の得点中3回を10番の大竹選手(ノジマステラ神奈川相模原へ移籍しており今季はいません)が蹴っているため、ある程度キッカーは固定されているものと思われます。なお、残り1回は9番新堀選手が決めています。

 こちらは新堀選手によるPKの得点場面です【動画11:第4節17分】。下の動画も同じ試合で新堀選手がPKを蹴っている場面です【動画12:第4節】。


 こちらはエリア内へのフリーキックに頭で合わせて得点した場面です【動画13:第5節90分】


 つぎは左サイドのコーナーキックからの得点場面です【動画14:第22節60分】。一方、下の動画は右サイドからのコーナーキックによる得点シーンです【動画15:第18節25分】。


守備の特徴

 ここからは一転して、スフィーダ世田谷FCの守備について、昨シーズンの失点の傾向からすこし見ていこうと思います。

表6 昨シーズンのスフィーダ世田谷FCの失点と打たれたシュート

 表6は2023シーズンのリーグ戦22試合において、スフィーダ世田谷FCがゴールを決められた点数と、打たれたシュートのデータです。1試合平均の失点は0.95点と1点を切っています。これはスフィーダ世田谷FCの守備力の高さを示唆しているでしょう。

 表6から読み取れるスフィーダ世田谷FCの失点における最大の特徴は、前半と後半で明らかな違いがあることです。まず、前半の失点が後半の2倍あります。この傾向は、シュート数の違いを考慮したときさらに際立ちます。表から分かる通り、シュート数は前半(63本)の方が後半(103本)よりも少ないです。したがって、スフィーダ世田谷FCは、昨シーズン試合の前半で打たれたシュートが少なかったにもかかわらず、後半より多くの失点をしていたのです。

 以上の傾向は、被決定率における違いを見るとより明白です。後半では6.8%と相手のシュート14、15本に1点しか失点していません。それに対して、前半の被決定率は後半の2倍以上(22.2%)で、シュート4、5本に1点の割合で失点しています。

 昨シーズンのスフィーダ世田谷FCにおけるこの失点の傾向が、どういった理由によって生じたのかまではこのデータからは分かりません。前半の守備において相手チームとのフォーメーションの嚙み合わせなどの修正する前に失点していたのか。あるいは試合の入りから勢いを持って入った相手のカウンターなどによる失点なのか。少ないシュート数と高い決定率はカウンターによる失点の特徴と合致しそうではありますが、あくまで推測に過ぎません。

失点パターンの分類

 上記の傾向を踏まえて、昨シーズンのスフィーダ世田谷FCの全21失点の傾向を映像から、守備の特徴などを把握していきたかったのですが、私の時間の都合でそこまでは手が回りませんでした。申し訳ありません…。

警戒すべき選手は?

 それでは最後、ヴィアマテラス宮崎が最も警戒すべき選手を挙げて終わりにします。

 背番号9番フォワード。24歳、身長164cm、体重53kg。チームトップの得点力を誇る新堀華波選手が、ヴィアマテラス宮崎にとって最も警戒すべき選手になると私は思います。

 新堀選手。公式記録から分かる昨シーズンの総出場時間は1891分で、1試合平均の出場時間は86分。スターティング・メンバーに入った回数は22回で100%。全試合スタメンから出場し、ゲーム終盤までプレイしています。

 昨シーズンのシュート数は45本でチームトップ。記録によれば、平均して試合中42分に1本シュートを打っています。

 得点数は11点で、これもチーム1位。出場172分あたりに1本ゴールを決めていますので、およそ2試合に1回はゴールしている計算になります。

 シュートを決める力を表す決定率は24.4%。約4本に1本は打ったシュートをゴールしています。

 さらに、昨シーズンのアシスト5本はチーム内2位(ちなみに、チーム1位の元8番三本選手は昨シーズンで引退しています)。新堀選手はスフィーダ世田谷FCの全39得点のうち16点(41%)に関与したことになります。

 それでは、新堀選手の得点シーンをいくつか見てみましょう。

 こちらは中価値エリアからの得点【動画16:第3節28分】。新堀選手は本人曰く「ターンからのシュート」を得意なプレーとしているようですので、特にエリア内でのこのようなプレーには注意が必要かもしれません。


 こちらは低価値エリアからの得点場面【動画17:第9節70分】。


 こちらは中価値エリアの得点シーン【動画18:第9節88分】。


 こちらは新堀選手が守備ライン前からアシストしたシーンです【動画19:第21節47分】。

 以上見てきた通り、多彩な得点パターンを持ち、かつアシストでも得点に関与する新堀選手はスフィーダ世田谷FCで攻撃における要の1人と言えるでしょう。ヴィアマテラス宮崎としては、新堀選手をいかに抑えるかが試合を有利な展開へ引き寄せるひとつの鍵になるのではないでしょうか。

 また、攻撃の選手についてもう1人、個人的に気になっている選手がいます。今シーズン日体大SMG横浜から移籍した背番号22番、金子麻優選手です。金子麻優選手はミッドフィルダー登録ですが、昨シーズンの所属チームで決定率24.1%(シュート数29本、7得点)と、新堀選手に引けを取らない成績を残しています。

 個人的な推測ではありますが、金子麻優選手の移籍はスフィーダ世田谷FCの得点力を補強するためではないか、と私は考えています。理由は、昨シーズン新堀選手同様にチームで高い得点力を誇った大竹麻友選手(決定率33.3%:シュート30本10得点。ノジマステラ神奈川相模原へ移籍)と長崎茜選手(決定率22.2%:シュート27本6得点。引退)の2人がチームから離れているからです。

 金子麻優選手の移籍は、大竹選手と長崎選手がチームを離れたことで失った得点力を補うことを期待されてのものではないでしょうか。もしそうであった場合、移籍したばかりの金子麻優選手がスタメンから出場するのか、チームにどれほどフィットしているかなどは分かりませんが、出場した場合は注目かもしれません。

 以上、スフィーダ世田谷FCを率いるのは神川明彦監督。2021年シーズンより指揮をとっています。


 さて、対戦相手のスフィーダ世田谷FCについて見てきましたが、この辺りでそろそろ終わりにしたいと思います。この強敵にヴィアマテラス宮崎がどう戦うのか。試合は2024年03月17日、日曜日。場所はいちご宮崎新富サッカー場。13時キックオフ。私は現地で見ます!!

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