第2回「自分で決めること」

こんにちは。石塚晴子です。
前回の投稿、読んでいただきありがとうございます。
初投稿にも関わらず2500近くアクセスがあり嬉しい限りです。

今回は、「自分で決めること」の大切さ、について触れたいと思います。
決断と書くと大事に感じるかも知れませんが、要は何がしたいのか、どうなりたいのかを考えるとき、自分の心に素直に従うことがどれだけ大事かということを、ご自身の体験と結びつけながら読んで頂ければと思います。
どうぞお付き合いください。

心に残った試合
今までで1番嬉しかった試合と悔しかった試合の話をしたいと思います。
私が一番嬉しかったのは、2015年、高校三年時の全国インターハイの400m優勝でした。その前もその後も、いろんな試合に出て記録も更新してきましたが、表彰台の上で泣いたのはこの試合だけです。
対照に一番悔しかったのが、2016年の大学一年時、ポーランドで行われたU20世界選手権です。400mHはランキング4番でしたが、準決勝で敗退しました。ホテルに帰っても涙が止まらず、何も食べたいと思えないぐらい落ち込みました。
この2つの試合にはある共通点があります。どちらも、ずっと前から自分で目標を決めていた試合でした。
中学生3年生で進路を決めた時には「高校3年生のインターハイで400m優勝する」という目標を持っていました。
高校2年生の時に、インターハイ路線を優先してU20世界選手権を辞退した時に「2年後この大会でメダルを獲る」と心に決めていました。
だからこそ達成した時は言葉にならないぐらい嬉しかったし、それが破れた時は本当に本当に悔しくてたまらなかったです。
ここで言いたいのは、自分で決めた目標は強い力を生み出せるし、成功や失敗のいずれにしても自分の心に強い影響を及ぼすという事です。

引き出しがからっぽ
それからU20世界選手権では、もう一つ私にとってショックな事がありました。気候・言葉・食事・時差…、何もかもがいつもと違う中、二時間後にレースを控えた私は、ウォーミングアップで何をしていいか分からなくなったんです。好き勝手にウォーミングアップをする海外の選手を見て、私は戸惑いました。
「今必要なことは何か」をやっと初めて考えて、自分の引き出しには何も入ってなかったことに気がついたんです。今までやってきたことを、どんな理由があってウォーミングアップでその動きをするのかを、私は説明できない…。自分で考えるどころか、疑問に思うことも、先生に理由を聞くことすらもしてこなかった。
どきり、とする人もいるかも知れませんが「先生の言うことだけ聞いて頑張っていれば勝てる」ってどこかで思っていました。「いつもの」ウォーミングアップをしながら、私は「これはウォームアップじゃなくてただのおまじないだな」と思いました。速く走るためでは無く、不安を解消するために体を動かしているような感覚でした。
その試合で負けた後に「言われた事をやってるだけじゃ勝てない世界があるんだな」と思いました。でも私はそんな世界で走って勝ちたい、その為には「自分がどうしたいのか」をもっと大切にしなきゃいけない。だって二度とこんな思いはしたくないから。

誤解があるといけないので補足しておきますが、当時の練習メニューやウォーミングアップを否定しているわけではありません。ここのコーチが優秀だとか、この国のメニューが良いんだとか、そんな話がしたい訳では無いです。何でそうするのかを私が理解していなかった。何も考えずに取り組んできた結果、今やってることの説明も、臨機応変にアップを組み立てることも出来なかったという話です。

まだまだやれる要素はある
敗退した次の日から、その試合に帯同していたスタッフの色んな先生に話を聞いて回りました。「どうやったら足が速くなりますか?」って、本気で聞きに行きました。先生方は親切に、それぞれが持ってる理論を私に話してくれました。
走りを構成する要素はごまんとあって、まだまだ自分が取り組めてない範囲の方が圧倒的に多いことを知りました。フィジカル、メンタル、技術、戦術、経験…それを構成するためのあらゆるトレーニング、食事、休養…。「なんで知らないことの方がこんなにも多かったのに今まで走れてたんやろう」とびっくりしたのを覚えています。
日本に帰国してから、トレーニングの原理原則から勉強をし始めました。私はそんなことも知らなかったんです。本や雑誌を読み漁って、トレーニングの計画を立てました。日本インカレに向けて5週間という短い期間でしたが、自分で決めて心を注いで練習しました。インカレの400mHは2位でしたが、56秒81のセカンド記録を出すことが出来ました。特別なメニューを新しく取り入れた訳では無く、練習の強弱と試合までのイメージを持ち、納得して取り組めたことが大きかったと思っています。
そして、その5週間は何だか今までにない面白さがありました。明日のトレーニングのために、自然と念入りにセルフケアをしている自分がいました。

目標を与えられ続けるとどうなるか
ここから核心に触れていきたいと思います。私は以前から高校で活躍した選手が「消える」現象について考えてきました。高校生として先輩方の背中を見てきて、進学してからは友達も悩み始め、そして今自分もその渦中にいます。
私の友人にも「消えた」と言われる選手がいます。その友人と話していると「今思えば、今までずっと自分で目標を決めてこなかった」と言っていたんです。私はすごくその言葉が印象に残っていて、ここに集約されてるような気さえしました。
ずっと、先生が作った目標をクリアするために走ってきたのだそうです。そしてそれの怖いところは、それで記録が出てしまう事でした。

直感を捨てない
競技も仕事も、どれだけPDCAサイクルを回せるかだと思います。
常に失敗と成功の繰り返し。これは完全に持論ですが、失敗と成功の前には必ずチャレンジ・挑戦があります。その手前には決断があり、研究や思考と遡り、一番の根元には必ず自分の直感やセンスがあると考えています。
答えのわからないことを決めるのには勇気がいります。だけどそこを他人に委ねてしまうという事は、上記の全てが出来ないことを意味します。
私は失敗しても、自分で決めて挑戦したことそのものに価値があると思っています。

責任と自由
「自分で目標を決めること」は「自己責任」と直結します。
自分で決めたことに責任を持つ。その結末を受け入れる。私もそんな風に生きていこうと決めた時、突然自分が自由になったのを感じました。それまで責任と自由は反対の言葉かと思っていたんですが、責任から逃れることは、自由を手放すことだったんです。
昨年20歳の誕生日を迎えた時に「もう将来の夢が~とか言える歳でもなくなってきたなぁ」と思い、それと同時に「ってことはもう自分で決めた夢に向かってリアルに行動できるってことなんだな」とも思いました。
自分で決めていい。そしてもっと、色んな人を頼って良いんだ。これらの事は、自分の意思を周りに伝えてみて初めてわかったことでした。

最後に
まとめると、自分で目標を決めると楽しいし、結果良くても悪くてもとても自分の為になるという事です。
競技の話は冒頭だけで、あとは曖昧に感じたかもしれません。だけど大事なのはこういう部分だと私は思っています。
ご自身の体験と繋がった方がいらっしゃると嬉しいです。

つい長くなってしまいました。
ここまで読んでくれた皆さんに感謝します。
それでは。

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