短歌を始めて一年目、2019年の自選30首

2019年に詠んだ約150首から、30首を悩みながら自分で選びました。僕は今年から短歌を始めました。ぴかぴかの一年生。

上にあるのが古い歌(はじめたばかり)で、一番下が新しい歌(さいきんの)となっています。どう変化しているのでしょうか。


1~10首

肖像画暖炉にくべて君は去る結い髪の背を追えぬ霜月

二十四時ベンチのとなり柳の木許すみたいに揺れてるかぜに

通学路駆けて駆けて駆けて開けてクーラー麦茶飲み干しゴール

踏み絵ならその場は踏んでまた磨く教科書眺め教室の処世

イカロスのつばさも舞うよ信じればみんなで飛ばそう!(虚ろな目して)

保健室のあの子へ贈る寄せ書きは一人二行の隠蔽工作

ペンギンの泳ぐ姿に惚れたのにいつしか彼女を空に描いた

きみが姫ならぼく王子にならなくちゃそれよりちょっと舞台降りない?

牛丼が早くて安くてうまいのはどこかで誰か泣いているから

すくわれたい夜がそだてたかみさまと君の生身が出会う夕焼け


11~20首

「あ、失敗。」暗い部屋へと浮かび来るあなたの罵声(わたしのREC)

黒服と白シャツ纏うからだ達凸凹隠し一つの車両

すれ違うグレーパーカー面影があの日に繋がりあおるアクエリ

室外機錆びた自転車睦まじく囁き合うの秋の路地裏

あの夏の宿題未だ終わらずに居残りのまま通勤をする

木枯らしにころがってったビニ袋 僕の気持ちも入ってたかも

短歌とは胸に手を当てひとつずつ世界塗り替えていくの呪文

公園の柵乗り越えた隅っこへ実は入れるオープンワールド

何歌い何が歌かはおれが決めるひとりカラオケ独立国家

サウナ室肉体を連れたたましいが皆一様に炎へ向かう


21~30首

四人いて仮に談笑したとして気になるスマホでもみんなそう

呼び捨てにすればいいってもんじゃないなれなれしいとなかよしは別

この国に徴兵制はないけれど運動会と飲み会がある

一人暮らすきみの作ったおはなしの姉の姿はいつも哀しげ

「あの白衣、くるしい人がくるしいと言えない世界の構成員よ」

呆れたよ三つの願いを叶えてもまだ足りないと恨むだなんて

深夜でも誰も見てないところでも伝え続ける「谷」の表札

強力に凝縮された幸福の弾が飛び交い皆が不幸に

脳内に再生された虚像から人差し指が狂い始める

にんげんはどこか足りないパズルピースくぼんでるから誰かが活きる



あとがきや一年の総括など

自分の短歌の良し悪しを自分で判断するのは難しいですね。

直感で選ぶと自分の思い入れで判断してしまいそうになるし、
良いと思える理屈に頼れば自信の無さの反映になったりもしそうで。


僕は今年が短歌を始めて一年目です。右も左もわからない状態からスタートしました。

なぜ短歌を始めたのか、短歌のどういうところが良いと感じているのかなどは、このノートに書いてあります。


2019年は別れがあれば出会いもあり、さらにまた別れもあり。良い事ばかりではなかったけど、内容の濃い年だったと思えます。

ハッピーじゃないエンドでも面白い映画みたいに よい人生を(枡野浩一)

ふと、この短歌を思い出しました。枡野さんの短歌は教科書にも掲載されています。僕も「かんたん短歌の作り方」という非常に面白い入門書から大いに学ばせてもらいました。

僕はハッピーエンドへ向かうような「よい人生」を送ってきていないし、これからもそんな風にはなれなさそうだけど、内容の濃さなら少し自信が持てそうです。勇気をもらえる歌。

逆にハッピーエンドでも中身がスカスカでつまらなかったり、見飽きたような展開ばかりが続く映画もありますよね。

自分はハッピーエンドを迎えずにある日突然死ぬのかもしれない。それでもよい人生(括弧つきの「よい人生」ではなく)だったと思えるように生きたいですね。

「もう無理だ」って何度思ったかわからないけれど、一年の終わりに内容の濃い年だったと思えるなら、それはきっと良い年なのだと思います。


2019年に詠んだ短歌はこのマガジンにまとめてあります。


最後になってしまいましたが、これらの歌の一部は歌会サイトの「うたの日」にも投稿しており、そのうちの二首について勉強になる評をいただいたので、併せて貼っておきます。





ありがとうございました。それでは少し気が早いですが、また2020年もどうかよろしくお願いします。



▼2019年に図書館で借りて読んだ本も振り返りました。(後半はほとんど短歌関連の内容です)


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