高性能&高価格化の罠に全てのITメーカーがはまっていくのか?

日本の家電メーカーが一部の製品を除いて世界的な影響力を失ったと言われてから久しいです。

かつては日本の複数のメーカーが世界を席巻していたということは、今の若い世代の人達にとってはなかなか実感出来ないことだと思います。松下、東芝、日立、SONY、富士通、SHARP、NECなどなど、多くの分野で日本メーカー同士でトップを競い合っていましたが、今は一部の製品で一部のメーカーが存在感を発揮できているくらいです。

もちろん、それら企業に勤めていた人が怠けていたわけではなく、こうなった原因としては、社会や時代の変化もあるでしょうし、日本経済の問題もありますし、イノベーションのジレンマの問題もあります。ただ、よく言われるのが日本の家電メーカーは性能アップにこだわりすぎていて、売れるもの・顧客が求めるものを作ってこなかったから、という理由です。

それが果たして本当に大きな原因だったのか分かりませんが、90年代・00年代における製品や「モノ作り」への過剰なこだわりは、確かにかえって悪い方向に進んでいたのかも知れない、とも思えます。

「良いものを作れば売れる」

という信念のは真理のようでありますが、結局真実ではありませんでした。正確に言うと、「良いもの」の定義が曖昧で、メーカーにとって「良いもの」と消費者にとって「良いもの」がズレていたら売れない、というのが但し書きとして必要でした。

そのメーカーを盲目的に信じて何でも購入する、いわゆる「信者」であれば、メーカーの言う「良いもの」を素直に受け入れたのでしょうけれど、それは結局、先の信念はまさにお題目でしかなかったということになります。

さて、松下や東芝などに代わってITメーカーとして君臨しているのは、AppleやSamsung、HUAWEIといったアメリカ・韓国・中国のメーカーです。アメリカのメーカーは80年代までは日本メーカーにやられっぱなしでしたがインターネットとIT革命によって復活し、韓国は日本を追いつき追い越せを実践して追い抜き、中国は韓国を追いつき追い越せで抜き去ろうとしています。

では、それらの大企業が今後も安泰かといえばそうではないでしょうし、どのメーカーも危機感を持って日々経営・努力していっているでしょうけれど、それは20年前の日本も同じだったでしょう。

ここ数年間、Appleの製品をスマホやタブレットやパソコンやイヤホンや時計として使用してきましたが、性能アップ&値段もアップの一途をたどっています。先日発表された新しいiPhoneSEが久し振りに安さをアピールできるiPhoneとなりましたが、どちらかというとAppleとしては安い製品はあまり売りたくないでしょう。なんせ自社の高価格製品の市場を奪いかねません。それはまさにかつての日本の家電メーカーと同じです。

韓国や中国のメーカーも、最初は安く売って低価格帯でユーザーと利益を捉え、どんどん高性能化と高価格化に進みます。ゴールという名の奈落の底はどのメーカーが走る道にもつながっているのでしょうか。例えば、1億画素のカメラってスマホに必要でしょうか? 

それよりも持ち運ぶ上での軽さや充電のしやすさ、バッテリーの持ちやボタンの押しやすさなどの方が重要なのではないでしょうか?

その辺の需要を捕まえた企業がまた静かに勃興して、またいずれ高価格製品を売り始めて・・・というサイクルは今後も続いていくはずです。

その頃にはIT業界全体が完全にコモディティ化して、また中身のクラウド化が一層進んで、通信端末内部では処理はほぼ行わず、多くの情報処理はクラウドベースとなり、通信端末は文字通り「通信」のみ行う端末になっていそうです。

そうなれば、多くのメーカーは力を失い、通信事業者の方が力関係的に強くなるのかも知れませんね。


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