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危機を乗り切った政府が信頼され続けるとは限らない

この夏と秋には自民党総裁選と衆議院総選挙が行われます。現時点でもどちらを先にするかがまだ決まっていないという状況ですが、9月の国連総会、東京五輪、内閣支持率や世論状況を見ながら決めるのでしょう。

与党や首相周辺筋は東京オリンピック・パラリンピックの成功と、新型コロナワクチン接種の進行を持って、総裁・首相継続の正当性としたいのでしょうけれど、果たして上手く行くでしょうか?

1945年、長く厳しいナチスドイツとの戦いを勝利で終えた直後に行われたイギリスの総選挙は、チャーチル内閣が信任される見込みで解散して実施されました。

しかし、結果は歴史が示すとおり、「これまでの成功」を語ったチャーチルの保守党は惨敗を喫して、「これからの政策」を語った労働党の内閣が成立しました。チャーチル首相は第二次世界大戦でヒトラーに屈服することなく戦い抜いた英雄であったはずですが、その直後の選挙にその人気が反映されなかったのです。

また、90年のアメリカにおいて湾岸戦争を短期間で勝利し、ズルズルと戦いが続いたわけでもないのにブッシュ大統領(父)は民主党のクリントンに選挙で敗れ、大統領を1期しか務められませんでした。

こういうことは遠い異国の昔ばなしということでもありません。

2011年の東日本大震災では、菅内閣の対応への批判が強く起こり、その年のうちに野田首相への交代し、さらに翌年の総選挙では民主党が敗れて自民党・公明党が政権に返り咲きました。震災や原発に関しての対応で時の政府を手厳しく批判していたのは、当時野党だった自民党です。

そして去年から続く新型コロナウイルスCOVID-19によるコロナ禍に対しては、自民党政権は安倍前首相から菅首相へと代替わりしましたが、近年では見ない内閣支持率に低迷しています。

この状態で、自民党がこの秋の総選挙でも勝つと、与党・内閣では思っているでしょうけれど、実際はどうでしょうか?

東京オリンピックを何とか開催し終わらせ、国民を涙なみだナミダの感動の渦に巻き込んで、内閣の人気が爆上がりすると思っているとしたらなかなかのものです。

おそらくは、オリンピックが始まる前と終わった時の支持率は大差ないでしょう。もはや国民はオリンピックへの関心を失いつつあります。成功しようが失敗しようが、多分変わりません。

むしろ、オリンピック関係者や選手などで感染が広まり、重症者や死者が出てしまった場合は、組織委員会に責任が無くとも批判は免れないでしょう。そうなると、国民も「五輪の成功」という感触を持てるわけがありません。

菅内閣の支持率は、五輪後も良くて現状維持、悪くてさらに下がるとしたら、総裁選も総選挙も予断を許さない状況になるはずです。

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