引き分けとマイナスサムゲーム

サッカーに限らず、対戦相手がいるスポーツは基本的にゼロサムゲームなのですが、サッカーの場合は「引き分け」が戦略的にも戦術的にも大きな意味を持っているため、場面によってはゼロサムゲームにならないんですよね。

例えばリーグ戦の上位チームと下位チームでの試合ですと、前者は当然勝利して当然という気持ちで臨んできますし、後者は勝ちたいけど引き分けでも十分という状況もよく起こり得ます。

となると、無理矢理でも攻める上位と、引き分け上等で隙あらば勝ちたい下位との試合になりまして、往々にして引き分けに終わります。そうなると、勝ち点はそれぞれ1ポイントとなっても、上位チームは優勝争いから離れる失態であり、その一方で下位チームは残留争いから抜け出す一歩です。

あるいは、試合中の早い時間帯で退場者を出してしまったチームは劣勢を強いられますので、堅く守って引き分けでも已むなしとなる一方、数的優位に立ったチームは当然勝たねばならぬという展開になります。それでも、数的不利のチームが勝つこともままあるのでサッカーは難しいのですが、試合に臨む両チームがどちらも同じレベルで勝利を目指すとは限らない点で、一般的なゼロサムゲームとは種類を異にしているとも言えそうです。

1試合レベルで見るとそういう違いもありますし、またリーグ戦で言えばシーズンを通しての試合で、
1位 Aクラブ
2位 Bクラブ
3位 Cクラブ
という順位の時、BとCの直接対決があった場合は、Aチームにとっては引き分けが最良の結果であり、逆にBとCにとっては引き分けるとどちらも脱落、という場面も起こり得ます。

リーグ戦だけではなくて、カップ戦でのグループリーグにおいても、1位のみ勝ち抜けというレギュレーションの場合は、引き分けたらその両チームがどちらもマイナスサムゲームみたいなものです。勝ち負けハッキリしている方が勝ち点的に伸びるのは、3ポイント取れる勝利と、1ポイントのみの引き分けというルールによるものですね。

1993年までは勝ち点2で、あのドーハの悲劇の時はその計算でした。今のサッカーファンには想像つかないでしょうけれど、引き分けのデメリットが少なかったのです。

ただ、引き分けが重要な価値を持つという点に関しては、サッカーにおいて今後も変わらないでしょうね。

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