私的安部公房オススメ読書順

高校一年生の時に初めてデンドロカカリヤを読んでから安部公房に傾倒している。安部公房の小説が私の思考の支柱になっていると言っても過言ではない。ついつい口を開けば安部公房の話をしてしまう。しかしなかなかみんな盛り上がって聞いてくれない。私の周りで安部公房を気にいってくれる人は少ない。これがどうも寂しい。安部公房を好いてくれない人の意見に「難しい」というものがある。それで何を読んだのか聞くと「壁」と返答が。当たり前だろう。一番はじめに壁を読んだんじゃあ安部公房を好きになってはくれないさ。

そこで、私による安部公房オススメ読む順を公開しようと思う!これでみんな安部公房の話で盛り上がってくれること間違いなし。

とはいえ完全に私の好みだし昔に読んだものは内容忘れちゃってるからあんまり参考にならないかも。

① 他人の顔
一番は他人の顔が良いんじゃないかと思う。ケロイド痕ができてしまった主人公が人工的に他人の皮膚を作るという中長編小説だ。安部公房の小説は展開がコロコロ変わるものが多い。夢を題材にしていたり前衛文学的だからだろう。だからかえって短編小説は初見の人には読みにくかったりするのだ。私はそうだった。かといって「砂の女」を一番最初に読むのは違う気がする。安部公房の小説の中で一番人気といえる砂の女だが、私が思うにあれは安部公房っぽさがとても薄い。あれはマトモな人間が書いたみたいに分かりやすいんだ。SF的仕掛けも少ない。砂の女だけ読んで安部公房の小説は〜って喋りだす人がいたらちょっと許せないな。そう考えると『他人の顔』は程よい展開のはやさで、安部公房らしいSF的な観点と絡めた思考の垂れ流しパートもあって一番最初に読むのにちょうど良いと思う。

② 鉛の卵、デンドロカカリヤなどのSF短編
やっぱり短編小説はその読みやすさから読書をとっつきやすいものにしてくれる。他人の顔で安部公房の文体になれたらもう少し展開の早い、味の濃いものを楽しんでも良いだろう。特に鉛の卵、デンドロカカリヤは安部公房特有のSF味が強くておすすめ。安部公房においてはSF味が強い短編は他のものより読みやすい気がする。闖入者や公然の秘密はその時勢のことを皮肉っていたり暗喩しているらしいことが書いてあるのだろうけど良く分からなかった。そっちの方が分かりやすそうな人はそっちが良いのかも。
新潮社で出てる短編集なら『R62号の発明・鉛の卵』と『水中都市・デンドロカカリヤ』が好き。

③ 水中都市
こちらも短編なんだけど、これはすごい。読後の清涼感がすごくある。ここで水中都市を読んで一気に安部公房の魅力にグッと引き込まれてほしい。映像が先行しているんだろうな〜という物語の展開も夢から着想を得ている安部公房らしい。かなり好きな短編。だからこそ一番目に読むのも少し勿体無いかなと思い三番目にした。会話文が本当に魅力的。

④箱男
あんまり覚えてない。けど読みやすいしこの辺で読むと安部航の文体のことをより好きになると思う。

⑤ 密会
超ド変態小説。下ネタ(お下劣ではないけど)が苦手な人はやめた方がいいかも。展開の奇怪さ、ある程度のポップさ、キャラクターの魅力など読みやすさは以外とある。この小説の溶骨症の少女のキャラクターがかなり好き。安部公房は自身が医学生だったということもあって病院が舞台の小説が結構多い。これは作中一貫して病院が舞台。終わり方が砂の女に似ている。はちゃめちゃな内容だし下ネタ部分も多いはずだけど読後に切なさを感じる。ルイスキャロルに影響を受けてるんだろうな〜という作品の中で壁より読みやすいと思う。

⑥カンガルー・ノート
これは私が世界で一番好きな小説だ。もうすでに7回も読んでいる。私の棺桶にはカンガルーノートを入れてほしい。本当にすごい小説。安楽死とか尊厳死とか、死についてのことがテーマ。安部公房が自身の死を身近に感じながら書いた最期の長編小説。(たしか最後だった気がする。長編じゃなければあるかもだけど。飛ぶ男もかなり後期だった気がするけどカンガルーノートが最後であってるのかな。)
脛にかいわれ大根が生えた主人公が自走式ベッドに乗って、賽の河原などを旅するというもの。六章の風の長唄からは本当に神がかっている。ただ緑面の詩人の章が分かりにくく躓きがち。個人的にここは物語にあまり関係してないのでとばしてもいいと思う。ここで躓いて読むのをやめてしまうくらいなら。キャラクターも会話文(特に風の長唄あたりの青年との会話文)もいいし、何より最後の終わり方がすごい。初めて読んだ時頭をぶん殴られたような衝撃があった。この小説でピンクフロイドにもハマった。一度展開の突飛さでツイッターで話題になっていたことがあるけどあれは本当にムカついた。だってシリアスな題材が主題なのに、「展開意味わかんなすぎw」みたいにバズってたら腹が立つよ。棺桶に入れたいくらい好きな小説が「バズる」って気味が悪いぜ。勘弁勘弁。
あんまり言うとネタバレになっちゃいそうだからこの辺で。

⑦ 終わりし道の標に
初期の安部公房。主人公がアヘン中毒。詳しくは覚えていないけれど、文章が哲学的で内容も暗い。初期の安部公房は哲学的。難しくて何言ってるか分からない部分が多いけれど文体の陰鬱さ、思考の絡まり方を丸ごと綴った独白みたいな文体は年齢的に刺さる。初期の安部公房を本当に理解するにはものすごい知識の量が必要だろう。私と同じくらいの年齢のはずなのにな〜。


以上私の完全主観的な安部公房おすすめ読書順でした。頭悪い安部公房ミーハーギャルの戯言なので気にしないでください。安部公房の文章の一割も理解できていないだろうし見当違いなことばかり言ったかも。とりあえずおしまい。

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