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週刊オールライター第55号 「普通列車は各駅停車ではない!?」

この記事をご覧に来られた皆さんは「普通列車」と「各駅停車」と聞いた時
「普通列車って各駅停車と同じじゃないの?」
と思うかもしれません。

実はそれ、間違いです。正確には「普通列車≠各駅停車」なのです。
今回は、先日推しの元アイドルと同じラーメン屋にいたのにも関わらず彼女に気が付かなかった私がこの謎について特集します。


1. 「普通列車」と「各駅停車」の違い

この項目では、普通列車と各駅停車の違いについて解説します。

1-1. 「各駅停車」

まずは、説明が簡単な「各駅停車」から見ていきましょう。各駅停車は、文字通り「始発から終点まで全ての駅に停車する」列車のことを指します。どんな理由があってもこの種別を名乗っている以上は通過駅はありません。

「各駅停車」の例。
(JR埼京・川越線)

1-2. 「普通列車」

そして問題の「普通列車」の説明にまいります。普通列車は、基本的には始発から終点までの全ての駅に停車します。しかし、いずれかの条件に当てはまる場合のみ通過駅を持つことが許されます。それは、
通る線路にその列車の停車するホームがない場合
利用者数が極端に少なく、全ての列車を停車させる必要がない場合
このどちらかです。
この配信の冒頭で「普通列車≠各駅停車」という公式が成り立つ理由は、普通列車は「通る線路にその列車の停車するホームがない場合、または利用者数が極端に少なく全ての列車を停車させる必要がない場合に限り通過駅を設けることができる」という例外があるからです。そのため、地方のローカル線で
「普通列車なのに通過駅がある」
という表現がされる場合がありますが、それはこのためです。

「普通」の例。
(JR京都・草津線)

2. 普通列車に通過駅がある例

①JRのローカル線

JRの中でも特に赤字がひどいローカル線の場合は、「普通列車」と案内されながらも通過駅がある場合があります。北海道によく見られます。

②真岡鐵道臨時普通列車

JR水戸線・関東鉄道が乗り入れる下館から、木綿で有名な真岡、焼き物で有名な益子を経て有名サーキット場がある茂木を結ぶ真岡鐵道は、4月から11月にかけてSL列車が運行されていますが、その期間に限ってある臨時普通列車が運転されます。それは下館駅を16時05分に発車する真岡行きです。この列車は、SLとSL列車に使われる客車の回送を兼ねて運転される「日本で唯一の客車による普通列車」なのですが、この列車の停車駅は折本駅と久下田駅だけです。この区間は折本駅と久下田駅以外にも3駅存在するのですが、通過してしまいます。本当に謎ですし、乗ってみたい列車の一つです。

かつて真岡鐵道に在籍していたことがあるC11-325。
現在は東武鉄道で「SL大樹」として走っています。

③東北・高崎・東海道線(大宮〜東京〜横浜、上野東京ライン)

東北・高崎線から東海道線に至る大宮〜東京〜横浜、つまり上野東京ラインは、鉄道に詳しくない方から見れば一見通過駅がないように感じると思います。この区間は「京浜東北線」という路線が並行していることでそう感じるのだと思います。実は全部間違いです。「京浜東北線」という路線は正確には存在せず、ただ単にわかりやすいように「愛称」として名付けられただけで、正式には大宮〜東京が東北本線、東京〜横浜が東海道本線の「電車線(関西のJR京都・神戸線でいうところの京阪神緩行線)」扱いになっていて、国土交通省にも実際にそのように届出がされています。そのため、上野東京ラインの普通列車は「列車線(関西のJR京都・神戸線でいうところの新快速・特急・貨物が走る快速線)」を走行するため、通過駅を持っているとも言えます。

関西でいえば、大宮〜横浜に限り「快速」に種別が変わると言ったほうがいいでしょうかね。

④JR宝塚線の朝ラッシュ時に運転される一部普通列車

ここからは、関西の例を見てみます。まずは朝ラッシュ時のみ見られるレアな列車から。東海道・福知山線の大阪〜篠山口は「JR宝塚線」と呼ばれます。この路線を走る普通列車のうち、発着ホームの関係で朝に運転される一部普通列車は大阪の次の停車駅は尼崎です。本来であれば大阪の次の停車駅は塚口なのですが、この列車は、快速線のホームから発車する関係で塚口駅を通過するのです。

⑤南海本線と南海高野線のなんば〜岸里玉出

普通列車と各駅停車の違いを一番わかりやすく区別している会社は南海でしょう。南海本線と南海高野線(岸里玉出〜極楽橋)は、なんば〜岸里玉出で並走する複々線区間となっていますが、南海本線の各駅に停まる列車は「普通」、南海高野線の各駅に停まる列車は「各駅停車」と案内されます。なんば〜岸里玉出には途中、今宮戎、新今宮、萩ノ茶屋、天下茶屋の4駅がありますが、南海本線の「普通」が停車するのは新今宮、天下茶屋の2駅だけです。その理由は、「南海本線の列車が走る線路上」に今宮戎、萩ノ茶屋の2駅のホームが存在しないからです。

堺東駅で撮影した高野線の「各駅停車」。
なんば駅の南海本線ホームに停車する「普通」。
今宮戎と萩ノ茶屋には停まりません。

⑥阪急宝塚・神戸本線中津駅と京都本線

阪急は(阪急)大阪梅田〜十三で宝塚本線、神戸本線、京都本線の3路線が並走しています。日本で唯一の私鉄3複線区間です。この途中には中津駅がありますが、中津駅のホームがあるのは用地の都合により宝塚本線・神戸本線だけで、京都本線の線路には駅がありません。なお阪急では各駅に停まる列車は「普通」で統一されています。

阪急大阪梅田駅にて。
写真のような京都本線・千里線の「普通」は、中津駅には停まりません。
こちらは神戸本線の「普通」。
宝塚本線・神戸本線の「普通」は、中津駅に停まります。

3. 「各駅停車」なのに・・・これって大丈夫?東急大井町線に存在する「2種類の各駅停車」

ここまで各駅停車と普通列車の違いについて紹介しましたが、実は一見この法則を破っているように思えてしまう路線・区間が存在します。
それは東急田園都市・大井町線の二子玉川〜溝の口です。
この区間は、複々線になっていて、途中には二子新地駅と高津駅があります。また、二子玉川駅は、田園都市線と大井町線の分岐駅になっています。この区間でどういう現象が起きているかというと、
「大井町線の列車に限り、二子新地・高津を通過する各駅停車がある」
という現象です。大井町線のほとんどの各駅停車は、大井町〜溝の口で運行されていますが、その普通列車の一部は二子新地・高津の両駅を通過してしまうのです。鉄道ファンの間では区別のために塗られた種別の色から、二子新地・高津を通過する各駅停車は「緑各停」、逆に停車する各停は「青各停」と呼ばれています。なぜこのようなことが起きているのでしょうか。実はこの複々線区間、ホームのある外側の線路が田園都市線、ホームのない内側の線路が大井町線という
「2路線が並走する区間」
なのです。
先ほど、各駅停車の決まりは
「始発から終点まで全ての駅に停車する」
と述べましたが、大井町線の始発駅は大井町と溝の口で、溝の口の次の駅は二子玉川です。なので、決まりを逸脱していないことがわかると思います。よって、二子新地・高津を通過する列車でも大井町線の線路を走れば各駅停車と案内してOKなのです。実質、二子新地・高津に停車する「青各停」は、二子玉川から田園都市線への「直通運転」という扱いです。

二子新地・高津を「通過」する大井町線「緑各停」。
二子新地・高津に停車する大井町線「青各停」。
正確には、田園都市線への直通運転という扱いです。

むすびにかえて

今回は、「普通」と「各駅停車」の違いについて特集しました。少々ややこしかったかもしれませんが、我々鉄道ファンでさえややこしくなってしまうことがらもあるので、そこはご承知ください。

それではまた次回、25日にお会いしましょう。

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