大人に読んで欲しい小説30選
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆)が話題になっている今、ぜひ大人に読んで欲しい「小説」を18歳の若輩者が選ばせてもらいました。
なんとなくメーターがあると良いかなと思って軽め・普通・重めに分けてみました。
30冊選んだ中から1冊でも読んでもらえると嬉しいです。ぜひGWのお供に!
軽め
ワンダー Wonder
R.J.パラシオ/ほるぷ出版
元々児童向けの小説ですが、大人の方が読んでも得るものがあると思います。子供のいる方は一緒に読んで意見交換をしてみてもいいと思います。テーマは決して軽くはないと思いますが、読みやすく分かりやすいのでするする読めるはずです。
あひる
今村夏子/角川書店
自分の経験と紐づけて考える、というよりは単純に文学の、言葉の、物語の「可笑しさ」を楽しめると思います。疲れていても読めます。意味が分かると怖い話が好きな人におすすめします。
かけら
青山七恵/新潮社
じーーーんと来ます。沁みる読書がしたい方に『かけら』を勧めます。作中にさくらんぼ狩りが出てくるので、旬と言われる6〜7月夏の手前に読むと趣があります。(大好きな作品で、毎年読んでいます)
城の崎にて
(『日曜日/蜻蛉』収録)
志賀直哉/中央公論新社
※『城の崎にて』は短編で様々な作品に収録されています。いくつかある作品の中から志賀直哉初心者におすすめな『日曜日/蜻蛉』を選びました。
教科書で出合った人も多いかもしれません。作中にある「自殺を知らない動物」という言葉が忘れられなく、今でも繰り返し読んでいる作品です。「死にたい」と思うとき、『城の崎にて』を必ず思い出します。
その日のまえに
重松清/文藝春秋
正直「死」が関わる作品って、お涙頂戴展開に必ずなるしずるい。ずるいずるい、と分かっていても泣かされます。つまるところ、「名作」というやつです。
ハッチとマーロウ
青山七恵/小学館
「大人を卒業」というワードに惹かれ読んでみました。自立しようと奮闘する双子がとても可愛く終始笑顔で読んでいました。文体が簡単なので読みやすいです、とくに子供がいる方におすすめします。挿絵が可愛い!
窓ぎわのトットちゃん
黒柳徹子/講談社
黒柳徹子さんの少女時代を描いたとされる本作。読んでいると自然と心が締め付けられるような読書ができます。正直、子供から大人まで全員に読んで欲しいです。
八月の御所グラウンド
万城目学/文藝春秋
一月に直木賞を取ったばかりの本作。今私が一番勧めたい作品です。中編が二作収録されていますが、もう一つの作品は中学生〜高校生に勧めたいです。八月の〜から読んでも問題ないですよ。しっとり温かな気持ちになれます、切ない。
普通
コンビニ人間
村田沙耶香/文藝春秋
仕事をしていると安心しませんか。社会の一員であることが子供からすると羨ましいです。「普通」とは何かを問う本作ですが、物語としても面白いです。純文学初心者でもするする読めるはずです。
ここはとても速い川
井戸川射子/講談社
詩人でもある作者の心地よい文体が魅力です。最初は慣れないかもしれませんが、やみつきになります。私はこのような作品をやみつき文学と呼んでいます。これから注目していきたい作者の一人です。
眠れる美女
川端康成/新潮社
文章がとにかく艶かしいです。「川端康成」と言われると構えてしまうかもしれませんが、気軽に手に取って欲しいです。この一冊で「エロティシズム」「幻想文学」のどちらも楽しめます。
星の子
今村夏子/朝日新聞出版
私はこの作品を「影響力」という点に注目して読みました。親ガモについていく小ガモのように、子がうける親の影響は絶大です。大人のことを「親」という立場でなくとも子供は見ています。自分の行動・言葉遣いなどを鑑みるきっかけになると嬉しいです。
おいしいごはんが食べられますように
高瀬隼子/講談社
職場小説でぱっと思いついたのがこちら。近年食事へのスタンスが議論される中で、食だけでなく仕事、恋愛を絡めた作品です。働く全ての方におすすめです。
皆のあらばしり
乗代雄介/新潮社
ただただ爽やかですっきりする。純文学でありながら、ミステリのようなしかけもあるので純文学が苦手でも読みやすいかも。「頑張ろう」という気持ちを掘り起こしてくれます。
この世の喜びよ
井戸川射子/講談社
視点が二人称(あなた)で進んでいく小説です。いつもと毛色の違うものを欲していたらぜひ。玄人向けな小説ですが、良い小説ですよ。
乳と卵
川上未映子/文藝春秋
新しく芥川賞の選考委員にもなった、川上未映子の芥川賞作品です。小学生の葛藤を描いた作品で、登場する日記の文章の味があって良いです。ラストシーンは脳裏に画が浮かぶような臨場感があります、文章なのに。
おらおらでひとりいぐも
若竹千佐子/河出書房新社
高校生のとき初めて読みましたが、読み終えた瞬間に「これを味わうには年齢が足らない」と感じました。大人へ、私が抱いた感覚は大人になっても続くでしょうか、この作品を味わえるようになったとき、大人になったと言えるのではないでしょうか。ぜひ読んでみてください。
スクラップ・アンド・ビルド
羽田圭介/文藝春秋
自分にとって本作は「新しい視点をくれた」作品です。介護をしている方がこれを読んでどんな感想を持つのか気になります。
沖で待つ
絲山秋子/文藝春秋
貴方にとって異性の唯一無二な存在はいますか。恋愛でない、友情だけで成り立つ存在。そんな存在がいる方、欲しい方におすすめです。
想像ラジオ
いとうせいこう/河出書房新社
東日本大震災を扱っている作品です。ラジオのDJが主人公で、話も基本ラジオを流しているような感覚で進んでいきます。結末に行くにつれて「あったはずの日常」に思いを馳せることになるはずです。
ひとり日和
青山七恵/河出書房新社
子供みたいな大人ってたくさんいますよね。大人みたいな子供も。これをもし人に勧めるなら、そのどちらかに当てはまる人に読んで欲しいです。大人になっても「成長」できます。当たり前かな、それを実感する作品です。
異類婚姻譚
本谷有希子/講談社
夫婦で過ごす時間が増えると、ふと「似てきた」と思うことがありませんか。私は「作画が同じ」という言葉を使うのですが、芸能人でも結婚のニュースが流れると顔が同じに見えることがあるんです。不思議ですよね、男女でパーツも全然違うのに。そんな形式としての「夫婦」をコミカルに描く純文学です。
センセイの鞄
川上弘美/文藝春秋
小説には「恋愛小説」というジャンルがあります。音楽にも「ラブソング」というように、「愛とは何か」の答えを人類は探しています。愛なんてくだらねえ、と思う時もありますが、『センセイの鞄』の純愛さを読むと堪らないです。私の知る中で一番の恋愛小説です。
百年と一日
柴崎友香/筑摩書房
時間の経過を感じる作品です。私たちの一生はせいぜい百年生きることができれば万々歳。その百年を生きてるのは人間だけでなく、生き物や場所や空気や風も同じです。しみじみと時の流れを実感したい方におすすめです。
愛が嫌い
町屋良平/文藝春秋
『愛が嫌い』には中編が三作入っています。その中で『しずけさ』は鬱だったりやる気をなくした人に読んで欲しいです。表題作の『愛が嫌い』は子供が苦手な人におすすめです。
重め
ブラックボックス
砂川文次/講談社
「ちゃんとしよう」そう思っても怒りを抑えられない人の話。滑稽に見えるかもしれない男の顛末を見届けて欲しいです。「日本」らしい作品です。
くるまの娘
宇佐見りん/河出書房新社
全体を通して空気の通り道がないくらい鬱屈とした作品。「生きづらさ」に向き合い続けた小説です。一気に読むと体調を崩しそうです。
ミシンと金魚
永井みみ/集英社
タイトルの「ミシンと金魚」の意味を知ったとき、苦しさだったりやるせなさを感じました。感想が難しい作品の一つです。老婆の一人語りで進む、「語りの小説」です。
同士少女よ、敵を撃て
逢坂冬馬/早川書房
本屋大賞も受賞した本作。戦争がもう身近な話になりました。ニュースで報道される紛争の惨めさ、苦しみから目を逸らさないでください、まずは知ることをしないと変わりません。本も同じで、自分が苦しくなると分かっているジャンルを避けないで欲しいです。
海と毒薬
遠藤周作/新潮社
罪意識について考えてみませんか。『海と毒薬』が巻き起こした事件は一体誰が悪者に見えるでしょうか。議論が白熱しそうなので、読書会の課題本にも良さそうです。そして個人的には物語の構造にも注目して欲しいです。体調の良い時にぜひ。
まとめ
最初はエンタメ、ミステリ、SF、古典、純文学と様々なジャンルから選ぶつもりでした。でも結局私が大人の方に読んでもらいたいと思う作品はほとんど現代純文学でした。起承転結のしっかりしているエンタメやミステリも良いですが、「読み砕く」という印象のある純文学を勧めたくなりました。
純文学は人によって合う・合わないがはっきりするジャンルです。今日選んだ30冊の中でも「つまらん!」と感じる作品があるかもしれません。でもそう結論づけるまでに考えて、考え込んで、作品と向き合って欲しいと思います。その上で合わないと思うのは仕方ないので。ぜひ一人でも多く純文学に興味を持ってくれると冥利に尽きます。
長文になりましたが、ここまで読んでくれてありがとうございます。これからも時々おすすめの本の記事をあげようと思います。
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