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ライター見習い時代、パワハラ講師にどん引き💦「生徒のそこを否定したら潰れるでしょ⁉」

ライターになって今年で11年目になるが、僕にはふたりの先生がいる。

・生きることに希望を見出す重要性を教えてくれた恩師
・他者を否定してばかりいると地獄まっしぐらだと教えてくれた反面教師

清濁併せ吞む形で、おふたりからはたくさん教えていただいた。ちなみにどちらも男性である。

今回書くのはこの世の地獄を教えてくれた反面教師について。

アルバイトをしながら「なんとか書くことで生活できないか?」と生き方を模索していた頃に、こちらの先生の教えを乞うことに。

今でこそ
・クラッシャー上司
・モラルハラスメント
・パワーハラスメント

などの言葉が定着している。
僕がこの先生に師事していた頃は、そういった定義が普及していなかった。しかしこの先生は今、社会問題になっている他者の尊厳を踏みにじる行為を、まるで酸素を吸うかのごとく、日常的にやっている人だった。
(コンプライアンスが叫ばれ、社会がホワイト化していく令和は、こういうハラスメント系の人間の居場所が減りつつある)

反面教師のこちらの先生を、以下パワハラ先生と記そう。

この人ご自身は優秀なライターで本を何冊も上梓されていたが、なにせ癖とこだわりと劣等感が強すぎた。そして他責的に人をマウントし続けた結果、多くの人が心を病むという死屍累々のライタースクールだった。
タワマンの一室という地上から見てかなり高い場所に教室を構えていたが「地獄って、こんな高い場所にあったっけ⁉」と当時、驚いたのを覚えている。

僕の少しあとに入ってきたAさんという女性の受講者がいた。企業に勤めながら、空き時間にライティングを学びたいという方だった。

僕より少し年上だったと記憶しているが、この人はかけがえのない趣味を否定されたことで、どんどん弱っていった。

パワハラ先生は、自分と同じ趣味を持つ者をかわいがり、自分が嫌いな趣味を持つ者を攻撃する。
アメリカの精神科医フランクリン・アーンスト氏が1971年に考案した「OK牧場」のタイプ分けでいうと典型的な「I am OK , You are not OK」の人。「俺だけがよくて、お前らはダメ!」というのがコミュニケーション。ナルシストはこの手のコミュニケーションスタイルの者が実に多い。自己を必要以上に肯定する反面、徹底した他者否定を貫く。

パワハラ先生の人との関係性の作り方は、ブラック企業の社長やクラッシャー上司と共通している。支配や管理を好み従順を求める。こういう人ほど「俺の言うことを聞くやつだけが正しい」みたいな偏った価値観に陥りがちである。

そのため、最初はみんな「ライターになりたい!」と目を輝かせてスクールに入ってくるのだが、パワハラ先生の洗礼を受けた途端、目が死んでいく。みるみる活力が失われていくのだ。実際に心を病んでしまった人も、少なからずおられた。

Aさんは趣味で同人活動をしていたのだが、パワハラ先生はこれが気に食わない。

「そんなくだらん趣味なんか、とっととやめてまえ!」強い口調でそう命じられたAさんの体は強張っていた。ちょうど僕の隣にいた彼女の横顔をちらりと見る。悔しさで唇をかみしめていた。

Aさんからすると趣味に没頭することでエネルギーチャージして、明日への活力を得ていたはず。

しかしパワハラ先生は、主観的な好悪でAさんの生きがいを奪おうとしたのだ。

僕がパワハラ先生に対して常々感じていた疑問がある。それは「なんで、この人は相手が最も大事にしているところを軒並み否定したがるんだろう?」というものだ。

今ならわかる。根幹を否定してショックを与えることで相手を精神的に不安定にする。そしてそのあと自分の価値観を植えつけることでコントロールしたい、という意図があったのだ。彼のやり方は、洗脳の常とう手段である。

さらにいえば、パワハラ先生には拭い去れない劣等感、自己不全感があるので、相手を肯定するのが怖い。無意識レベルで、相手を認めることに抵抗感を覚えるのだろう。強がってはいるものの、実はパワハラに手を染める人間ほど、脆弱であることは間違いない。彼らは内省と自己の成長よりも他責を選んだ悲しい人たちだ。

二ヵ月ほどでライタースクールを去っていったAさん。僕は彼女の文章を読んで「才能のある人だな」と感じていたので「またパワハラ先生の手によって、ひとつの才能が潰されてしまった」と落胆した。

後日談がある。

僕がライターとして活動を始めたあと、Aさんと一度、食事に行く機会があった。再会をはたした瞬間「ああ、いい人生を送っておられる」とわかった。多幸感がこちらまで伝わってきた。
彼女は勤めていた企業を辞めて、ライターとして生活していた。僕は思わず「あのスクールをやめたあと、どうされていたんですか?」と尋ねた。

「あれから私の大事なものを否定しようとする人間とは徹底的に距離を置くって決めたんです。そのあと、ポジティブな人間関係に恵まれて夢を叶えることができました」
晴れ晴れとした顔でそう語るAさん。

「持ち前の才能を開花させられて本当に良かった」とこちらまで嬉しくなった。

才能を活かすも殺すも環境次第

どんな理由があろうが、主観的なジャッジと歪んだナルシシズムによって人の才能を次々に潰す人間が今でも許せない。

人のことを否定したがる人ほど、実は心の底で自分に対してOKを出せていない確率が高い。

そういった人とは揉めずに、物理的にあるいは心理的に距離をとるしかない。表面上は波風を立たせずに、そっと離れるしかないのだ。

そして心の交流ができるポジティブな人間関係を増やしていくことで人生は開ける。

「I am OK, you are OK」の関係性の中にこそ幸せがある。

僕はAさんからそれを教わった。

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