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灰のリサイクル 木質バイオマス-植林Cycle カーボンサイクルテクノロジー(14)

日本の民話にある花咲か爺さんの話をご存知の方もおられるだろう。「枯木に花を咲かせましょう、ここ掘れワンワン」の話である。この話し、科学的に検証してみたが、あながち全くの作り話でもなさそうである。

木質バイオマスを石炭の代わりに燃焼して、熱や電気などのエネルギーを取り出す。二酸化炭素は排出されるが、植林した早生樹が光合成によって再固定する。その他、生命にはカルシウムやマグネシウムなどの灰分が数%含まれていて、それが灰になって残る。産業廃棄物として逆有償で処分するのはいただけない。水と出会うと灰分の一部が電離して水はアルカリ性を示す。これを地球上に広がる酸性土壌の中和に使い、大規模植林を進めるというとんでもない試みを考えた。そもそも焼畑農法というのはこの原理を利用している。ところが、焼畑では土壌の有機炭素も灰にして失うので好ましくない。

灰からアルカリ土類金属が一気に放出されると、土壌水は急速ににアルカリ寄りになり、また電気伝導度も高まって植物が水を吸えなくなるので、好ましくない。そこで徐放化技術に取り組んだ。バイオマス燃焼灰の再資源化技術である。有機物やアミノ酸の中には金属イオンとキレート結合するものがあることを見出した。そこでコーンスティープリカーというトウモロコシ澱粉を採ったあとの黒い液と灰を混ぜて粒状化し、徐放性能を有した酸性土壌改良剤を発明し、肥料登録まで漕ぎ着けた。残念ながら実用化されなかったが、黒い団粒構造は、失われゆく森林土壌を模した人工黒土になる。

ライシメーターという大きな槽に酸性土壌(森林の心土)を入れ、灰の肥料を施し、スギ苗が要求する最適濃度のマグネシウムがチョロチョロ出る様に設計した。結果は、スギは対照区よりも元気良く成長した。花芽分化に要するリン酸などの肥料を出す様に設計すれば、弱った樹に花を咲かせることも夢ではあるまい。

私は木質バイオマスエネルギー発電の原材料は、遠い国から船で運んでくるのは間違っていると思う。何故なら、船の燃料が放出する二酸化炭素がカウントされていないからである。バイオマス電力のFIT(固定価格買取制度)には多額の公的資金が導入されて成立している。原材料輸送にもコストがかかるため、FITが終わればサステイナブルであるはずがなかろう。それよりも灰分を島国日本に運び入れ、産廃として埋め立てに使うのは、日本を塩漬けにしているのと同じだ。河川に流出する浸出水は生態系にも影響するであろう。

地域で伐出され未利用となった端材を地域で熱エネルギー利用するぐらいの規模で良いのでなないだろうか。ローカルで小さな循環サイクルであっても、トリジェネレーションに加えて灰のリサイクルもできるとなれば、サステイナブルになり得ると考える。


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