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変幻自在の洗浄屋さん 二酸化炭素の功罪(9)

そしてもう一つ、二酸化炭素の働きで忘れてはならないことがある。二酸化炭素は変幻自在の洗浄屋なのだ。

次の物質状態図を見て欲しい。ご存知の通り、二酸化炭素は常温大気圧下では気体である。温度を冷やしていくと固体になる。そう「ドライアイス」だ。圧力を上げていくと液化する。炭酸ガスボンベには、液化された二酸化炭素が圧力容器に充填されている。では、温度と圧力を上げていくとどうなるだろうか? 聞きなれないかもしれないが、超臨界流体になる。二酸化炭素は臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38M Paという温和な条件で超臨界状態に変身する。

状態図

炭酸ガスボンベからドライアイスパウダーを噴射する洗浄装置と技術が開発されている。精密部品の洗浄に使われるらしい。洗浄に水を必要とせず、ドライアイスが急激に昇華する力で表面の油汚れなどを吹き飛ばすので、全く廃液や廃棄物が出ない優れものだ。乾燥窒素ガスを高圧で二流体ノズルから同時に噴霧すると、洗浄表面に結露した水滴がつかず、乾燥も不要である。

超臨界CO2は、細かい隙間にでも入り込む気体の性質(拡散性)と、成分を溶かし出す液体の性質(溶解性)を併せ持っている。有機溶媒のように油などを溶かす性質がある反面、有機溶媒で問題になる毒性や引火性がなく、常温大気圧条件で無害な気体に戻るため、廃液処理や乾燥の心配がない。コーヒー豆の脱カフェインやビールのホップの抽出などに使われている。木材など多孔質マテリアルの空隙孔にも速やかに拡散するため、内部の洗浄および乾燥や化学処理に応用することもできる。

このように二酸化炭素の功罪をみてきたが、地球上でもっとドラスティックに二酸化炭素を循環させたいと考えている。

明日からはカーボンサイクルテクノロジーを考えていきたいので、引き続き楽しんで読んでいただきますようお願い申し上げます。






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