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家庭内暴力(DV)を疑われて、警察に事情聴取されたことを書く

説明長いし、誰の得にもならない話で申し訳ないけれども、良いことも嫌なことも書くnoteとしてありのままにを目指している手前、そのまま掲載します。こういうのが苦手な方々もたくさんいらっしゃると思うので、そういう方はパスしていただけるとありがたいです。


2ヶ月ほど前、一階下に60代の女性がお一人で引っ越してきました。昨年6月の洪水事故がうちのフラットと一階下のフラットの両方に影響していたため、一階下もうちと同様、しばらく修理などで空き家になっていましたが、6ヶ月後、新しい隣人がやってきたのです。

12月 引越し屋さんの車

それまで住んでいた隣人とはとても仲良くさせてもらっていたので、彼らが引っ越してしまった後の冬の間、一階下のフラットに誰も住んでいない時期はなんとなく寒いような(多分、本当に誰も住んでいないと暖房なども使われず温度に影響しているような気がする)寂しいような気持ちでいたので、新しい隣人に早速挨拶にいきました。

彼女の名前はDebbie(仮名)。自己紹介してまもなく、Debbieが15年前に交通事故に遭い、障害が残る身体であることがわかりました。彼女の方も私が整形外科医であることを知ると、深い事情まで色々と長々と話して聞かせてくれました。夫も、
「はは〜ん、Debbieは君のこと、すごく気に入ったみたいだね」
とひやかしていたほどです。

それからしばらくして、Debbieが玄関の前で立ち尽くしているのを目撃して、どうしたのかと尋ねると、湯たんぽで背中を火傷してしまったというのです。交通事故で頚椎部分損傷があり、体は部分的に感覚障害があり、そのため、気をつけてはいたのだけれども、油断して寝入ってしまい、低温やけどになってしまったというのです。私は職業柄、すぐさま、彼女の部屋に入り、火傷の部分を見てあげました。

大きさは大したことがなかったのですが、低温やけどがかなり深部まで達しているようでした。Debbieはすぐかかりつけ医に連絡を入れたのですが、NHSのよくあるあるで、すぐには診察してもらう事ができず、諸事情で結局、それからも定期的にドレッシング被覆材を交換する手伝いをして欲しいと言われ断る事ができませんでした。必要時にメッセージで呼ばれ、週に1〜2回彼女の部屋に行き、火傷の状態を見てあげる日々が続きました。

背中の場所がちょうど下着に隠れる部分だったので、この火傷を診察するには彼女は下着をとり、手ブラの状態になります。この状況、ちょっと微妙だなと心配でした。いくら隣人とはいえ、まだ会って1ヶ月未満のあまり知らない間柄。いくらその隣人がドクターであるとはいえ、いきなり上半身裸を見せるという状態には誰でも抵抗があるはずです。信頼してくれているのだなと思わずにはいられませんでした。

彼女の背中の火傷の状態の推移(生々しいのでぼかしました)

私、昔、まだ駆け出しのドクターだった時、勤務先の看護婦さんの家に呼ばれ、その時にいきなり彼女に迫られキモヲ潰したたという苦い経験があり(そうです、レズビアンだったという事ですね)その時の事がちらっと頭によぎります。気をつけないと . . . 。彼女の様子にチラリとでもレズビアンのお誘いがあるのではないかと、仕草や行動、言動に最大限の注意を払っていましたが、そのようなそぶりはありませんでした。

そして、私のせいで、感染してしまったとか、よくならないとか後でいちゃもんをつけられてしまうのがちょっと心配だったので、必ず手洗いをし、写真を撮り、行った日にちと時間を記録しておきました。

5〜10分世間話をし、いつも帰りには優しくありがとうと言ってくれ、時々ふわりと上品にハグしてくれるような人でしたが、Debbieの香水の移り香が自分の洋服につき、自宅に戻ってきても、あれ?彼女がいる?と錯覚するような事がよくありました。その時、その香りを快と思うか不快と思うかと聞かれればどちらかというと、不快の方だったのです。今は亡き義母が自分が愛用していたシルクのスカーフをくれた時、義母の香水の香りがしたのですが、思い切り吸い込んでもほんわか、こんな風な大人女性になりたいとさえ思ったものでしたから、香水そのものが嫌というわけではなく、その時からガットフィーリング(お腹が教えてくれる直感)がDebbieに対して、要注意信号を送っていたのだと思います。

2週間前、Debbieからランチのお誘いがきました。

ランチのお誘い

英語ではYouはあなた・あなた達の両方が含まれることはご存知だと思いますが、その混乱を避けるため、普通はYou twoとかYou guysとか複数を指す場合はそのように言う事が多いので、この文面からだと、私のみをランチに誘っていて、夫は含めていないようなニュアンスです。

せっかくの休日に一人でDebbieとランチ、あまり行きたいとは思えなかったので、夫に文面を相談し、やんわりと断りました。日本語で言う「ありがとう、でもまた今度ね〜」の感じです。

それから約1週間後、職場の病院で、外来診察中。またDebbieから携帯にメッセージが届いたのです。

スクリーンショットでは全文載せきれないほどの長いメッセージ(名前のところはぼかした)

あなたのことをとても心配しています。昨夜11時頃、あなたのフラットから走る音としか言いようのない音が聞こえました。このようなことは以前にも何度かあったので気になっていました。

数日前の午前2時ごろ、あなたが「ヘルプ!ヘルプ!なぜこんなことをするの?」と叫んでいるのを聞きました。それから沈黙。何が起こったのでしょうか?なぜ夜中にフラットを走り回っているのですか?

昨夜あなたが私の火傷の処置をしに来たときに、あなたの夫ががあなたに怒りをぶつけている事情を私に話してくれたので、私はあなたに連絡先を送りましたが見ましたか? 医療従事者で家庭内暴力を受けている女性はあ​​なただけではありません。女性医師や外科医にとって、自分が助けを必要としていると気づくのは非常に難しいことだとは思いますが、気づいてください。私に打ち明けていただいてもいいのです。あなたは今の状況が正しくないことを認め始めていると思います。

私もあなたの夫に関して懸念を持っています。私は日曜日の夕方に外で彼に会いました。彼は私がどこにいたのかと問い詰めました。私は質問を無視して話題を変えました。彼はかなり攻撃的になり、私はそれをとても恐ろしく感じました。

警察に行きたいならサポートしますよ。私はあなたのことを本当に心配しているのです。このメッセージにテキストで返信するか、お電話ください。私はできる限りあらゆる方法であなたを助けるためにここにいます。Debbieより

Debbieからのメッセージの訳

これにはびっくりして、すぐさま否定のメッセージを送信。もし、走り回っている音が聞こえたのなら、それはごめんなさい、でも、心配するようなDVのようなことは起きていないから大丈夫。

また、外来診察を終えてのお昼時間に、夫にも電話をし、事情を話しました(テキスト転送よりも、電話をした方がいいと判断)。夫もとても驚いていましたが、隣に住む仲良くしているご夫婦が、毎週日曜日カソリックの教会にDebbieと一緒に参加しているから後で聞いてみると言って電話を切りました。

夫によると、隣のご夫婦が最近Debbieをお家に招いて、夕ご飯を一緒に食べたとのこと、その時、最初からDebbieの身の上話が始まり、いきなり、その時の夫にレイプをされた過去から話題が始まったのだそうです。それにはお隣のご夫婦もかなり驚いたのは驚いたそうですが、同じカソリック教会の仲間、助け合うのがデフォルトですから、愚痴を聞き、苦労話をシェアしたのだそうです。ここで、Debbieが彼女自身がDVの被害者であったという事が初めてわかりました。

翌日、仕事中に夫からメッセージ。警察がDebbieのところに来ているんだが . . . と。そして、私たちの上の階も訪ねている。

Google Doorbell Nest に写っているDebbie (左)と警察官二人(右)
どちらも同じ日に上の階を尋ねていた

最近、google doorbell (Nest) というモーションカメラを取り付けたばかりで、誰かが尋ねてくると自動でビデオが作動し→iPhoneのアプリで見ることができるようにしていたので、一階上のフラットに警察が来ていることがわかりました。(そしてDebbieも映っていましたが、彼女がなぜ、何の目的で上の階の住人を訪ねたのかはわかりません)。

その日の夜にどうして、警察がDebbieのところと、上の階に来たのだろう、Debbieのあの昨日のメッセージに関係があるに違いないと思って悶々としてたら、家でチェックした職場用メールアドレスに、整形外科の秘書さんからメッセージが来ていて、" 警察から連絡があったので、至急警察に折り返し連絡してください" と書いてありました。手術室にいる私のところまでは電話を転送しなかったのでしょう。ああ、やっぱりそうか。これはDebbieのあの間違ったDV通報に関係していたのだな、と。

最終的に、警察官に面と向かって夫の無実を晴らすまでの間、Debbieが背中の火傷のことで私を訴えていたらどうしようとか、他にもDebbieが何かの作り話をしているかもしれないと思うとだいぶ辛かったです。もし、警察がDebbieのいうことの方に重きを置き、私(と、夫)のことを信じてくれなかったら夫はどうなるのだろうか。

取り調べは最初は私一人だけの限定でしたが、その後、夫の同席を許可してほしいとお願いし、最終的には二人で、事情を説明してわかってもらいました。

ただ、その数日後に、別のご近所の知り合いから、Debbieが ”話したい事がある、警察に通報した件で ”、と今日やってきたんだけども、と電話があり、まだことが終わっていないこと、まだDebbieが作り事を周りに拡散しているということに愕然としました。結局、同じ警察官に連絡を入れ、もう一度Debbieに話をするようにとお願いするなどの先週でした。仕事をしながら、夫を心配しながら、自分たちの今後を考えながら、気が重い1週間でした。



警察によると、スコットランド警察は家庭内暴力 (Domestic Violence =DV) 対策に非常に力を入れており、通報があった場合にはすぐ駆けつける仕組みになっているということでした。確かに、DVという状態が大問題になり、世間に認知されるようになったのは、日本では、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」ができた2001年ごろからだったようです。日本でも相談件数は倍々に増え、2021年には警察への相談が83,042件、配偶者暴力相談支援センター182,188件というものすごい数ですので、警察も大変だと頭を抱えているに違いありません。定義そのものも、身体的暴力ではなく、心理的虐待(精神的暴力)の場合はもっと難しいのではないかと思います。

私の夫は優しい男のカテゴリーには入らない強者です。むしろ、厳しい男で完璧主義者。人によってはモラハラ男と言いたくなるのではないかと思います。それでもそれが夫で、それが彼のいいところでもあり、悪いとこでもあるのです。この世に完璧な人間などいないのです。その男と25年間も一緒にいる私を差し置いて(私自身もそれを否定しているのに)、会って2ヶ月未満、話したのは数回の立場でその男をDV男と判断するDebbieという新しい隣人に会って、どうしてこんなにも「許容できない」社会になってしまったんだろうかとゾッとします。

明らかに「悪いこと、危険なこと」と定義できる極端な例を除いて、安全ではないけど、悪・危険とは言い切れないというグレーゾーンをどう判断して生きていくか、という匙加減。極端な例を除いて、あとは判断する力がいるという意味ですが、世の中のこの判断力が鈍ってきているのではないか。

普通はグレーゾーンが一番大きい状態


安全重視のスローガンに影響され、今まではグレーゾーンだったこと、「時と場合と人による」というような事柄が、短い間にあっと言う間にすぐさま危険とみなされてしまう範囲が広がっているような気がするのです。

許容できない範囲が広がっている状態


そうは言っても、今現在、Debbieと鉢合わせをして、普通に会話できる気がしません。私の許容範囲を彼女は超えていると思えてならないのです。Debbieに好意を持って接し、助けてあげたいと思っていたので、その気持ちを踏み躙られたような気がして、私の中では全く許せないと思っている状態なのです。昨日も玄関から出てきた彼女の影を見て、大急ぎで避けました。

いつか、ごめんなさいと言われたら、いや、言われなくても、ちゃんと許してあげられるようになりたいと思っていますが . . .  きっと彼女は被害者なのだから。ただ、許せたとしても、もう2度と気持ちは好意に傾くことはないでしょうが、それは仕方がないでしょう。

今は、自分の心が静まるまで . . . ゆっくりと時を待ちます。


(もしくは別の家に、引っ越すかなあ . . . 。)


いつもありがとうございます。このnoteまだまだ続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。