その生命力に感激した日

数年前にレモンバームというハーブ、一株だけ育ていたものを枝分けしてみようと思い、その先端の双葉と芽が出ている部分を切り、駐車場の野原の土に差してみた。

数日もしないうちに元気がなくなり、芽が成長することもなく枯れ朽ちてしまった。

その翌年か翌々年、その場所に小さな小さなレモンバームの葉っぱが顔を出した。背は低く弱々しかった。

それからは毎年そんな調子で葉を付けていたレモンバームだった。小さな葉っぱを触っては手を鼻に持ってきて香りを確かめたが、レモンの爽やかな香りはほとんどしなかった。

毎年手で触りながら香りを確かめる。がっかりしながらも「元気に育つんだよ」と願いながら葉を触っていた。

それがこの春、例年のそれとはまったく別の姿を見せてくれた。周りの雑草と同じ勢いで、たくさんの濃い緑の葉っぱを付け高く伸びていた。

香りも例年よりも濃く、いきいきとしている。

あの時の、朽ち果てていったものがこんな立派になるとは思いもよらず、ただただ感動するばかり。

あの時、彼らは土の上に葉を伸ばすことは今の自分には無理だと判断したのか、早々に枯れることを選んだ。その代わり、土の中に根をしっかり張ることに数年を費やすことを決め、コツコツと今できることをやっていたのか。

そう考えただけで尊敬の気持ちが沸々と心に広がってくる。 まるで自分に何かを教えてくれているような、そんな気にさえなった。

置かれた場所で咲きなさい、という言葉があるように、今できることに集中する大切さ。目に見えることが、最初は小さなものであっても、やがて大きな力を生み出せるものになることを。

心に強く感じた日でありました。

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