【アメリカ税法】現物出資時の損益認識の日米比較

アメリカの連邦税法上の法人と組合の取り扱いについては、以下の記事で記載しましたが、現物出資において、日本と異なる点を簡単に帰結だけ論じておこうと思います。(理論的な考察はここでは措いておきます。)

法人への現物出資

・アメリカでの取扱い

アメリカでの取り扱いについては、上記記事で詳述しましたので、簡単に触れるに留めますが、法人への現物出資には、IRC 351が適用され、単純化して言えば、“control”(80%)が出資後に及んでいる場合には、損益を認識しないという立場を採っていまます。

・日本での取扱い

日本では、個人と法人で扱いが異なり、個人の場合は、FMVにて損益認識が行われます。他方で、法人の場合には、適格現物出資と非適格現物出資で分けられており、適格の要件として、例えば、100%グループ内であれば、完全支配関係の継続が見込まれていること、50%超の支配関係の場合には、①支配関係の継続の見込み、②主要な資産・負債の移転、③従業者のおおむね8割以上の引継ぎ見込み、④主要な事業の継続の見込みといった要件が課されています。これらの要件を満たせば、簿価による譲渡がなされたとされることになります。他方で、非適格現物出資の場合には、損益の認識が行われます。

なお、日本では株式以外の資産が交付されないことが適用の要件とされていますが、アメリカでは上記記事で記載したとおり、株式以外の資産(boot)が交付された場合には、bootの限りで利得を認識するとしている点も異なります(IRC 351(b))。

組合への現物出資

・アメリカでの取扱い

組合への現物出資の場合には、法人への現物出資で求められたcontrolの保持といった適格要件を課さずに、一般的に損益不認識としており、組合持分と引き換えに現物資産を拠出した場合、組合員において、損益を認識することはありません(IRC 721)。

この点、含み損益が組合が現物出資された資産を売却した等によって実現した場合に、出資時にすでに生じていた損益(当時のFMVとBasisの差分)とそれ以外の損益(当時のFMVと売却価格との差分)を区別して分配することにしており(IRC 704(c)(1))、不正にこの制度を利用することを回避できるようにしています。

・日本での取扱い

日本での組合への現物出資の取扱いについてみると、出資時にキャピタル・ゲインの実現があったと考えられている点には争いはなく、あとは、全部譲渡説と一部譲渡説(自分の持分に対応する部分以外を譲渡したと考える考え方)の対立があり、国税庁は一部譲渡説の立場に立っているようです。

組合への現物出資について、アメリカでは、法人への現物出資以上に広く損益繰延べができるとされているのに比して、日本では、法人への現物出資とは異なり、損益繰延べができないとされている、という点に面白さがあります。

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