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新緑を愛でる

5月、この季節になると
ピアニスト村松健さんの
アルバム『緑の想い』を思い出す

1985年の音楽シーンでは、
ニューエイジ、フュージョンという
新しいジャンルが登場し、
ジョージ・ウィンストンなんかも
よく聴いていた

コロナ禍による緊急事態宣言が
解除されたものの
県外への遠出は禁じられ
どこへ行こうかなと愛車に乗り込み
とりあえず南に向かってみた

いつものドライブコースから
わざと離れた道を選んでいくと
昔よく通ったカフェが頭に浮かび
旧街道を走ってみたくなった

バラの植え込みが人気の
そのカフェはコロナ禍の影響か
やっぱり閉まっていた
気を取り直して旧街道に戻ってみる
今はほとんどの人がバイパスを行き
旧街道は走る車もない
サンルーフから差しこむ散光も独り占め
ウィンドウのガラスに映る木々は
若葉、青葉がゆれ
生命力にあふれかえっている

ふとこの先に
山歩きのできる公園があったはずと、
街道を外れる
公園の駐車場には先客が2台
さっき買った十六茶と文庫本をもって
さくら山を目指して歩き出す

こんな事態でなければ
賑やかだっただろうバーベキュー場をぬけ、
雑木林の遊歩道を登り始める
新緑の向こうにオレンジ色がゆれている
可憐なヤマツツジが迎えてくれる
緑の木陰をわたる風は
汗ばむ腕に心地がいい

しばらく登ると
植林されたサクラの林が拡がる
今年はお花見もされずにいただろうに
こうして新緑を楽しませてくれる
5月の風と光に照らされ
キラキラとあいさつをしてくれている

山頂までくると
芝生におおわれた大きな広場
大の字になって
真っ青な空をしばらく眺める
ほんの少し草の匂いがする
そして大きなアリに邪魔をされる

日差しをさける東屋へ
十六茶を置いて、
読みかけの頁を開く

ときどき目をあげると
サクラ並木に
2羽のシジュウカラが飛び交っている
一匹はさかんに羽根をふるわせ、
もう一匹はその周りを
遠巻きに渡り歩いている
恋の季節なのだろうか
人の気も知らずに

コロナウィルスなんかが拡がらなければ
もっと楽しい気持ちで
空の青さも、綠の香りも
もっともっと 
この胸一杯に吸い込んでいられたのだろうな

そうだ、車に戻ったら
山下達郎さんの『For You』を
ガンガンに鳴らして
でかい声で歌おう