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【DAY 24】映画館で観たかった映画 「ミッドサマー」

DAY 24
a film you wish you saw in theatres.
映画館で観たかった映画

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「ミッドサマー」(2019)
アリ・アスター監督
フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィル・ポールター、ウィリアム・ジャクソン・ハーバー、ヴィルヘルム・ブロングレン

精神疾患を抱える女子大生のダニー(フローレンス・ピュー)は、長く付き合った恋人のクリスチャン(ジャック・レイナー)だけが心の支えであったが、彼としては、それを重荷に感じていた。しかしある日、彼女よりも重症だった妹が、両親を巻き込んで心中するという事件が起きる。それからというもの彼女は、泣き叫びたいときにはトイレに駆け込み、でも声は出さずにやり過ごす日々。クリスチャンも、そんな状態の彼女を無下にはできず、ほんとうは男友達だけで行くはずだった旅行に、一緒に連れて行くことにする。スウェーデンの田舎で行われる夏至祭に、そのコミューン出身の留学生ペレ(ヴィルヘルム・ブロングレン)に招待されてのことだった。

ストックホルムから車で数時間、そのホルガと呼ばれる村は、森に囲まれた草原にあった。刺繍の入った上下とも白い服を着た村人たちが、にこやかに歓迎をしてくれた。そして夏至祭が始まるが、今年は90年に一度の大切な儀式だということが判明し、彼らも実際に参加することにする。

草原に設置したテーブルにて、なにやら食事が始まった。上座に座る老人2人が、何か思い詰めたような表情で座っていることに、徐々に違和感を感じ始めるダニー。食事のあと、その2人が切り立った崖の上に姿を現し、村人とダニーらが下から見守る。すると、おもむろに老婆がそこから飛び降り、頭から地面に追突して即死する。パニックになる彼らをよそに、今度は老人が同じように飛び降りたが、足を骨折して瀕死状態に。しかし、決まった手順のように、村人が数名槌を持って現れ、頭を叩きつぶす。

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いまならまだやってる映画館もあるんだけれど、家で観た。

「起こりそうなことが起こる」ホラー映画。観客が嫌な予感を感じた場合、それは全て的中する。「この人死ぬんだろうな」という人は死ぬし、「そんなことしたら村人にやられちゃうよ」のあとには、ほんとうに村人にやられちゃう。ホラーやスリラーの醍醐味である、突拍子もなくて意表をついた表現があんまりない。
ヴァージン・スーサイズ」(1999)のようなというか、パステルカラーの空と芝生と花たちに囲まれた「ガーリー」な世界観の中、けっこうな玄人向けのスプラッタ表現やボカシだらけの性行シーンを入れてしまう。
なにかがずれてるのだ。でも、それは新しいし、面白い。

ヘレディタリー/継承」(2018)のときにも思ったが、監督のアリ・アスターは、それを、戦略的に、理性的にやっている、間違いない。「たまたまできちゃった」んじゃない。

また、フローレンス・ピューの存在感が素晴らしい。絶妙にださい体型と、役柄ではあるが、不感症な表情。精神病のキャラクターって、普通はエキセントリックに寄ってしまうところ、ナチュラルに無気力な彼女に、なんだか好感を持てる。だから、どれだけ不快な映像を繰り出しても、彼女が出てくるとほっとしてしまうところがあり、それがラストのカタルシスへ通じることになる。この人じゃなければ、リピーターができるような映画にはならなかったはずだ。

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本格的な映画ファンに怒られてしまう気がするけれど、僕は、映画館で観るのか、自宅で観るのか、ということには、そこまではこだわりがない。映画を映画館で観るメリットってなんだろう?

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「映画は大画面で観ないと意味がないよ。監督はすべての細部にこだわって画づくりをしてるんだから。」と言われそうだ。
でも、小さなものを近くから観れば、大きなものを遠くから観るのと一緒ですよね。最近のシネコンには、横幅20mを超えるような超巨大スクリーンがあるけど、後ろブロックの前の方、だいたい10列目くらいで観る人が多い。スクリーンから20mくらいは離れてるのかな。でもそれだと、理屈上は、約15cmの幅のiPhoneXSを寝ころびながら15cmの距離で見るのと、視野のフレームに入るサイズは一緒だ。

ただ、小さいものを至近距離で観ると、解像度が問題になってくる。VHSの頃は確かに粗く、「ここに映ってるこれ、なんだろう」というストレスがあった。DVDでずいぶん改善したけれど、まだ違和感は残っていて、とくに「字幕」がギザギザするのが気になった。しかし、blu-rayやデータ配信ではその課題もすっかり解決され、もうこれでほぼ何の問題もないんじゃないかなあ。むしろ、4K、8Kの解像度は「果たしてほんとうに必要なのか」という領域に入り始めている気がする。デジタルに舵をきった以上、映画はドットで表すしかなくて、その粒をいくら細かくしたところで、無限の実物には叶わない。人間の視力の限界のあたりで、折り合いをつければいいんじゃないかな。

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「いやいや、でもさ、不特定多数で観るっていうライブ感がいいんじゃん。」
僕にとって、映画はあくまでも個人的なものであり、その受容の仕方、どんな感想を持つのか、どんな考察をするのかは、人それぞれだと思っている。観客が100人いれば、笑いどころも泣きどころも100通りある。それを同じ空間で共有してしまうと、他人の価値観が自分に侵食してきそうで、なんだか気持ち悪いのですよね。なので、「応援上映」みたいなものもあまり興味が持てない。演劇とか音楽コンサートにおいては観客の反応が作品に影響を与えるというのは分かるけれども、映画はそうではない。

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「1秒でも早く観たいから映画館に行くんだよ。ソフトになるのを待ってられない。」
これは、一番理解できる理由だ。僕が映画館に行く理由は、ほぼそれにつきる。ただ、ここ数年、東京で土日休み、という働き方になってしまった。土日に映画館に行くと、だいたい「妖怪ウォッチ」や「しまじろう」が目当ての小学生たちで混み合っているのが嫌で、最近ではソフトになるまで我慢するようになってきてしまった。平日が休みだった頃なら、朝一本目に行くと館内はがらがらで、ビール飲みながら悠々と鑑賞できた。

だから、1秒でも早く観たかった「ジョーカー」(2019)も「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019)も「ジョン・ウィック:パラベラム」(2019)も全てU-NEXT配信まで待つことになった。そして、この「ミッドサマー」(2019)も配信まで我慢した映画だったのだけど、ようやく今週観れた。
どうしても我慢ができず、映画館に行ったのは、「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」(2019)「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019)くらいだった。

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