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【DAY 15】幸せな気分になる映画 「ピッチ・パーフェクト」

DAY 15
a film that makes you feel happy.
幸せな気分になる映画

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「ピッチ・パーフェクト」(2012)
ジェイソン・ムーア監督
アナ・ケンドリック、アンナ・キャンプ、ブリタニー・スノウ、レベル・ウィルソン

ベッカ(アナ・ケンドリック)は大学の新入生。夢は音楽プロデューサーで、音楽制作をする毎日。ある日、シャワールームで無意識に歌を口ずさんでいたところ、クロエ(ブリタニー・スノウ)に声をかけられる。「あなた超歌えるじゃない。オーディションに来ない?」彼女は「ベラーズ」という、伝統のある女声アカペラグループに所属しているが、先輩が全員卒業してオープリー(アンナ・キャンプ)と2人だけになってしまい、存続は新入生が入るかどうかにかかっていたのだ。
ベッカはオーディションに参加し、そのまま入部することになった。新入生は、ふとっちょエイミー(レベル・ウィルソン)、レズビアンのシンシア(エスター・ディーン)、ビッチのステイシー(アレクシス・ナップ)、小声のリリー(ハナ・メイ・リー)など個性豊かな面々で、なかなかチームがまとまらない。
オーブリーは、ベラーズの「セクシーな衣装に上品なダンスで懐メロを歌う」という慣習を重じて、新しいアイデアを聞き入れようとしない。そのスタイルはもう飽きられていると感じたベッカは反発。そして予選大会でアドリブを入れたことを非難され、一度はクラブを離れる・・。

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セックスだとかゲロだとか、下品でブラックなギャグの応酬の、典型的なアメリカ式ティーン向けコメディで、現地では大ヒットしたものの、日本では当初は劇場公開されなかったようだ。その後「ピッチ・パーフェクト2」(2015)の制作に合わせてソフト化されたところ、日本でも思いのほか人気となった。

僕としては、「マイレージ・マイライフ」(2012)のころからアナ・ケンドリックはあんまりタイプじゃないし、「テッド」(2012)のようなアメリカっぽい大味の下ネタはツボに入らないので、そこまで期待しないで手に取ったが、とんでもない、「天使にラブ・ソングを...」(1992)の正統な系譜を辿っている作品だった。

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落ちこぼれやマイノリティが集まった、全く勝ち目のないチームが、外部からの嘲笑や圧力に耐えながらも、次第に成長し団結し、最終的に素晴らしいステージを作り上げる。この構成の映画は、一つのジャンルとして確立している。

ぱっと思いついたのは、「フル・モンティ」(1997)「ドラムライン」(2002)「スクール・オブ・ロック」(2003)「オーケストラ!」(2009)など。ドラマだけど「glee」(2009)もそうだ。他にも該当するものは山ほどあるはず。
邦画でも「スウィングガールズ」(2004)「フラガール」(2006)「うた魂♪」(2008)「チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜」(2017)など、名作が多い。

ラストには必ずステージのシーンが登場する。映画自体が言ってみればステージ上のパフォーマンスなのに、さらにその中にステージがあるという「入れ子」になっているわけだ。そして、もちろん「観客役の登場人物」がいる。「実際の観客」は、「観客役の登場人物」たちが主人公のパフォーマンスに感動して喝采する様子を観る。これは、「実際の観客」を手っ取り早く感情的にさせる仕組みだと言える。

ちょっと難しいのが、これは「ミュージカル」では実現しにくいということだ。普段の会話や感情の吐露を演奏やダンスに置き換えているだけでは、この「天ラブ系」(と呼ぼうか)の効果を得ることができない。だから、線引きが難しいところではあるけど、「ハイスクールミュージカル」(2006)や「グレイテスト・ショーマン」(2018)は、構造は似ているものの、どちらかというと「ミュージカル」だ。また、「リトル・ダンサー」(2000)や「8 Mile」(2002)は、「ステージ」は出てくるけれど、そこにはもう一つ必須な要素である「チームの団結」がなくて、あくまでも個人の成長のみがキーとなってしまう。

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その点、「ピッチ・パーフェクト」は、正統派の「天ラブ系」である。ラストのステージで彼女らが歌って踊ると、どうしても感涙にむせぶ。よりによって、ジェシー・Jの「プライス・タグ」やピットブルの「ギブ・ミー・エブリシング」みたいな、「どぎつい」のを歌ってるのに。
べつに、ストーリー自体は月並みな成長譚なのである。簡単に要約してしまうと、ベッカは「ブレックファスト・クラブ」(1985)を観て「ひとりよがり」をやめる。その姿を見て、オーブリーも伝統から脱却する、ただそれだけ。だけど、ステージシーンがあることで、感動のレベルは全くと言っていいほど変わってくる。

それまでずっと毒舌だったジョン・マイケル・ヒギンズエリザベス・バンクス演じるコメンテーター2人が、ラストのベラーズのステージでノリノリになって、ジョンの足をギター代わりにエリザベスがかき鳴らす。これがわかりやすい「観客役の登場人物」の効用だ。

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その後の「ピッチ・パーフェクト2」では、エミリー(ヘンリー・スタインフェルド)という新メンバーを加え、舞台が大きくなり敵が強くなるが、やってることはつまりは一緒。この仕組みのもうひとつの利点はそもそもがそういった単純な構造だから、「なんどでも同じことができる」ということだ。しかし「ピッチ・パーフェクト ラストステージ」(2017)は、アプローチが異なるため、泣かない。

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