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本の目録をとるという仕事

北海道大学附属図書館(図書受入・目録担当) 森菜摘

図書館の本を読みたいとき、借りたいとき、皆さんはどのように探しますか?
 
書架を眺めて、ふと気になった本を手に取ることもあるでしょうし、ホームページ上の蔵書目録システムで事前に目当ての本を調べておくこともあると思います。
 
 
図書館の本の背表紙には、請求記号と呼ばれる数字やアルファベットが書かれたラベルが貼ってあります。本は、この請求記号順に並んでいます。
 
北大図書館の請求記号は3段に分かれていますが、一番上の段の数字は分類番号と呼ばれるものです。
 
分類番号は本の主題に応じて付与され、北大ではデューイ十進分類法を使用しています(函館の水産学部図書館を除く)。
 
読みたい本の書誌情報を蔵書目録システムで調べ、図書館に行って、配架場所や請求記号等を目印にして探し、手に取って貸出手続きをする。
 
この「蔵書目録システムで調べられるように、本の書誌を登録する」のも、「分類法にしたがって請求記号を決定する」のも、図書館職員の手作業で行われています。

北海道大学附属図書館では、この作業を図書受入・目録担当という部署の職員が行っています。

本に貼られている請求記号のラベル

私は2022年4月に北大図書館に新規職員として採用され、この図書受入・目録担当へ配属されました。ここでは、図書の受入(発注・支払い等)から目録といった一連の業務を、所属する十数人の職員で分担して行っています。
 
私は、現在は受入の仕事をしていますが、最初の3ヶ月間は目録の仕事をしていました。
 
私はここで、「本の目録をとる」ということが、いかにやりがいがあって楽しいものかということを知りました。
 
 
目録作業では、タイトルや著者、刊行年、出版社(出版者)だけではなく、その出版社の所在地、ページ数、本の大きさが何センチか、図や顔写真、地図、図版(写真)といったものが掲載されているか等、その本に関わる情報はすべてよく調べて書誌を作成します。こういった必要事項は、誤りや漏れがないよう注意して、規則通りに慎重に記載します。
 
このようにして、NII(National Institute of Informatics、国立情報学研究所)の目録所在情報サービスに加盟している大学等の機関が協力し合いながら、日々、書誌を作成しています。
※詳しくは「NACSIS-CAT」で調べてみてください!
https://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/about/
 
協力とはどういうことかというと、これまでにどこかの機関が所蔵している本であれば既に書誌が作成されているので、それを共有して自大学の蔵書目録システムに登録することができるということです。
 
書誌が作成されていない場合には、自分で作る必要があります。自分が作成した書誌を加盟館が続々と共有していくことになりますので、決して間違いのないように、より責任をもって作業する必要があります。
 
国内外の他機関が作成している書誌や、海外の大学図書館の蔵書目録等を参考にできる本も多いのですが、そうではない本というのも世の中にはまだまだたくさんあります。
 
私が初めて一から書誌を作ったのは、インドの絵本でした。ISBNも無く、インターネットでタイトルや出版社で検索しても何も出て来ず、海外の大学にも所蔵が無かったので、まさに一からでした。
 
こういった本は、目録をとることによって初めてその存在が書誌としてかたちになり、世界中の人がその本の存在を知ることが出来るようになると言えます。
 
この絵本は、もし私がここで書誌を作らなかったら、きっとほとんどの人の目に触れることなく、存在を知られることすらなく、どこかの部屋に置かれたままだったのだろうと思うのです。
 
この書誌はきっといつか誰かの研究に役立つだろうと思いますし、もしかしたら私が作ったこの書誌が、何世紀も先の誰かが世紀の大発見を遂げる手助けとなるかもしれない…そんなことまで想像して、私も学問や書物の歴史にほんのわずかですが貢献できているのかも、となかなか感慨深いです。

また、様々な言語の本を扱うことが出来るというのも、目録作業の魅力です。
 
私が目録を担当した中には、インド哲学に関連する本が100冊程ありました。私は大学時代にサンスクリット語やパーリ語を学んだのですが、その知識を生かせる日が来るとは思わなかったので、とても嬉しかったです。
 
隣の席の職員さんはロシアや東欧諸国の言語で書かれた本の目録を担当しており、キリル文字の書誌を作成していました。
 
アラビア語の本の書誌作成には、北大の東洋史学の先生や院生さんが関わってくださっています。こういった専門的な知識を有する方に協力していただくことも多いです。
 
 
目録作業において、苦労したこともあります。
 
この記事で何回か請求記号について触れました。この請求記号ですが、分類法にしたがって決めれば良いだけかと思いきや、意外と難しいのです。
 
例えば、デューイ十進分類法の「200」は宗教分野の番号で、その下位分類である「246」は「キリスト教における芸術の使用」ですが、芸術分野「700」にも下位分類「704.948宗教における図像学」があるので、本によっては、宗教分野と芸術分野のどちらに分類すべきか非常に悩むことがあります。
 
こういう時は、デューイ十進分類法の英語版(もともとが英語版です)をよく読んで検討します。
 
それでも決めきれない場合は、図書館に配架されている本の並びを実際に見に行って、この本をここに置いて違和感がないか、利用者が使いやすいか、なども考慮しながら請求記号を決めるようにしていました。
 
苦労した分、図書館で自分が作業をした本があるべき場所に並んでいるのを見かけると、「やっぱり君の居場所はここで間違いなかった!」となんとなく満足した気持ちになります。
 

今回は目録業務についての内容でしたが、図書館職員はこんな仕事もしている、というのが少しでも伝わりましたら幸いです。現在担当している本の受入業務についても、いつか機会がありましたらぜひご紹介したいと思います。 

まだまだ先輩職員に助けてもらってばかりで、自分の不甲斐なさに落ち込むこともありますが、図書館のため、利用者の皆さんのため、研究のため、そしてありとあらゆる本のために、日々働いていきたいと思っています。 

#北海道大学附属図書館 #仕事 #本

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1枚目(ヘッダー):Image from Pixabay by congerdesign
2枚目:筆者撮影
3枚目:Image from Pixabay by Yerson Retamal
4枚目:Image from Pixabay by Ri Butov

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