『ロング・キス・グッドナイト』 午後ローを予習する

 本日の午後ローは『ロング・キス・グッドナイト』。個人的に、絶対に見て欲しいアクション映画のひとつ。一九九六年の作品。
 監督はレニー・ハーリンに主演はジーナ・デイビスの、当時夫妻というコンビ。この前年の『カットスロート・アイランド』(次週午後ローで放送!)での興業的大敗を取り返す作品となっている。はずである。
 共演はあの(代表作が多過ぎ!)サミュエル・L・ジャクソン。好き。
 脚本は『プレデター』の通信兵リック・ホーキンス役で有名な(?)シェーン・ブラック。『リーサル・ウエポン』『ラスト・アクション・ヒーロー』『ザ・プレデター』の脚本家としての方がよほど有名ですよね。どれも好き。 
 記憶を失った政府お抱えの元暗殺者が、ひょんなことから記憶を取り戻してしまい、口封じのために送りこまれた敵と戦うという筋書き。ここまで見ると『ボーン・アイデンティティー』にはじまる『ボーン』シリーズを想起させるが、映画化は本作が先。ただし『ボーン・アイデンティティー』の原作小説自体は一九八〇年に発表とのことなので、シェーンブラックが参考にした可能性はあるんじゃないかなあ、と思う。似たような筋の映画で言うとジェシー・アイゼンバーグ主演の『エージェント・ウルトラ』などがあるか。
 そして上記のようなストーリーの着想となっているのが、過去にCIAが実行していた洗脳実験、MKウルトラ計画だろう。関連文書がほとんど破棄されてしまったことから実験の全貌はいまだに不明である。一説には被験者の合意なしに、非合法、非人道的な実験が行われていたとも言われている。
 こういったミステリアスな面が多く、創作の題材にされやすいのだろう。実際には、実験結果の個人差が激しく、人的、時間的コストがかかりすぎることから、非効率と判断され中止に至ったのではないかと推測する。
 それでも謎は残ったままであり、それがために創作だけに留まらず、陰謀論界隈でも好まれる題材となっている。政府の陰謀により、自分には偽の記憶が植えつけられているのではないか、すでに自分以外の国民は洗脳されているのではないか。自分の感じる孤独感や、嫌な記憶は、すべて政府の陰謀なのでは。そういった飛躍の激しい論理は容易になり立つ。
 しかし視野を広げて周りを見渡せばわかるだろう。だいたいみんな自分の記憶に苦しめられているし、社会の中でなにかしら孤独を感じているのだ。
 そういった人生の苦痛を、現実を曲解し受け入れるのではなく、映画という娯楽を通して昇華させたいものである。

 なんか良いことを書いた気がする。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?