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恐怖と友情が詰まった成長物語

スティーヴン・キングのベストセラー小説が再び映像化!最新映像技術で恐怖も倍増!『IT/イット "それ"が見えたら、終わり。』

襲い掛かる恐怖に友情で立ち向かえ!負け犬少年少女たちのジュブナイル映画

子どもの行方不明が相次ぐアメリカの田舎町デリー。弟のジョージーを不慮の事故で失ったビル、お調子者のリッチー、病弱なエディ、敬虔なユダヤ教一家のスタンリー、食肉加工所で働くマイク、転校生のベン、同級生からいじめを受けているベバリー。そんな学校の負け犬たち「ルーザーズ・クラブ」が失踪事件を追う中でこの町の秘密と謎の殺人ピエロ・ペニーワイズと対峙することになる…という冒険物語です。ホラーの帝王スティーヴン・キングのベストセラー小説『IT』の映像化といえば1990年版が有名で、この作品でティム・カリーが演じたペニーワイズはホラーアイコンとなりました。しかし劇中でペニーワイズが27年ごとに復活するという設定に沿って2017年に再び作られたのがこの『IT/イット "それ"が見えたら、終わり。』です。

ありとあらゆる恐怖体験を詰め込んだお化け屋敷のようなライド感

ルーザーズ・クラブの子どもたちは普段は明るく振るまっていますが、それぞれ人には言えないトラウマを抱えています。ペニーワイズはそのトラウマを増幅させて相手に見せる能力を持っているのですが、この恐怖描写のつるべ打ちこそが本作の見どころの一つとなっています。例えばマイクの両親の死のトラウマを蘇らせたり、病弱で潔癖症なエディにゾンビのような人間が現れたり、スタンリーが子どもの頃から苦手なモディリアーニ風の絵画が怪物化したりなどなど。リッチーのピエロ恐怖症のような思わず笑ってしまうようなトラウマもあれば、具体的には描写されませんがベバリーが受けているおぞましい性的虐待など、様々な技巧を凝らした恐怖が絶え間なく襲い掛かってくるのです。

本当の友達のような絆!ルーザーズ・クラブの子役たちに注目

ルーザーズ・クラブの子役たちは本作での演技が高く評価されました。ビル役のジェイデン・マーテルとリッチー役のフィン・ウォルフハードは元々有名でしたが、ベバリー役のソフィア・リリス、スタンリー役のワイアット・オレフ、エディ役のジャック・ディラン・グレイザーなどは本作で注目されて今も様々な作品に出演しています。彼らは舞台裏でも親交を深めていたため、その良い雰囲気が劇中にも漂っているように感じます。演技の点でいうとペニーワイズ役のビル・スカルスガルドも見事です。本作のペニーワイズの「両目の焦点が合っていない」「口角を極端に上げた笑い」といった特徴がCGではなく俳優の肉体演技であるということに驚きます。CGも多く使われている作品ですが、こういった確かな生身の演技がこの映画を傑作にしていると感じます。

怖いのに切ない、恐ろしいのに甘酸っぱい、子どもたちの成長物語

この映画のもう一つの重要な要素は子どもたちの成長物語であることです。学校でいじめられている、家に居場所がない、そんな子どもたちがかけがえのない友情で繋がることで恐怖に打ち勝つという物語になっています。本当に恐ろしいのはペニーワイズのような怪物ではなく、我々が生きている現実であり、いつか対峙して戦わなければならない、それが成長だということをこの作品は伝えています。このように立場の弱い者たちの団結と友情を描くという点では同じくキング原作の『スタンド・バイ・ミー』にも通じるような切なさがあります。ホラー映画ではあるのですが、鑑賞後に思わず自分の子どもの頃を思い出してしまうような、そんな映画です。

Text/ビニールタッキー

ビニールタッキー プロフィール

映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」管理人。海外の映画が日本で公開される際のおもしろい宣伝を勝手に賞賛するイベント「この映画宣伝がすごい!」を開催。Twitter:@vinyl_tackey

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