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新米パパライターが語る!父の日に見たい映画2作

6月は「父の日」をテーマに、SYOがピックアップした“父を描いた”映画『ワンダー 君は太陽』『ステップ』の魅力を3ポイントに分けて紹介。

変わりゆく時代に即した、フラットな父親像

私事だが2020年末に第一子を授かり、約2年半の間娘と生きてきた。自分が父親になって思うのは、現状の歪さだ。主語が「ママ」で語られる子育て系の施設や番組、表現は世にあふれているし、父親が子育てを積極的に行うことをレアなものとする(ある種、前時代的な)価値観は他者と接しているなかでも強く感じる。そうではなく、もっとフラットな目線で作られた父親映画として、『ワンダー 君は太陽』と『ステップ』の2本を薦めたい。前者は遺伝子疾患で他者と異なる顔立ちで生まれた少年と家族の物語、後者は妻を失い、シングルファザーになった新米パパの奮闘記。この2作に登場する2人の父親の子どもとのかかわり方、描かれ方にぜひご注目いただきたい。

父親の理想的な“態度”が描かれる『ワンダー 君は太陽』

Wonder © 2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. Artwork & Supplementary Materials © 2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『ワンダー 君は太陽』は冒頭から、「息子と全力で遊ぶ父」に始まり、子どもとの対話を積極的に行う姿が描かれる。27回手術をした息子が学校に転入し、周囲から差別されてダメージを負うことを誰よりも心配し、家族の空気が重くなると積極的に盛り上げようとし、投稿時には付き添い、長女のケアにも気を配り、子どものペースにあわせて話を聞こうとする。家庭の描写内に常に父親が存在するのだ。それでいて、夫婦の絆を大事にして妻へのサプライズプレゼントも忘れない。まさに理想の父親像だが、重要なのは彼が劇中で見せる「態度」だろう。序盤で描かれる入学初日の夕食時の対話シーンから、修了式に挑む息子に向かって「お前の顔が好きなんだ」と語りかけて抱き合う名シーンにかけて、息子に向かってちゃんと「謝る」姿が象徴的に描かれる。一個人同士として対等に向き合う――いち父親として、この姿勢に学びたい。

子育てのリアルと共助の必要性を描いた『ステップ』

©2020映画『ステップ』製作委員会

『ステップ』では、子育てのリアルが事細かに描かれる。妻が急死し、気持ちの整理もつかないまま1歳の娘のワンオペ育児がスタートした30歳の父親。営業部のエースだったがフレックスタイム制の総務課に異動し、娘が2歳になると毎日保育園に送っていき、満員電車に乗り、勤務が終わると走って迎えに行き、お風呂にご飯に寝かしつけ……。それらすべてを終えてから洗濯や洗い物をして、自分の時間はほぼ皆無。母の不在は埋められず、追い詰められて「もうダメかもしれない」と泣き言が出てしまう――。子育ての“痛み”を取りこぼすことなく盛り込みつつ、周囲の人間の協力なしには成り立たない、という点をしっかりと描いた本作。義理の両親や上司、同僚、先生による“共助”の必要性があってこそ、主人公は生活と子育てをなんとか両立できる。父親像だけでなく、周囲の人間がどうサポートしていくのが正解なのか、見える化してくれる。

Text/SYO

『ワンダー 君は太陽』はこちらから

▼『ステップ』はこちらから

SYOプロフィール
1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマ・小説・漫画・音楽などカルチャー系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。トーク番組等の出演も行う。Twitter:@SyoCinema

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