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全アニメ民必見!『スパイダーマン:スパイダーバース』

実写版の『スパイダーマン』を見たことがないという人も、アニメーションの可能性を拡張させたこの歴史的傑作を観よう。『スパイダーマン:スパイダーバース』の見どころを紹介したい。

アニメーションならではの表現が詰まってる!

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アメリカのアニメといえば3DCG、手描きに関しては日本のアニメでしょ、と思う人もいるかもしれない。
しかし本作は、CGの質感、手描きの質感、双方を「融合」ではなく「共存」させている稀有な作品だ。というのも、並行世界からそれぞれのスパイダーマンが集結するのであるが、白黒映像、少女にロボにCGに小動物など、「それぞれの世界」の形で、そのまま出てくるのだ!

 だから一見ごちゃごちゃしそうなのだけれど、作画もデザインも違うスパイダーマンたちがなぜか見事に「共存」している。これは見事というほかない。これが可能なのはアニメーションだからこそ。実写映画のスパイダーマンの世界も否定しない物語。このスパイダーマンたちの「共存」は第一の見どころです。

実写スパイダーマン好きにもたまらないパロディ!

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まったく『スパイダーマン』に触れてこなかった人でも楽しめるということは、逆にコアなファンは楽しめないの? というとそんなことはない。
本作には、40代になり中年太りしたもう一人のピーター・パーカー(スパイダーマン/吹き替え:宮野真守)も登場し、新スパイダーマンのマイルス少年(スパイダーマン/吹き替え:小野賢章)の師匠としてスパイダーマンとはなにかを教えていく。
しかもいろんな場面のセリフがこれまでの『スパイダーマン』に出てきたあのセリフ、あの人物、あのシーンからというのがわかるのだ!
パロディとは本来、わかる人だけがわかればいいもので、新規のファンにはわからなくても物語やセリフは成立しているものが良い。
本作はそのパロディの差し込み方が絶妙でおしゃれ。
エモいシーンやセリフが豊富なのも魂を揺さぶられる作品の条件ですよね。

だれもが主役になれるというメッセージ!

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本作は映像作品としての面白さはもちろんのこととして、現代社会でこの作品を観ることの意味についても強烈なメッセージが込められている。

主人公となる13歳のマイルスは、ヒスパニックとアフリカン系の少年だし、多元世界からくるスパイダーマンたちのなかには女性や、動物、さらには時代に置いてかれてしまった過去の産物までいる。
どこの国も保守化していくなかで、マイノリティーであったり社会的ヒエラルキーに悩む人、あるいは仲間はずれにされている人たちが生きにくくなっている。
そんな人たちも、世界のなかで主役になれるんだ、というメッセージは、アニメが好きすぎて疎外感を抱く私のような者でも勇気をもらえる!
スパイダーマンはこうでなきゃ! 多様性とは、強者がより強くなる世界では、あってはならないのだ。

Text/サンキュータツオ

サンキュータツオ プロフィール

1976年東京生まれ。漫才コンビ「米粒写経」として都内の寄席などで活動。
早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文化専攻博士後期課程修了。
アニメ、マンガなどを愛好しており、二次元愛好ポッドキャスト「熱量と文字数」を毎週水曜日配信。「このBLがやばい!」選者、広辞苑第七版サブカルチャー項目執筆担当者。一橋大学などで非常勤講師も務め、留学生に日本語や日本文化も教えている。Twitter:@39tatsuo


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