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冒険コメディ、だけじゃない傑作群像劇

ゲーム要素とキャラ入れ替え要素を加えたアドベンチャー大作なら、見ている自分も大冒険家気分を味わえる。

そもそも『ジュマンジ』ってなに?

『ジュマンジ/ネクスト・レベル』は、じつはシリーズもの。そもそものはじまりは、クリス・ヴァン・オールズバーグの同名絵本をベースにした1995年の大ヒットアドベンチャー映画『ジュマンジ』だ。悪に支配された国を取り戻すために、キャラクターはジャングルなどでの試練に挑むボードゲーム「ジュマンジ」を見つけた少年少女が、それで遊び始めたところ、ボードゲームの世界が現実に。ゲームクリアをするまでその現象が収まらない、というお話。ボードゲームをテレビゲームに置き換え、ゲームの世界に入り込んでしまう、という設定にした作品が2017年の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』だ。本作はその続編で、前作の登場人物+αが再びジュマンジ世界に入ってしまい、前作と違うキャラクターで奮闘するという物語。

ゲームが壊れて、バグだらけに

前作と同じゲームの世界に入り込んだ、といっても、前作ラストでマシンを破壊していたため、バグが大量に発生しているのが、本作最大の面白設定だ。セッティングしたキャラクターはリセットされており、慣れていたアバターではない者に入れ替わってしまう。そればかりか、ゲームに吸い込まれるときに同席していたお年寄りまでが巻き込まれ、ゲーム世界でのアバターになっているため、想定外の波乱が巻き起こる。また、ゲーム世界もバグのせいでスケールが上がっており、ジャングルだけでなく砂漠や氷山などのステージが追加されている。そのため、前作を観たことがある人にとっては前作とのギャップを楽しめ、これが初めてという人には新鮮に感じられるという効果が生まれた。続編映画といっても、本作単体でも楽しめる魅力がある。

ゲームキャラと現実キャラのギャップ

破壊したはずのゲームが修理されているのはなぜか。それは4人いる主人公のうちの一人スペンサーのせい。彼が前作で現実とは全く正反対の一番強いキャラ・ブレイブストーンになったことに味をしめてしまったため、ゲームを修理してしまったのだ。本作の面白さの一つ、現実世界とゲーム世界のキャラクターに大きなギャップがあることだが、前作とは入れ替えの設定が違う。特に面白いのは、スペンサーは望んだキャラクター=ブレイブストーンになれず、なんとスペンサーの祖父エディがそれを担うことに。エディとその友人マイロは、そもそもテレビゲーム世代ではないことや、他のゲームキャラクターも現実世界での性格とは全然違う人物のアバターとなってしまったため、物語のドタバタ度は前作以上。爆笑必至だ。

観ているあなたも主人公の誰かに

90年代のヒット映画をアップデートした本作だが、一番素晴らしいのは群像劇の面白さが強調されていることだ。チームで協力しあわない限りクリアすることができないゲームが舞台となっているので、彼らが困惑しながらも次第にまとまっていくのを見ていく楽しみは格別。また、登場人物が性格の違うゲームのアバターとなることで、それぞれがそのギャップに葛藤しながら冒険を繰り広げる姿を見ていると、彼らの中にどこか自分と重なるキャラクターを見出すことができるはずだ。現実世界の悩みを引きずったアバターが主人公のため、笑えて楽しいだけの冒険群像劇ではなく、ヒューマンドラマ的な奥行きすら感じられる傑作に仕上がっているのだ。終盤にはあっと驚く感涙の展開が待っているので、楽しみにしてほしい。

Text/よしひろまさみち

よしひろまさみち プロフィール

映画ライター。音楽誌、情報誌、女性誌の編集部を経てフリーに。『sweet』『otona MUSE』のカルチャーページ編集・執筆のほか、雑誌、Webでのインタビュー&レビュー連載多数。日本テレビ系『スッキリ』での月一映画紹介のほか、テレビ、ラジオ、イベントにも出演。Twitter:@hannysroom

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