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福祉形成における相互的人格性とシティズンシップ

相互的人格性については人間福祉に関する第5において述べましたがこれをシティズンシップと関係づけ、福祉的かかわりについての議論をより社会的に位置づけていくことに致します。ここでいうシティズンシップとは市民権というよりも市民資格という意味合いに用いています。これはT.H.マーシャルの議論を取り上げ解題した岡田藤太郎の見解を参考にしています。岡田はマーシャルのいう[民主ー福祉―資本主義]という連結のなかに成立していく「福祉国家」を重視しています。マーシャルがこのように示す社会経済体制はひとつの混合経済体制であるといえますが、この関係性のなかの経済と社会と政治に福祉国家から福祉社会への道を教えられるのです。われわれは福祉国家を国家の全体システムと、さらに福祉社会を社会的次元としての共セクター次元と捉えることができると考えています。そうしてこの共セクター次元の個々の主体的な姿をまさにその人格の姿を表出するシティズンシップの姿そのものと捉えています。上述した岡田は、このシティズンシップを
「市民資格」と訳しています。 われわれもそれに従っているのですが、この言葉を[市民権]と訳さないのには重要な意味があります。それにはアルフレッド・マーシャルのT.H.マーシャルに与えた影響を考慮しなければなりません。アルフレッドは「シティズンシップを人間の内部で成長する生活様式である」ととらえているのです。さらに解していくと内部から具体化して成長いく社会意識であるともいえるのです。これは制度的位置づけとしての権利というよりも人間の内なる成長がもたらす資格性に関わる人格領域の内実を表しているといえるのです。そうしてそのような人格領域の高度化があって初めてわれわれが福祉社会の要と考える中間セクターが成立していくことになるのです。

 近年一般に捉えられるようになった公―共―私のなかの共セクターとしての中間セクターを我々は福祉国家を深く成立させていく福祉社会と位置付けきました。このようにシティズンシップがそれを担う個々の人格高揚の下で福祉形成を実質化させていく人格の姿として相互的人格主義を捉えることができるのです。相互的的人格性を血流とする中間セクターがこうして本当の福祉への道の核となってまいります。

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