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簡単『死神』あらすじ

説明

幕末に活躍した三遊亭円朝が、グリム童話の一節『死神の名付け親』という作品を作り変えた物です。死神というのは本来日本にはいない神様です。西洋の神様ですね。なので、当時としては死神ってのはハイカラな感じがしたんではないでしょうか。

死神は短くても20分、平均すると30分くらいはある噺です。特徴はなんと言っても落ちで、普通の落語は落ちにこんなにバリエーションはありませんが、この噺だけはみんなが落ちを変える、落ち工夫合戦になって居ます。

最終的には主人公が死ぬパターンがほとんどです。円生師匠は火が移らずそのまま死ぬ。談志師匠は火は移るが死神が消す。小三治師匠は、火が移ってくしゃみで消しちゃう。この辺りが代表的な落ちです。まだまだ、沢山ありますがWikipediaにその例が載っていますのでそちらもご参照ください。そんな死神のあらすじをどうぞ。

あらすじ

何をやっても上手く行かない男。

妻「金が出来ないなら、豆腐の角に頭をぶつけて死んじまえ!」

妻にこう言われて家を飛び出す。情け無くて死のうと考えるが、死に方がわからない。

死神「教えてやろうか。」

目の前に死神が現れる。

死神「金が欲しいなら医者をやれ。病人の枕元か足元には必ず死神がいる。足元にいる内はこいつを剥がせば病気が治る。だが枕元にいる場合は手を出すな。この病人はもう手遅れだ。」

男「死神をどうやって剥がすんだ?」

死神「呪文を唱えれば居なくなる。アジャラカモクレンテケレッツのパー、手をぽんぽんと二つ唱えろ。この呪文を聴くと死神はウチに帰らなきゃあならねえ。」

男「アジャラカモクレンテケレッツのパー?で手をぽんぽん?そんなんで居な…居なくなった。よしやってみよう。」

さあ、これからこの男が医者になる。足元に死神が居る時は呪文で病人を治して金をもらう。たまさか枕元に居る時には、「手遅れだ。」と言って死期を見極める。「あの人は、生き神様だ。」と大儲け。これから女を連れ込んで、遊び呆けてあっという間にすっからかん。また患者が来ないかなと待っていると、江戸でも指折りの大金持ちからお声がかかる。そこの主人が病気だというんで、行ってみると枕元に死神が座っている。

男「ああ、これは手遅れです。」

店の者「そこをなんとか。治してくれたら千両出します!」

男「千両!?ちょっと待っておくれ。」

必死で考える。そうだ!布団をクルッと半回転すれば頭と脚が入れ替わると考えた。さて、その家で力のある若者四人を布団の四隅に待機させる。死神が居眠りをしたのを見計らって、布団を皆んなでクルッと半回転した隙に、

男「アジャラカモクレンテケレッツのパー!」

手をぽんぽんと叩くと死神が驚いて居なくなる。さあ、また金を儲けて、どっかでいっぱい引っ掛けて帰っていると、

死神「なぜ。あんなことしやがった。」

男「ああ、死神さん。」

死神「枕元にいる死神には手をつけるなと言っただろ。こっちへ来い。」

これから洞窟へ連れて行かれる。そこには数え切れないほどの無数の蝋燭がある。

男「な、なんだこれは。」

死神「これはみんな人間の寿命だよ。」

人の寿命によって蝋燭の長さが違うという。ふと見ると一本だけとても短い蝋燭が。

男「なんだこの短いやつは?」

死神「これはお前の寿命だ。」

さっき、治らない病人を治したせいで、寿命が入れ替わったという。

死神「助かりてえなら、この空の蝋燭に火を移しな。そうすりゃあお前は助かる。」

これから男が一生懸命火を移そうとする。

死神「ほら、早くやれ。早く死ねえと消えるぞ。」

男「うるせえ、手が震えてなかなか出来ねえんだよ。」

死神「ほら、ほら、消えるぞ。消えるぞ。あー、消えた。」

火が移せず、蝋燭の火が消えてしまったので、男はそこで息絶える。

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