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太神楽と仙三郎師匠

今日は、仙三郎師匠のことについてお話ししたいと思います。


先日、仙三郎師匠がお亡くなりになりました。落語協会の若手は、とにかく皆がお世話になっている師匠です。


洒落が大好きな師匠で、とにかくいつも洒落を僕らに飛ばして下さいました。寄席を愛し、芸人を愛し、そして誰からも愛された大好きな大好きな仙三郎師匠のご冥福を心よりお祈り申し上げます。


真打のお披露目には必ずお呼びしたいと思っておりましたので、とても残念です。


太神楽というのは元々が神事です。お獅子というのは悪鬼を祓うためにやるんですね。きちっと神に向かってやることもあれば、家々を廻ってやるものもあります。


浅草ではここ何十年とそういう軒付け(店先で獅子をやる)行事がありまして、5年ほど前から太鼓要員で参加させて頂いてます。笛に合わせて太鼓を叩く、とてもシンプルなんですけど難しいです。


寄席の太鼓が得意な僕は同じ太神楽の翁家和助兄さんに頼んで参加させて頂くようになりました。


この太鼓がすごかったのが仙三郎師匠です。太鼓と掛け声ですね。聴いていて惚れ惚れするんです。誰にも真似出来ません。


太鼓の手は決まったものがありまして、それを基本にあとは崩して叩くんですが、仙三郎の親方の太鼓は、誰とも違います。真似出来ない崩し方なんです。本当に凄かった。なかなか文では説明出来ないのがもどかしいんですが、とにかく凄かったですね。


曲芸の腕はもう僕なんかが申し上げるわけでもなく、名人です。土瓶の芸は、至芸です。


何度もお酒を一緒に飲みましたが、師匠は僕がお獅子の太鼓を手伝ってることをとても喜んでくれました。


「噺家さんがこうやって一緒にやるってのは昔は結構あったんだよ。だから嬉しい。」


と言って下さって、本当に嬉しかったです。そしていつもこうもおっしゃってました。


「内町(お獅子で店を回ること)は、寄席で芸をするのと違って、目の前のお客に直に接するから面白いでしょ?この感覚は、太神楽の原点だし、そもそも芸人という人を喜ばせる人たちの原点だと思うんだよね。」


本当にお獅子で周ることに誇りを持っておられました。


落語家として大事な助言も頂きました。


「曲芸はさ、稽古すればするほど上手くなるんだよ。結果が必ず付いてくる。だけど落語は違うよね。最低限の稽古は必要だけど、稽古すればもちろん上達はするけど、稽古したから売れる世界じゃないんだよね。だから難しいよ落語家は。人間力を磨くっていうかさ、面白そうなことをいっぱいやったらいいよ。そしたら、良い落語が出来るんじゃないかな。」


ずーっとずーっと胸に刻まれている言葉です。



仙三郎師匠、本当にありがとうございました。

落語について、また過去の思い出等を書かせて頂いて、落語の世界に少しでも興味を持ってもらえるような記事を目指しております。もしよろしければサポートお願いいたします。