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2年ぶりに奥寺先輩と会った話

 8月2日の今日、2年振りに奥寺先輩に会いました。
 正確に言えば、2年振りに奥寺先輩(のような僕の先輩)に会いました。

 経緯

 まず経緯を説明させてください。

 中学生の頃からTwitterを始めていた僕ですが、もともとは邦ロックを中心に音楽好きと繋がるためにアカウントを運用していました。

 とりわけRADWIMPSというバンドが好きな人達とつながってワイワイしたり、ライブで会う約束をしたりと、普通の「音垢」らしい立ち振る舞いをしていたわけです。

 その先輩をフォローしたのも、そういった繋がりからでした。割とフォロワーの多いアカウントだったので、フォローされてもはじめは歯牙にもかけなかったと思います。

 ある日ふとその人のツイートを遡ってみると、どうやら大阪大学を目指して2浪している浪人生だという事が分かりました。当時の僕は高校1年でしたが、その時から阪大志望だったのでぜひ話を聞きたいと思い、特に何も考えずDMしました。僕の高校は非進学校だったので純粋に情報が欲しかったんでしょうね。

 それがきっかけとなり僕と先輩はDMでやりとりをしたり、リプで絡んだりとそれなりに仲良くなっていきました。邦ロック界隈特有の性質なのかどうかは分かりませんが、好きなバンドを共有していたり、ライブで会ったりすると急激に距離が縮まるというのは僕も何度か経験しました。

 そしてその年の春に先輩は見事大学に合格し、僕もDMで祝福しました。そこで僕は言いました。

「僕も必ず同じ大学に行きます」と。

初エンカ

 次の話は1年後の夏まで移ります。2年生になりオープンキャンパスで大阪まで行くことになったので、良ければその時に会えないか、というのをDMで打診します。正直な話、オープンキャンパスとかマジで興味なかったので大阪に行くモチベーションの9割はこれでした(ごめんなさい阪大)。

 このお願いは無事に承諾され、8月の半ばくらいに会いに行くことになります。その詳細も書きたいんですが、だんだんと思い出すのが辛くなってきたので省かせてください。

 ただ一つお伝えしておくとすれば、このとき行った「満天の空」というカフェ&バーがありまして、ここはRADWIMPSをコンセプトとしたRAD好きのための場所なんですね。そこでいっぱい喋った記憶があります。

 その時の写真がフォルダにありました。2018年の8月です。

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美味しそうなネギトロ丼だね!


受験とその後

 それからまた月日は流れ、僕は受験のために高校3年の夏にTwitterを削除しました。先輩とは会った時にLINEを交換していたので交流自体はその後も続きましたが、そもそもSNSをあまり使わないタイプだったので頻度は格段に減ってしまいました。

 それでも直前期は勉強の相談に乗ってくれましたし、共通テストの帰り道も出来具合を報告した覚えがあります。二次試験が終わった帰りの新幹線でもLINEしました。

 結果として、散々心配していた合格発表ではすんなりと自分の番号を見つけ、僕も同じ大学に合格するのですが、その時に一番初めに連絡したのもやはりその人でした。合格発表の前日に心配のLINEが来ていたというのもありますし、やはり僕は「その先輩と同じ大学に行きたい」という思いが勉強のモチベーションの一因だったと気付いていたのでしょうね。

 本来であれば大阪に引っ越してすぐに会おうという話だったのですが、緊急事態宣言など諸々が重なってしまい、なかなか会えませんでした。そもそも理系の多くはキャンパスが違うので、大学で偶然会うというのもできません。

再会

 ここからが本題です。その先輩と、2年振りに会いました。

 駅で待ち合わせをして、「身長伸びたね~」と親戚みたいなことを言われた後、ある場所に向かいました。2年前に行った、「満天の空」です。

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 2年前はなかった「天気の子」のグッズや「夏のせい」というEPが増えていてRADWIMPSの移り変わりにひとしきり感慨深くなった後、空いている席に座ってネギトロ丼を注文しました。


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 注文してから気付きました。

「あれ? そういえば2年前も同じメニュー頼んだな......?」

 そしてさらに気付きます。

「座ってる席も、見えてる景色もなんだか見覚えがある……」

 まさか、2年前と同じ店の同じ席で同じ人と同じメニューを頼むと思いませんでした。運命感じちゃいますね。

 なんだかエモいなぁとか思いながらそれを先輩にも伝えると言われたんです。

「そうなんだ! すごいね、よくそんな昔のこと覚えてるね」

 たぶん大体こんな感じのニュアンスでした。絶望より先に悟りが来ました。

(そうか、先輩にとってはもう昔のことなのか。覚えているのはぼくだけなのか……)

 頭の中で、虚構のヒロインに「覚えているのはキミだけだよ。あっちはなんとも思ってない。ほんと自意識過剰だね、気持ち悪い」と言われた気がしました。むしろそう言ってくれないとやりきれない。

 感傷マゾはこういう状況で傷ついて気持ちよくなるのが普通だと思うのですが、あまりに巨大すぎる感傷は快楽に変換するまでに時間がかかります。アニメで得た架空の感傷と現実での自分の感傷ではデータ容量が違いすぎるから、読み込みに時間がかかるんですね。

 満天の空ではその後、僕の高校時代の話や受験の話、それから少しだけ音楽の話をしました。

 1時間半ほど喋り終わり、次は喫茶店に移動することになりました。僕が好きな玉川椿希さん(@xxbakkii)の個展をやってる喫茶店、marinaです。サークラで漫画を拝見してからすごく気になっていました。

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 こういう雰囲気の喫茶店が好きなので、柄にも無く少しテンションが上がってしまい、いつもなら食べないバナナパフェを注文して、いつもなら絶対に撮らない「匂わせ写真」風のアングルを決め込みました。

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 これでフォロワーを殺してやろう、とか思ってたんですが、バナナを一口食べたあたりからなぜか話題が恋愛の話になりました。どうやら先輩は結婚願望が強いらしく、「将来はね、家庭に入りたいんだ~」と言っているのを聞きながらアイスを頬張っていました。そして、唐突に先輩が口にしたんです。

「今の彼氏もそうだけど、やっぱりプラトニックな関係でいたいよね~」

 台詞をあまり正確に覚えていないのは衝撃的すぎたのか、僕の脳が思い出すことを拒否しているのか判断しかねますが、おそらくこんな感じでした。

 正直に言うと、まったく知りませんでした。いや、僕は別にその先輩に現在進行形で恋愛感情を抱いているわけでも、付き合いたいとかもまったく思ってはないですよ。

 だけど、過去に何かしらの特別な思いを抱いていて、今は憧れの先輩であることは間違いないわけで、そんな先輩から3年付き合ってる彼氏の話が飛び出してきて、しかも歯学部で結婚まで真剣に考えてるなんて言われたら無理じゃないですか。死にてぇ~~~~~!!

 ちなみに、特別な思いと敢えて濁したのは理由があって、僕は一度その先輩をモデルにして小説を書かせてもらってるんです。高校時代は小説を書くしかやることが無くて、先輩もそのことは知っていてなんなら読んでくれていたので、間違いなく特別な思いを寄せていたことは事実なんですよ。「その人を基にして小説を書きたい」という思いがどれくらい普遍的なのかは知りませんが、一部の人はこれは恋愛感情と呼ぶのかもしれません。けれど僕はそれを認められないのでこういう表現をしているわけです。辛い。

 それ以降は心が死んでいたのであまり記憶も無いんですが、恋愛の話や大学生活の話を永遠にしていました。

 なにより辛かったのが、初めに会った時は感傷マゾに出会っておらず(僕は感傷マゾに高2の秋に出会ったので)まだかろうじて純粋さを残していた僕は、2年を経てこんなにも卑屈で惨めな人間へと変わり果ててしまったのに、先輩は相変わらず優しくて楽観的で能天気で……

 対比すればするほど辛くなってきました。僕が口を開けば吐いていた厭世的な世迷い言も、すべて正論で返されてどうしようもありませんでした。自分がいかに情けなくて青春に対してコンプレックスを抱いているか説明すると

「難しく考えずに、恋人の一人でも作ればいいと思うよ」

 と返されました。一発KOでした。

 その後も、

「そうは言っても、恋人を作るってのが難点じゃないですか。恋愛する体力なんてとうの昔に衰えてますし」

「君は普通にしてればモテると思うけどな〜」

 うう......
「普通にしてれば」の部分にどれだけ深い意味があるんでしょう。感傷マゾ研究会のことは一度も言ってないのに見透かされた気分でした。

 僕は夜からバイトが入っていたので喫茶店で2時間ほど喋った後は駅で別れました。

 願望としては、指輪をチラつかせながら「君も、早く幸せになりなさい」と言われたかったのですが叶いませんでした。でも3年後には普通にあり得そうで震えています。

 傷を背負いながらバイトを終え、その晩に友人と電話をしてことの経緯を話したところ、

「君は人間関係にも恵まれてるし、いくらでも青春できる可能性があるのに全ての選択肢を捨てて感傷マゾに走ってるよね。さっさと救われて退場してほしい」

 みたいなことを言われて泣いてしまいました。マゾヒズムやナルシズムに前提とされる自己愛もここまで突き抜けると清々しく思えます。据え膳を机ごとひっくり返すことに最大の快楽を感じる最低な性癖に、合掌。

 一晩経って、徐々に快楽に変換されつつある感傷に溺れながら、今この文章を書いています。こういうので気持ちよくなって満足してしまうから、恋愛をしようとかいう気持ちが一切起こらず、感傷マゾに走るんでしょうね。つくづく酷い話です。


追記

その先輩のTwitterを見ていたら逆視点での匂わせ写真(笑)が投稿されていました。頼むから殺してください。

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逆視点での写真。これを一切の他意無くやっているので非常にタチが悪いです。また感傷的になれますね!

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