見出し画像

?+?=?? ナムジュン・パイク展

ワタリウム美術館で―没後10年ナムジュン・パイク展 2020年笑っているのは誰?+?=??-が開催されている。(前半2016年10月10日まで、後半10月15日~2017年1月29日)

現館長の和多利恵津子さんが「パイクを知らない世代もいるので、ワタリウムのコレクションをすべて出した。」といわれるように、幾重にもかさなる分厚いパイクを体感できる。3時間ちかくパイクに浸って美術館をでると、風景が別々のレイヤーとしてみえてきた。3台の自動車の重なり合う音も3つ別々のレイヤーだし、視覚からの自動車と聴覚からの自動車も別々。世界は限りないレイヤーでできている!

ビデオアーティストと呼ばれるナム・ジュン・パイク(白南準)は1932年ソウルの裕福な家庭に生まれ2006年73歳で没。朝鮮戦争の時期に来日、1956年東京大学美術史学科卒豪。音楽修業のためミュンヘンにわたり、そこでジョン・ケージに出会い(26歳1958年)、「フルクサス」のグループに加わり活動。その後アメリカにいき、チェロ奏者シャーロッテ・モーマン(パイク32歳1964年)と組んだハプニング活動などで、特異なアーティストとして知られた。(夢見る美術館計画 ワタリウム美術館の仕事術日東書院267㌻参照。)1984年に和多利志津子さんが出版した「NAM JUNE PAIK タイム・コラージュ」の帯に、パイクが端的に表現されている。

パイクの心は、遊牧ゴコロ。                      韓国ー日本ードイツーアメリカ                     音楽/アクション/ビデオと経巡るうちに、のぞいてしまった未来のアート。 ひょいと時空を飛び越える、                      このエレクトロニクスの禅師を生け捕った。

和多利志津子は1977年ドクメンタ6TVガーデンで45歳のパイクと出会い、ギャルリーワタリで立て続けに個展を行った・・・1978年「ジョン・ケージに捧げる」、1980年「VIDEAいろいろ」(キャンドルTV)、1981年「ビデオ・カード」、1984年「タイム・コラージュを出版」「心TV」、1986年、1993年「パイク地球論」(ケージの森/森の啓示)。

ワタリウムの2階を左手に曲がると、美術館の吹き抜けいっぱいに樹木の中で明滅する20台のブラウン管が見えてくる。ケージの森/森の啓示である。この森でしばらくいると・・・実は私たちはバラバラなようでも一つの森の中に住んでいるのだ・・・・と思えてくる。キャンドルTV・・・テレビ の中の1本のろうそくの炎。TVによって消費される情報よりも1本のロウソクが心に届いてくる。3階のガラス面に 描かれた「ココロ」というパイクの詩(1964年草月アートセンター)と2階壁面の「心」をかたどった14台のブラウン管の鼓動が、レイヤーとしてみえてくる。

カルヴィン・トムキンズ(CalvinTomkins1975)「ビデオの幻視者」(タイム・コラージュ)からパイクへの手がかりを探してみた。音楽に水の音や赤ん坊のブーブー声をコラージュする・・・ピアノとバイオリンを破壊するパーフォーマンス、音楽の聖域を破壊する・・・アー ティストのエゴを殺す・・・心を解き放ってくれるもの求める・・・ブラウン管に偶然性・不確定性・ノイズをもちこむ・・・音楽にセックスを持ち込む・・・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?