コミュニティデザインは社会福祉をめざす

2011.3.11東日本大震災以来、社会的に注目されている山崎亮さんの「コミュニティデザイン」の仕事。その山崎が率いるstudio-Lの10周年を記念したトークセッションに参加した(2015.10.12アーツ千代田3331、BIOCITY特集号発刊と合わせたコラボ企画)。ここで注目したいのは、山崎が、コミュニティデザインの仕事は社会福祉・社会教育につながってきている、と彼らの原点であるジョン・ラスキン(1819-1900)を引いて、語ったことだ。

山崎はシャープに原点を語り、共感した。                山崎が、ものの形をつくるだけでないデザイナーを目指したい、生きる力を最大限にするデザインをしたい、と強く思ったのは、20年前の阪神淡路大震災と弟さんをなくした時に出会った、ジョン・ラスキンのつぎの言葉だ。

『あなたの人生(Life)こそが財産である。人生(Life)というのは、そのなかに愛の力、喜びの力、褒める力のすべてを含んでいる。            豊かな国とは、裕福な人がたくさん育つ国である。裕福な人とは、自分自身の人生(Life)の機能を最大限にまで高め、その人格と所有物によって、他者の人生(Life)に最も広範で有用な影響力を及ぼす人のことである。(ジョン・ラスキン「この最後のものにも」1862年第77節)』山崎自身がラスキンが定義する「裕福な人」になりたい、と語った。

次にコミュニティデザインとは何か、について、studio-Lメンバーとして丸山傑さんが一番始めに取り組んだ瀬戸内国際芸術祭2013小豆島コミュニティアートプロジェクトの話しを、本人から聞くことができた。そこから考えてみる。

「開催まで7ヶ月という2012年9月時点に地元にはいって、まず提案したのは「地元で余っているもので、地元の力を結集しなければできない大掛かりなものをつくろう。」だった。オリーブと醤油の産地小豆島。何回かワークショップを開いてもなかなか収斂しないので、こちらから3案提案した。そして、規格外になってしまった8万個の醤油のたれ瓶に、密度の違う醤油をつめて、1枚の大きな「醤油のグラデーションの壁」をつくることにいきついた。」そこから、地元愛の強さと底力と団結力が、パワフルに連鎖して行く話である。

コミュニティが持っている力を形にし、持続的に引き出していくこと、人を含む環境全体をつなげていくことが、コミュニティデザインであると読める。そして彼らはそれを職能としている集団なのだ。

コミュニティデザインが社会福祉につながることについて。ジョン・ラスキンの人生そのものだったこと、そして実体験からも、それは自然にそうなっていく、と山崎が語った。ジョン・ラスキンの前半生は美術批評家として、ウイリアム・モリス(アーツアンドクラフツ運動)、エベネザー・ハワードなどに影響を与え、アート、クラフト、建築、都市計画を一つのムーブメントにしていくことに寄与したが、後半生は社会改良家として、セツルメント運動を提唱したアーノルド・トインビーを育て、近代的社会事業の先駆けとなる慈善組織協会(1869年)の設立に寄与するなど(協会は、後にセツルメント活動の拠点であるトインビーホールを建設した。)、社会教育・社会福祉に貢献した。

いまstudio-Lは、福祉予算を図書館建設の一部に充てることで、福祉施設みたいな図書館ができないかと模索していたり、NPO法人maggie`s tokyoと連携して、がんを宣告された人が患者としてではなく生活者として暮らせるための場づくりを考えたり、福島県猪苗代町に「はじまりの美術館」開館をサポートして、多様な人が違和感なく一緒にいられる空間をつくりだそうとしている。

トークセッションのあとの英国風ティーパーティーで、studio-Lメンバー西上ありささんに「みなさんがいわれる福祉とはなんですか?」と聞いてみた。「福祉とは『幸せ』であると考えています。幸せに暮らせるコミュニティは福祉と不可分です。」山崎亮さんがトークセッションを、「次の10年のコミュニティデザインは、社会福祉、社会教育に取り組みたい。」と締めくくったことと、ここでつながった。


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